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ベッドメイクと友人

新川(あらかわ)に会った日から数日経った。街はクリスマスの装飾などがされ、ビジネスホテル『雪代(ゆきしろ)』にもクリスマスツリーが飾られ、クリスマスムードになっているが、従業員達はいつもと変わらない仕事ぶりだった。ベッドメイク従業員はクリスマスもお正月も無いのである。みのりはステイ(お客様滞在)の部屋を終え次の部屋に入るところだった。先ほどの部屋ではベッドを作った後、お客様と一緒に寝ていたであろう赤い帽子をかぶった大きめのくまのぬいぐるみをベッドにちょこんと乗せてベッドメイクを完成させた。

このぬいぐるみ自体はベッドの布団の中に半分入っていたのであるが、お客様が帰宅した時にしっかり見えるようにベッドの上に置いた。お客様がぬいぐるみを確認するためである。これはあくまでもみのりの場合はであるが。ぬいぐるみを部屋で見かけると、ほんわかした気分になれるのだ。

みのりはほんわかした気分になり一瞬癒されてから、次の部屋のドアを開けると、緊張が走ってすぐに気分が変わった。

そこはお客様がチェックアウトされた部屋とは思えないほど、パーティー感にあふれていた。

色とりどりの大量の風船と、ケースに入っていないままの一口食べただけのホールケーキが置かれていて、2つのワイングラスに飲まれていない赤ワインがなみなみと入っていた。

花束も置かれていた。

しかし荷物はなかったのでチェックアウトしたのだろう。念のため、再度タブレットでお客様が本当にチェックアウトされたか確認してチーフにもこの状態を伝え、これらをすべて忘れ物にすることを伝えた。

ホテル雪代(ゆきしろ)はビジネスホテルなので、ビジネスマンが泊まり、ゴミなど少ないイメージがあるかもしれないが、最近では外国人観光客などがシティホテル感覚で宿泊したりするケースも多く、中には今回のようにイベントを部屋でおこなったりすることもあり、その後の片付けで時間がかかってしまうこともあるのだ。

今回は、風船達を大きな透明のビニール袋に入るだけ詰め込み、風船が割れないように封をしばり、花束はチーフに確認してそのまま袋に入れ、ホールケーキも念のため専用のビニール袋に入れとっておく。(みのりの場合ではあるが)後から忘れ物としてお客様が取りに来る場合もあるからだ。実際ペットボトルの飲みかけや、チョコレートの食べかけを忘れ物として取りに来たお客様もいるらしいのだ。

雪代(ゆきしろ)では、チェックアウトされたお客様の飲み物はアルコールを除いて捨てることになっている。

つまり、今回のワイングラスはワインの瓶に入ったものは、ビニール等で封をして保管する、決められた数日間忘れ物として取って置き、ワイングラスは液体は捨てて、グラスを洗い、布巾で拭いて、袋に入れて、人が通った時に割れてしまうのを防ぐために裏の階段のところに置いておく。

ここはあまりお客様が通らないからだ。エレベーターがあるので皆、そっちから行くお客様がほとんどなのだ。帰りにこれらの忘れ物は、事務所まで持っていくのであるが。

あと他のお客様の忘れ物らしき衣類や備品なども袋にまとめ、忘れ物類を出した後、それからやっと本来のベッドメイク作業が始まる。

「今日も14時過ぎるかな」

そう思いながらみのりはこの階の自分の唯一の担当の部屋の清掃にかかった。

「運命は変えられる、今から」

この言葉が頭によぎる。

ユーチューバーが動画で言ってたことだ。

占い師の橋谷健吾(はしたにけんご)さんのユーチューブ動画でみのりの推しだ。彼の動画が今のみのりの元気の源だ。

14時過ぎに仕事が終わり、みのりは友人の真理菜(まりな)星印(ほしじるし)パーラーで待ち合わせをしていて会う。待ち合わせ時間の16時までにお手洗いの鏡で髪の毛を整える。化粧もしている。ベッドメイク中は化粧をしていないのだ。作業中、シーツなどにファンデーションや口紅がついてしまったことがあるのだ。持参してきた水筒の水を、地下街のベンチに座り、飲む。そして、カバンにいつも入れている読みかけの小説を読みながら待ち合わせ時間まで時間をつぶす。今日はすごく仕事がハードで疲れたので、近くの自動販売機で炭酸ジュースを買い、一気飲みもする。決してみのりは高収入でもないので、ぜいたくは敵なのだ。貯金もするようにしている。

「時間だ」

みのりが星印(ほしじるし)パーラーの店の前で少し待つと、真理菜がやって来た。

「久しぶり」

「久しぶり!」

真理菜はみのりと同じアニメ漫画好きの24歳で中学の同級生だ。真理菜はロングヘアーで後ろを1つにまとめている。黒髪がきれいである彼女である。

みのりは真理菜が大好きである。2人で店の中に入ろうとしたのだが、とんでもない光景を見てしまったのである。

真理菜の彼氏が他の女の子と歩いていたのである。

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