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ギルド《ボンド》  作者: きたじまともみ
第二章 無償の愛
43/65

43 出発

 次の日の早朝、道具屋の前を通ると、ちょうどシーナとマナが出てきた。


「カイくんおはよう」

「ああ、おはよ」


 すぐにアレンも隣の武器屋から姿を現した。四人揃って東の出入り口に向かう。


 シーナとマナは治癒術が使えるから連れて行かれるんだよな。

 それだけ危険な街だということだ。だからこそチュアロには行ってほしくないと思ってしまう。


「シーナとマナはチュアロに行くの、怖くねーの?」

「私たちが呼ばれたってことは、治癒術が必要なんだと思う」

「皆さんが怪我をして、取り返しがつかない方が怖いです」


 シーナもマナも小さな頃からテアペルジで育ってきたんだ。サブメンバーといっても、俺より腹が据わっている。


「心配しなくても、治癒術師には手を出せないようにバージルさんが取り計らってくれるって。治癒術師がやられたら、治療ができなくなるんだから」


 アレンがそう言うなら、少し気が楽になった。マナを溺愛しているアレンが、マナを連れて行っても大丈夫だと言うのだから。

 東の出入り口には、すでに多くのギルド員が集まっていて騒がしかった。


「おはようごございます」


 リオがこちらに駆け寄ってくる。

 自分の二本の剣を剣ホルダーに差し、ルーカスさんの剣を大事そうに抱えていた。


 時間が経つにつれて、さらに人は増えていく。

 バージルさんとヴィクトリアさんが姿を現すと、シンと静まり返って空気が張り詰める。


「お前ら、準備はいいか?」


 バージルさんの声に、全員が「はい」と声を揃えた。

 空気が震えて、身が引き締まる。


「チュアロを潰すわよ!」


 ヴィクトリアさんが胸の前で両手を合わせると、身体が浮いた。暖かな風に包まれているような、ホッとするような心地だ。

 俺だけじゃなく、全員がふわふわと浮いている。


「出発するわ」


 ヴィクトリアさんを先頭に、何もしていないのに身体が進む。

 すげえ! 俺、飛んでる。

 進むスピードは、走るのとは比べ物にならないほど速いのに、向かい風で目を開けていられない、ということもない。


「ヴィクトリアさんってすげえな。この人数を目的地まで運ぶなんて」


 俺の独り言にシーナが口を開く。


「うん、テアペルジで一番の魔術師だと思う」


 返事が返ってきて驚く。シーナの声は鮮明に聞こえた。そういえば、風がうるさいということもない。


「俺、列車で向かうんだと思ってた」

「チュアロには駅がない。近くの街まで行って歩くから、ヴィクトリアさんが運んでくれてるんだと思う」


 アレンが列車だと乗り換えもあって面倒だと教えてくれた。

 テアペルジの駅が西の出入り口から近いのに、東で集合だから不思議に思っていたが、こういう理由なのか。


「先に向かったルーカスさんたちも、チアさんの魔術で飛んで行ったはずですよ」


 リオがにっこりと笑う。


「でも魔術は味方に使えないはずだよな?」


 攻撃のつもりがなくても、ルーカスさんが作った炎の弓を俺は掴むことができなかった。


「攻撃を弾くより外側で風の膜を作り、身体に触れないように引っ張っているらしいです。僕には魔術のことがわからないので、説明されてもよくわかりませんでした」


 リオが眉尻を下げて頭を掻く。

 話しながら進み、半日ほど飛び続けた。何もない平原で止まる。

 ヴィクトリアさんは平然としており、魔力の多さに圧倒される。これがSランクの実力なんだと思い知る。


「ここでルーカスたちと落ち合うことになっている。しばらく待機だ」


 目では確認できないが、チュアロの近くなのだろう。

 いよいよだと思うとそわそわして落ち着かない。





 三十分ほど待つと、ルーカスさんとチアが飛んでくるのを確認できた。マイルズがいない。何かあったのだろうか? 

 胸の辺りの不快感を和らげるようにさする。


「マイルズはどうした?」


 バージルさんも気になったようで、合流した二人に問いかける。


「マイルズくんはデート中」


 チアが不機嫌を隠そうともせずに口を尖らす。

 マイルズがデート? あいつはチアしか見えていないのに、だれとデートをしてるんだ?


「いや、マイルズはデートだとは思っていないだろ。ギルドのボスの娘に気に入られて、毎日会っている。マイルズがその娘から情報を聞き出し、この短期間で調査を終えることができた」


 マイルズがルルを抱えていて、猫が好きなボスの娘が話しかけてきた。ボスの娘と知らずに話していたマイルズだったが、人当たりの良さを気に入られ、家に招待したいと言われた。そこがギルドハウスだった。とルーカスさんが説明をする。

 毎日ルルを連れてボスの娘と会い、情報を得ていたようだ。


「一人で大丈夫なのか?」


 バージルさんが眉間を寄せる。

 敵のギルドハウスに一人で行くなんて、危ないんじゃないだろうか。


「ギルド員はマイルズくんのことが気に食わないみたいだけど、ボスの娘の客ということで、手出しができないみたい」


 チアは首をすくめる。


「そうか、無事ならいいんだ。ルーカスは三分の一のメンバーを引き連れて、製造場所を潰してこい」

「分かりました」


 ルーカスさんが力強く頷く。


「他の者は俺とギルドを潰すぞ!」


 全員が「はい」と声を揃える。


「マイルズとは、合流の場所を決めているのか?」

「ルルが一緒だから、攻撃を仕掛けたら逃げてくるはずです」

「わかった。チアはマイルズを優先させろ」

「はい」


 チアは決意に満ちた瞳で答えた。


「乗り込むぞ!」


 バージルさんの合図で、再び身体が浮いた。

 スピードを上げて進み、街が見えてきた。


 鉄製の柵が街を囲んでいる。さらに近付くと、出入り口にいる守衛がこちらを認識したようだ。


「チア、ルルが気付くように派手にかましなさい!」


 ヴィクトリアさんに促され、チアは魔力を練り、大量の水を生成した。奔流となって街を襲う。鉄の柵が薙ぎ倒された。


「治癒術師はヴィクトリアとここにいてくれ。みんなは怪我をしたらここに戻ってこい」

「フリューゲルが空から全体を見ている。自分で戻れない怪我を負えば、必ずフリューゲルがここまで連れてくる」


バージルさんに続き、ルーカスさんが安心させるように声を上げた。

 シーナやマナにはヴィクトリアさんが付いている。街の外で待機するようだし、ホッと胸を撫で下ろす。


「行くぞ!」


 バージルさんが一番に乗り込む。


「カイくん、気をつけてね」


 シーナが不安そうに眉を寄せる。


「ありがとう、行ってくる」


 シーナの手をぎゅっと握り、すぐに離した。

 ボンドの仲間と共に、バージルさんの後を追う。

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