第5話 これでやっと…
「ここに乗り込んで来たからどれほど強いか期待たたんだけど、あなたも大したことないのね。」女が落胆する。
(私の攻撃が全て防がれた。私の攻撃が全く通らない…。)キャシーは心の中で呟く。自身の力のなさに落胆していた。
「私はアレク三兄弟の長女、クレオパトラ様よ。あなたみたいな雑魚に構ってる暇はないの。こんなことなら最初に攻撃してきた坊やの方が楽しめそうね。」クレオパトラはそう言ってキャシーに攻撃魔法を繰り出す。
キャシーは防御魔法を展開し敵の攻撃を防ぎつつ、矢継ぎ早に攻撃を繰り出す。
「攻撃魔法:ボンバーダ!」キャシーは攻撃をする。
「防御魔法:アブソリュートプロテクト」クレオパトラはキャシーの攻撃を防ぐ。
「あなたは攻撃魔法のタイプのようね。私は防御魔法の使い手。相性では私が勝ってる。第一、あなたのその専用魔法じゃ、私の専用魔法を使うまでもなく防げそうだけどね。」クレオパトラは余裕の表情だ。
「そうやってバカにしてると痛い目見るわよ。」キャシーはそう言って魔力を込め、
「攻撃魔法:マルティメットボンバーダ」再び攻撃する。
「無駄よ!防御魔法:アブソリュートプロテクト」クレオパトラも再びガードする。
「元の攻撃が大したことないんだから、その上位魔法も大したことないわね。」クレオパトラは嘲笑する。
キャシーは何も言うことができない。心の中に迷いが生じた。(私がここにいるのは場違いなのかも…。やっぱり私じゃ無理なのかな…。)敵はプロである。その隙を見逃さなかった。
「攻撃魔法:ショックスタン」クレオパトラが放つ。
キャシーは咄嗟に防御魔法を展開するが、一瞬判断が遅れたため衝撃を受けきることができず、後方に吹き飛んだ。
「戦闘中に考え事なんて、まったくの素人ね。」そう言ってキャシーに近づく。
「あなたはなぜここにいるの?どうせ流れに身を任せてついて来たんでしょ?自分の意見を持たない、ただ周りに合わせるだけのバカ。私はそういうのが1番嫌いなの。あなたには1番ムゴイ方法で殺してあげる。」そう言ってクレオパトラは魔法で無理やりキャシーを立たせる。
「私のアブソリュートプロテクトは絶対に崩れない鉄壁の守り。私の魔法とあなと後ろの壁にあなたを挟んで圧死させてあげる。」クレオパトラはキャシーを壁に追いやり、魔法を展開する。
「が、あ…あ。」キャシーがなんとも言えないうめき声をあげる。
「うめき声も醜いのね。それが最後の言葉なんてほんと可哀想w」クレオパトラはさらに魔力を込める。
キャシーは朦朧とした意識の中あることを考えていた。(私はなんでここにいるんだろう。ただ普通に生活したかっただけなのに…。そうだワットに無理矢理参加させられて…。なんでこんなことになったんだっけ…?それは…ニコを、仲間を助かるため!)
〈これから先俺たちは仲間だ。何があっても俺たちはお互いに助け合う。このことを誓えるか?〉10年前のワットのセリフが脳裏に浮かぶ。キャシーは目を見開いた。
(仲間のため、私はこんなとこで死んでられない!)
「攻撃魔法:ボンバーダ」キャシーは床に魔法を放つ。すると爆風でキャシーは上へと吹き飛んだ。
「バカな!そんなゴリ押しで抜けるなんて…」クレオパトラが驚く。
「今までよくもやってくれたわね。今までの分たっぷりお返しするわ。」
「バカね!今まであんたの攻撃を全て防いだ筈よ。あなたに私を傷つける術はない。」
「じゃあ聞くけど、あなたは通常魔法と上位魔法のさらに上を知ってる?」
「そんなの常識よ。『奥義』でしょ。まさかね…。あなたの年で魔法の『奥義』を使えるなんてありえない。『奥義』は何年も何年も自己の得意魔法を研鑽して初めて使えるまさに最終奥義。使った者は歴史に名を残すとさえ言われている『奥義』をあなたみたいな小娘が使える筈がない!」クレオパトラは狼狽える。
「じゃあ見せてあげる!私の『奥義』!」キャシーは魔力を込める。
「防御魔法:アブソリュートオメガプロテクト」クレオパトラがキャシーよりも先に自身の上位魔法を唱える。
「攻撃魔法奥義:アルティメットエクスプロージョン」キャシーからとてつもないほどのエネルギーが放出される。そのエネルギーはクレオパトラの防御魔法を難なく突破し、クレオパトラを貫通する。
「見事…。ただのバカじゃなかったようね…。」クレオパトラはそう言い残し、途端、クレオパトラの体が爆発する。
「キャァァァ!」キャシーも爆発に巻き込まれる。
爆発は数秒間続いた後、静かに止まった。あたりに煙がもうもうと立ち込める。キャシーは起き上がる。
