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異世界へのエレベーター

作者: 泥ハルト
掲載日:2023/09/07

 幼い頃からオカルトに傾倒していた私は一度、異世界へ行けると囁かれる方法を試したことがある。有名なものでエレベーターを使用したものだ。当時新婚だった私はファミリー向けのマンションへと引っ越し、そこにあるエレベーターが件の儀式に都合が良いと気付いてしまった。そこからはもう、いつどのように実行するかで頭がいっぱいになった。

 別にこの世界に不満があったというわけではない。むしろ結婚したばかりということもあり生活は満ち足り過ぎていたくらいだ。オカルト好きの性とでも呼ぶのだろうか、ただ怖い物見たさの欲求を満たしたいがために行ったもので、もしかしたらその結果になんて興味がなかったのかもしれない。

 丁度タイミング良く夫が出張で不在となる夜があり、その日に実行することに決めた。

 準備は手順を覚える以外は特にない。身一つで実行出来るとても簡単な方法だ。

 そのマンションはオートロックかつファミリー向けということもあり、住人が寝静まる深夜の時間帯を過ぎると人影は全くと言って良いほどなくなる。私は深夜三時を過ぎるとそっと玄関の扉を潜り抜けた。辺りはすっかり静まり返っている。なるべく足音を立てないようゆっくりとエレベーターへ向かった。

 結論から言うと、儀式を行っても当然異世界などへは行けなかった。私は今も元の世界でのうのうと生活している。あれから間もなく子供も産まれ、自分の趣味も全うできないまま慌ただしい日常を過ごしている。

 最近、大きくなった娘が怖い話に興味を持つようになった。血は争えないのかと内心苦笑しつつも、自分と同じ趣味を持ち始めたことに対して嬉しくも感じていた。

「お母さんね、一度異世界に行こうとしたことがあるんだよ」

 ふと、昔の体験を思い出して娘へと話してみた。興味津々で食いついてくるかと予想したのだが、娘の反応は驚くほど冷淡なものであった。

「知ってるよ。私、その時にこの世界に来たんだもん」

 そう一言だけ告げると、次の瞬間にはもう娘の興味は目の前に広げられた怖い話の児童書へと向けられて戻ってくることはなかった。

 私はそれ以降、娘に対して薄ら寒い感情を抱かずにはいられないでいる。

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