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第3章:緋色の雪

[ 家に留まってください。政府が状況を掌握しています。反撃は間もなく開始されます! ]


「それで何が変わるってんだよ、ははっ!」


ビールを手にした茶髪の男が、声を上げて笑う。

彼の顔は影に隠れていて、はっきりとは見えない。

隣のソファに座る金髪の男も同じくビールを持ち、笑い声を上げる。


「反撃だって? こっちにそんな余力があるのかよ。」


「いや、向こうよりはまだ資源があるって話だろ。武器だって、クローンだって、それを作る設備だって。」


「それも“そう聞かされてる”だけだ。もし本当に勝ち目がないなら、最初から攻撃なんかしてこないだろ?」


「他の戦争が同時進行してるから、そっちに期待してるんじゃないか?」


[ 複数の専門家は、これを第三次世界大戦と呼び始めていますが…… ]


音声は次第に曖昧になり、記憶を手繰り寄せるような感覚になる。

二人の男の仕草や、彼らが座っている部屋の様子もぼんやりとしている。

だが、その後に訪れた強烈な閃光だけははっきりとしていた。

それは二人を一瞬にして目くらましにし、続く衝撃波が現実味を帯びた震動を伝えてくる。


家具や物体が床に落ちる音、すでに脆かった建物の小さな構造が崩れる音、赤い雪のような物質が一面を覆い尽くす光景。

中心部から離れるほど質素になる巨大な都市の輪郭が、まるで燃え尽きたように歪んでいく。

爆風の後を追うように舞い降りる灰、そして窓ガラスを粉々に砕くほどの悲鳴。

そのすべてが、ありありと浮かび上がる。


ピピピピ…


男は小さな腕時計のアラームで目を覚ます。

白と赤が混ざり合う瞳をゆっくり開き、アラームを止める。

昨日、物置の棚に無造作に置いていた荷物をまとめ、銃を手に取る。


家の中を通り抜けるときも、床のきしむ音にはまるで興味がない様子。

彼は昨夜仕掛けた――と呼べるかどうかも怪しい――罠を回収し、再び家を元の静寂に戻して外へ出る。


通りは昨日と変わらず、人影もなく、どこか陰鬱だ。

時折、風に乗ってゴミや骨が舞うことはあれど、彼はまるで意識していないかのように歩く。

全てが終わったあの日以来、彼はただ生き延びるために放浪を続けていた。


やがて彼は足を止め、誰もいない歩道に腰を下ろす。

膝の上に銃を置き、リュックの中から2本の水筒を取り出して比較する。

一方は昨日手に入れた淀んだ水、もう一方は比較的澄んだ水。

男はマスクを少しずらして澄んだ方をひと口飲み、乾パンのように乾いたレーションを食べる。

その乾燥した食料が口内の水分を奪うが、彼は気にせず、再び水を飲んで缶を閉じ、リュックにしまう。


マスクを元に戻すと、男はしばらくぼんやりと廃墟を眺める。

昨日の夜、ここを離れようと思ったような気がするが、結局は同じだろうという考えが頭をよぎる。

外の世界に行っても何も変わらない――彼はそう思いながら立ち上がり、痛む腰を無視して歩き出す。

道中、危うく踏み潰しかけた死体にも目を留めない。


【もしかしたら…】


彼は頭を振る。

進む先は南西だ。


【…かもしれない。】


再び首を振り、何かを振り払うように無意識に死体の頭を踏みつぶす。

そこからムカデのような生物が這い出していった。


【そこへ行けば、何かが終わってるのかもしれない。】


一瞬立ち止まり、空を見上げる。

風が止み、建物の合間にわずかに生えた草や散らばった死体も、ただ黙しているかのようだ。

まるで、彼が何かを待っているのかと問いかけるかのように。


再び首を振り、


【そこに行けば、全て終わってるのかもな…】


と心の中でつぶやく。

足元を見ると、ブーツの底にはまるで死体の一部がこびりついているかのようだった。


「まあ…行ったところで、同じかもしれないけどな。」


男はかすかな声で呟き、その言葉ががらんとした通りに反響する。

そして向きを変え、南西ではなく西へと進路を取った。


【確か…こっちの方向だったはず…】


そのまま男は歩みを続ける。

街の中心から離れるほど建物は粗末になり、倒壊したり草木に侵食されたりしている。

どこを見渡しても同じような光景が続くため、本当に目的地へ向かっているのか、それともただ彷徨っているのか分からない。

そんな中、彼の目に一つの建物の壁が留まる。

かつてのメッセージを塗り潰すように描かれた、ギリシャ神アレスの紋章を思わせる赤いマーク。


「なんだ、これ…?」


男はその紋章に近づく。

この2年間、一度も見たことのないマークだった。

数秒ほど眺め、ペンキが比較的新しいことに気づく。

最初の混乱時に書かれた落書きやメッセージとは明らかに異なっていた。


「こりゃ…」


ガラガラ


振り向いたときには、すでに銃を構えていた。


「がれきか…」


ほっと息をつく男だが、すぐに全身が寒気に襲われる。

何かがおかしい。通りにはがれきしかない。だが、そこにあるはずの“何か”がない。


「どこにも…死体がないじゃないか。」


銃を構えたまま、男は辺りを警戒する。

瓦礫だけが散乱し、いつもならそこかしこにある死骸が一つも見当たらない。

追記(公開後に気づいたこと)


すみません! 実はこの作品に「ボーイズラブ」タグを付けてしまったのですが、本当はBL要素はありません。

サイトのタグを翻訳していたとき、「男の子はこういう作品が好きなの」という意味だと思い込んでしまい、「男の子同士が恋愛する」という意味だとは知らずに使ってしまいました。

もしBL作品を探していた方が、この小説を読んでみたら「えっ、荒廃した世界を男一人がさまようだけ…?」となってしまったら本当に申し訳ないです。



(以下、公開前に書いた元の注釈)



こんにちは! ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

私の作品に目を向けていただけることがとても嬉しく、今後の展開も楽しんでいただければ幸いです!


今回の作品は、私にとって新しい挑戦でもあります。

普段は最低でも二人以上のキャラクターがいる場面をよく書くのですが、今回は孤独な放浪や景色の描写が中心です。

退屈させていないか、ちょっと心配ですね(笑)。


(それから、「lame chargeur」の翻訳が合っていると教えてくださった方に感謝を伝えたいです。

些細なことかもしれませんが、こういう助言が本当に嬉しいんです。)


それでは、皆さんどうか良い一日をお過ごしください!

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