「これは、屋内で使える魔法じゃないわね。でも、なんで私は無事なんだろう。なんでこのフロアは無事なの?」爆発の威力は確かに今いるフロアを全て巻き込み破壊するほどの威力だった。キャシーが周りを見渡すと、キャシーの周りそしてキャシーがいる部屋の周りにうっすらと魔法の残滓を感じ取れた。
魔法は消費する魔力に応じてその威力は変わる。自分の命と引き換えに発動する魔法は、時に『奥義』をも超え得る。
クレオパトラはキャシーに敗れ、爆発するまでの一瞬の間に自身の死を悟り、自分の命と引き換えにキャシーとこの部屋の周りに『アブソリュートオメガプロテクト』を掛けていた。自身を打ち負かした相手への最大限の敬意からであった。
(あなたのことは決して忘れない。クレオパトラ、あなたは確かに世界で1番美しいわ。)キャシーもまたクレオパトラに最大の敬意を払った。
すると「大丈夫か!」キャシーの下へワットが駆け寄って来た。「今の爆発は?お前がやったのか?」ワットが心配そうに言う。
「ええ。私の奥義よ。すごいでしょ?」キャシーは自慢げに言う。
「奥義!?お前本当すごいな!やっぱ3人の中でお前が1番天才だよ!」ワットは驚く。
(そんなことない。私はずっと2人が羨ましかった。何か遠くにいるような感じがしてた。でもこれで追いつけたかな?)キャシーはその想いを胸にしまい、
「早く先に進もう!」そう言った。
アレク三兄弟クレオパトラVSキャシー。勝者、キャシー。
「くそっ!何なんだこいつは!」アインが叫ぶ。いくら攻撃魔法を繰り出しても、同じ力で相殺される。
「僕はアレク三兄弟次男、テッサロケニ。」もの静かな敵がゆっくりと喋りだす。
「お前の名前なんかどうでもいい!」アインは攻撃魔法を何回も繰り出す。だがすべて相殺される。
「ちっ!こんな奴に俺の専用魔法を使うとはな。幻影魔法:スパイダーネット」アインが幻術魔法を繰り出す。アインの『スパイダーネット』は喰らうとまるで蜘蛛の巣に捕らわれたかのように動けなくなる。だが、アインが『スパイダーネット』を繰り出した瞬間、アイン自身が蜘蛛の巣に絡まれる幻術を見る。
「ば…か…な…。」アインは苦し紛れの声を発する。
「君は幻影魔法の使い手のようだね。僕は三兄弟で唯一の特殊魔法の使い手だ。僕の特殊魔法は『コピー』。僕がこの目で見た魔法は、特殊魔法を除いてすべて無条件にコピーできる。君が『スパイダーネット』を繰り出した直後に僕はすぐに防御魔法を展開し、すぐに君に『スパイダーネット』を打ち返したんだ。」
(それにしても早すぎだろ。あいつの攻撃の所作がまったく見えなかった…。)アインが心の中で呟く。
「さて、勝負は決まったね。その命貰うよ。攻撃魔法:ショックスタン」テッサロケニは攻撃を放つ。しかし、アインはすんでのところで攻撃をかわす。
「ばかな!君は『スパイダーネット』にかかっていたはず。幻影魔法を自力で解くなんて普通は不可能だ!」テッサロケニは驚く。
「今ならまだ誰も来ないな…。まさかこんな雑魚に使うハメになるとは…。」アインが小さな声で呟く。
「お前一体何を言いているんだ?----うわぁぁぁぁぁぁぁ!!……。」
「さてここから地下3階だ。準備はいいなキャシー。」ワットが尋ねる。
「ええ!」キャシーが答える。
「俺を置いていくとはいい度胸だな、ワトソン」アインがワットたちと合流する。
「なんだ。お前まだこのフロアにいたのか。」ワットがシニカルに言う。
「フン!さっさと行くぞ。」アインが扉を開ける。3人は地下3階に突入した。途端、キャシーとアインの2人が吹っ飛ぶ。
「!?」前方には1人の女が立っていた。
「あななたたちの戦闘は見てたわ。さすがチカマツを倒しただけはあるわね。」女が言う。
「不意打ちとは卑怯なことをするな。」と言うワットに対し、
「あら、地下1階で不意打ちをしたのはどちらかしら。」女が返す。
「さて、自己紹介がまだだったわね。私はテイラー・プレイス。リベレイションズの幹部よ。」
(こいつが幹部か。雰囲気が、いや、経験値が今までの誰よりも、ここにいる誰よりも違う。コイツの目は人の死をなんども経験してきている目だ。)ワットはテイラーから目を離さない。一瞬でもまばたきをすれば殺される。そんな感じを肌で感じ取っていた。
(こいつは間違いなく強い。なら、先手必勝。)ワットはそう考え魔法を繰り出す。
「幻影魔法:フェイクダブル」まずは分身で錯乱させる。
「ばかね…。」テイラーはそう言って、一瞬で分身をすべて倒す。
「なっ!?」ワットは目を見開く。その瞬間ーー
「攻撃魔法:ショックスティンガー」
一筋の光が、ワットの胸を貫く。
ーTo be continuedー