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ギルド《ボンド》  作者: きたじまともみ
第二章 無償の愛
40/65

40 調査

 バージルさんは大きく息を吐き出して、よく通る声で叫ぶ。


「その医者を捕らえて、薬を作っているヤツを聞き出した。『チュアロ』という街を納めているギルドが流しているらしい。医者も金のために加担したようだ。まずはルーカスにチュアロに行って調査してもらう」


 ルーカスさんが頷き、バージルさんから話を引き継ぐ。


「チア、マイルズ、私とともに来て欲しい」


 はっきりと「はい」と答えるチア。マイルズは戸惑っている。

 ここにはAランクの精鋭たちが揃っているのに、なんでBランクのマイルズをルーカスさんは連れていくんだ?

 周りも困惑している。


「まずは調査のために向かうから、無用な戦闘を避けるためにチュアロには武器を持って行かない。万が一戦闘になった時のことを考えて、武器を持たずに戦えるマイルズを連れていく」


 マイルズは元々剣士だが、体術を習って才能を伸ばしている。

 Aランクには武器を持たずに戦えるのは魔術師しかいない。だからここにマイルズが呼ばれたんだ。


「はい、精一杯頑張ります」


 マイルズは背筋を伸ばして声を張る。


「みんなは手分けをして薬を回収して欲しい。コレが薬を渡したリストだ」


 バージルさんが全員に紙を配る。最近来た医者と子供が言っていた割にはリストに載る名前が多い。


「医者に行くのは弱っているものたちだ。体調も確認してこい」

「少しでも体調が悪い人がいれば、医務室に連れてきなさい」


 バージルさんとヴィクトリアさんの言葉に全員が「はい」と声を揃える。


「ルーカスたちからの連絡次第で、チュアロに向かうことになるかもしれない。依頼は受けてもいいが、しばらくは近場でできる仕事にして欲しい」


 バージルさんの言葉で、緊張感が漂う。


「全員頼んだ」


 バージルさんの号令で、いっせいに部屋から人が駆けていく。


「カイはシーナを送ってやれ」

「はい、わかりました」


 座るシーナに手を向ける。シーナは手を重ねて立ち上がった。


「私は大丈夫だよ」

「うん、わかってる。でもせっかくバージルさんが言ってくれたし、俺がシーナと一緒にいたいから送らせてよ」

「えっ、あっ、うん。お願いするね」


 頬を染めてあわあわするシーナが可愛すぎた。ガン見していたら、「んんっ」と咳払いが聞こえる。バージルさんだ。

 隣のヴィクトリアさんが「シーナの彼氏なの?!」とバージルさんの腕を叩いていた。


「行こうか」


 二人に頭を下げてシーナと手を繋いで出口へ向かう。

 部屋を出るとルーカスさんとチアとマイルズとリオが、扉の前で話していた。


「リオに私の剣を預ける。リオが来る時に一緒に持ってきて欲しい」

「はい! お任せください」


 ルーカスさんが差し出す剣を、リオは顔を輝かせて受け取った。ルーカスさんの役に立ちたくてボンドに入ったリオだから、大切な剣を任されて嬉しそうだ。

 リオは頭を下げると、薬を回収するために駆けていった。


「マイルズはどうする? 俺が剣を預かって持っていくか?」

「いや、俺はいいよ。人間に剣を向けられないし。カイの部屋に置いておいて」


 俺が聞けば、マイルズは首を振って眉尻を下げた。マイルズから剣を預かる。


「チア、気をつけてね」

「マイルズも頑張れよ」


 シーナと俺が言えば、チアとマイルズが頷く。


「カイもすぐに出発できる準備はしといてくれ」


 ルーカスさんたちからの連絡次第で、俺も戦うことになるんだ。


「わかりました」


 俺は奥歯に力を込めて頷く。





 俺とシーナはギルドハウスを出て、道具屋に向かった。

 シーナを家に送り届けて、二人で紅茶を飲んで一息つく。

 少しだけシーナと穏やかな時間を過ごして家を出た。


 南にある広場を抜けて、街を出る。

 戦闘に向けて訓練しようと思ったら先客がいた。


 リオとアレンが剣を交えている。小柄なリオと長身のアレンではリーチの差がありすぎるせいか、リオが押されているように見えた。


 二本の剣での素早い連撃がリオの持ち味だが、アレンの方が間合いが広いため、受け身に徹している。

 アレンが剣を薙ぎ払うと、リオの剣は地面を滑っていった。


 アレンは荒い息を整えながら、剣を鞘に収める。リオは剣をとりに走った。

 アレンは俺に気付き、片手を上げる。


「カイも特訓か?」

「ああ、アレンってすげー強いんだな。リオを負かすなんて」


 リオの腕は知っていたが、アレンが戦ったのを見たのは、街をゴーレムから守った時だけだった。俺も必死だったから、あまり記憶にない。


「僕はまだまだですよ。僕はカイさんがボンドに入る直前にAランクになったので、Aランクになったのは一番最後です」

「うーん、というより、リオとは戦いすぎてなんとなくわかるんだよな」


 この二人、仲良いのか。


「僕がルーカスさんにテアペルジに連れてきてもらった時に、年の近い人と遊んだ方がいいと言われて、よくアレンさんたちに遊んでもらっていました。その時から棒で剣の真似事をして戦ったりしていたので、アレンさんには僕の動きが読まれているんですよね」


 リオは眉尻を下げて笑う。


「アレンさん、もう一度お願いします」


 リオが張り切るが、アレンは座り込んだ。


「ちょっと休憩させて。次はカイと戦えよ」

「俺、弓しか使えねーから無理だって」


 俺は遠くの木目掛けて弓を引く。矢を放つと、空を切る音を奏でて狙い通りの場所に刺さった。


「アレンさん、お願いします。僕と戦ってください」


 子供の頃からの仲だからか、リオもねだったりするんだな。アレンの服を掴んで揺すっている。


「しょうがないな」


 アレンは苦笑しながら立ち上がった。

 俺は二人が戦っているのを気にしながら、狙った場所に矢を撃ち続けた。

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