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第1章:…

[ 家に留まってください。政府が状況を掌握しています。反撃は間もなく開始されます! ]


[ 今日はコック・オー・ヴァンの作り方を学びましょう! ]


[ 検疫地域の状況がさらに悪化しました! ]


[ いいえ、俺は何でもない、撃たないで――ああっ ]


[ ロックダウンは万全の効果を示しています。市民の犠牲率は1パーセント以下で、暴力的になった大多数の個体は治療法が見つかるまで拘束されています。 ]


[ シャック…グリー…アァ… やめろ近づくな ああああ! ]


[ 本日は冬空にいくらかの雲がかかる見込みですが、国内全域で荒天はないでしょう。 ]


[ やつらを空から投下している! ]


Click


* * *


崩壊から2年後。


緑豊かな都市からは、死臭がとうに消え去っていた。

いくつもの高層ビルが崩れ落ちた街は、はるか昔に自然の力を取り戻し、誰もそれを止める者はいなかった。

そこに人はいないからだ。


かつて賑わっていた通りに響くのは風の音だけ。

アイスクリームの移動販売車が血に染まったまま放置されたこの通りでは、かつてそこかしこで笑い声がこだましていたが、それも今では時の彼方へと消え失せた残響にすぎない。

錆びついたブランコは、かつて楽しげな子どもたちによって押されていたが、今はただ、いつの日か自分も朽ち果てるまで軋む音を立てるのみ。


プラッ


ある男が空き缶を蹴り飛ばす。彼の名前など、もはやどうでもよかった。呼んでくれる人などいないのだから。

手作りで綿を詰めたような軍用コートをまとい、ガスマスクで顔を隠している。そのフードからはわずかに金髪がのぞいていた。手には革製の手袋をはめ、わずかに震える指先でガイガーカウンターを握っている。その装置は常にかすかなノイズを発していた。


シュルッ


彼は空いている方の手で、時代を生き延びた古い電子機器を操作する。そこから音楽が流れ出し、骸骨のように横たわる無数の亡骸が散乱する通りを満たす。

あらゆる場所に死体の残骸があり、人間も動物も関係なかった。多くの人間が死んだことで、ペットの世話をする者もおらず、飼い主を求めてさまよううちに果てた動物たちが各所に転がっている。


男の呼吸は進むにつれ、わずかに乱れ始めた。見た目には変化はないが、何かが徐々に、そしてかすかに変わっているようだ。

すると、腕時計が鳴り響き、同時に男は激しく咳き込み始める。


「そろそろ寿命か…」


彼の声はかすれ、視線は小さなバッグへ向けられる。そこにはマスクに合うフィルターが一つだけ入っており、彼は急いでそれを取り出して古いフィルターを捨てた。

もはや交換期限を大幅に過ぎていたのだ。


その孤独な影は、古いフィルターを捨てて新しいものに取り替える。その手つきは驚くほど素早く、しかも正確だった。

しかし、手袋の小さな穴から見える肌は荒れており、まるで彼自身も限界を迎えつつあるかのようだ。


男は延々と通りをさまよい続ける。

強制的に開けられた無数の家々や、バリケード代わりに板を打ち付けられ、それでも破壊された窓には一切目を向けなかった。

それらの建物は、おそらく大昔に略奪され、何も残っていないのだろう。

生者がまだ動いていた頃、つまり死体がまだ歩き回っていた頃に。


{ マリー・ド… }


男が唯一足を止めたのは、崩れかけの高層ビルのような建物の前だった。

その看板には文字が刻まれていたが、弾痕や風化で判読不能になっている。

彼は建物の壁にスプレーで書かれたメッセージを横目で見つつ、奥へ進んだ。


{ 生存者がいます! 戦争とあの化け物たちから身を守れ! }


その文字は無残に塗りつぶされ、下にはより大きな字で別の警告が書かれていた。


{ 生きてる人が中にいる。近寄るな }


ここにはもう誰もいない。それがわかるからこそ、これらのメッセージは皮肉にしか見えない。


バアムッ


男は軽く蹴りを入れただけで、錆びた鉄製の扉を破壊した。扉にはいくつかの板が打ち付けられていたが、崩れかけて粉々になりながら床に落ちる。

男は背中に装着していた銃を手に取り、バッグの近くに固定されているそれを構える。銃の下に取り付けられた点滅する懐中電灯の弱々しい光が、建物の中を照らした。

埃が舞い、まるで赤い雪のように静かに降り積もる。この世界が制御不能になったとき、あたりを染めた「緋色の雪」を思い出させる。


「誰かいるか?」


ヒュウ…


建物のひび割れやツタが絡まる隙間から冷たい風が吹き込み、返事の代わりに空虚な音を響かせる。

足を踏み出せば、乾いた血が染みついた落ち葉や枯れた植物を踏みしめるだけだった。


「ここにも何もないのか?」


彼はどこへ行っても、迎えてくれるのは死体と空の棚ばかりだった。

白骨化した遺体には人間の歯型が残っているものもあり、中には一部が食いちぎられているものまである。

だが、そんなものは日常風景に過ぎず、男は特に気に留めなかった。


名もなき男は軋む階段を上り、崩れかけたビルの各フロアを一つひとつ調べていく。

そして、ある瞬間、ついに足を止めた。


「お、やっと見つけたか。」


そこには、汚れた水の入った缶詰と、乾燥した軍用レーションがあった。

引き出しは鍵がかかっていたが、男が力を込めるとあっけなく壊れてしまった。

周囲には虫が群がるチョコレートバーのような残骸が散らばっているが、彼は目もくれず、まだ使えそうなものだけを丁寧に袋に詰める。


薬品の使用期限が切れたもの、非常食、交換用の懐中電灯、予備のフィルターらしき消耗品、さらには工具や弾薬、近接武器まで。

彼のバッグには、荒廃した世界で生き抜くために必要な物が一通り揃っている。

男は腰のミリタリーベルトに装着していた軍用ナイフを抜き、缶詰を開けて中身を確かめる。


「まだいけるな。」


缶は青く錆びついていたが、腐敗の兆候は見られない。

これこそが希少な「当たり」だった。


彼はナイフを再び腰に戻し、建物を後にする。

そしてわずかに残念そうにつぶやいた。


「フィルターが欲しかったんだがな…」


男の思考は時折、世界に自分以外の人間がまだいるのか、あるいは自分が最後の生き残りなのかといった疑問に向かう。

だが、遠くから聞こえる人型の機械たちの作動音が、その空想を打ち消す。

それらは街の清掃を行っているかのようで、通りによっては死体が焼却や溶解処理されているらしく、相対的にきれいになっている場所もあった。


「やっぱりあいつらがいるのか…まずいな。」


より機械的な外見をした個体には、ギリシャ神話の女神アテナの紋章がペイントされている。

人間そっくりの外見を持つものも同じ紋章を身につけており、青みがかった金属製の胸当てと、それを支えるベルトや脚部装甲が特徴的だ。

その装備が、彼らが最新のテクノロジーで作られた強敵であることを示している。


そう、彼らは「脅威」でもある。


「もっと西に移動するしかないな。」


男は銃を構え、半自動ライフルにスコープを取り付けて狙撃モードに変形させる。

指揮を執っているらしき一体を標的に捉えたが、その姿はまるで人間のようにしか見えない。

だが、男はまったくためらわなかった。


!!!


銃声が鳴り響き、アンドロイドの一体が崩れ落ちる。

弾丸はそのヘルメットと胸当ての隙間、ちょうど額にあたる部分を正確に撃ち抜いていた。

残りの機械たちはパニックに陥り、単純なロボットはすべての動きを停止。指示を失ったのだ。


男は建物の影を縫うように移動し、確実に相手を仕留めていく。

やがて、そのエリアにいた機械兵たちは全員、路上の屍に加わる形となった。



「今回は新鮮な食料があるといいが…」


男は倒れたアンドロイドたちの装備を手早く漁る。

ガイガーカウンターが大きく反応するバッグには近づかず、身につけている物だけを確認する。


「プラズマ兵器まで持ってるのか…やっぱり状況は最悪だな。」


男は合成人間たちが手にしていた武器を踏みつけるが、わずかに傷がつくだけだった。

そこで銃に向けて一発撃ち込み、ほとんどを破壊する。

ただし小型のハンドガンだけは自分のバッグに加えた。


「鎧も最新式か…外の世界で何が起こってるんだか。」


男は片膝をつき、もっとも近くにいたアンドロイドの背骨にケーブルを差し込む。


「まあ、これでライトやバッテリーを充電できるな。」


彼らから最後のわずかなエネルギーを奪い取り、再び歩き出す。

見えるのは東の方向だけ。そこには廃墟が果てしなく続き、高層ビルは徐々に少なくなっていく。



こんにちは! この章を読んでくださりありがとうございます。楽しんでいただけたなら嬉しいです。

私は日本人ではないので、もし間違いや誤字などを見つけたら、ぜひ教えてくださいね。もともとフランス語で書いたものを翻訳しています。

続きも楽しんでいただけると幸いです!


(私の小説「Fallen hero」から来られた方で、予告した時間に投稿されなかったのに気づいた方へ…時差の関係で、早朝にあたる時間だったので寝ていました…ごめんなさい…)

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