第4話 夢幻の雷
ーーリベレイションズ本拠地地下5階ーー
「シーザー様。魔法省の職員が侵入した模様です。」とある女が言う。
「そうか…。なぜここの存在がバレたのか。奴らを捕らえて吐かせねばな。」
「ならば私に行かせて下さい。チカマツの仇は私が取ります。」女がさらに言う。
「奴らは何者か知らんが、チカマツを倒すほどの者だ。ぬかるなよ、テイラー…。」
ーーリベレイションズ本拠地ーー
ワットたちは扉を勢いよく開け、中に突入した。しかし家の中は、普通の家の内装と変わらず人1人いなかった。3人で手分けして探していると、アインが地下へ続く階段を見つけた。
3人が地下1階に入ると、そこには何人かの人が待ち構えていた。ざっと10人はいるだろうか。ワットは一瞬ひるんだが、アインは一切怯むことなく攻撃魔法を繰り出した。その不意打ちに敵は防御魔法を展開する暇もない。1人の敵が吹き飛んだ。その後間髪入れずにワットとキャシーも攻撃を繰り出した。敵は吹き飛ばされた人を見ていたため、2人の攻撃は防御できず、さらに2人吹き飛んだ。残るは7人。ここまでの時間は3秒にも満たない。
「ヤロー。不意打ちとは卑怯な…。」敵の1人がそういったのも束の間、アインがその敵を攻撃する。続けて残りの敵を4人、次々に何のためらいもなく攻撃し、戦闘不能にしていく。残りは2人。この2人の意識が現実世界に追いつき、攻撃態勢に入ろうとする。しかし、彼らが攻撃をする前に、ワットとキャシーが攻撃をし、2人を倒す。10秒もかからず敵を倒してしまった。
「お前たち、ここに遊びに来ているのか?敵を見つけたら躊躇わずに攻撃をしろ。今の敵は明らかに素人だったから良かったが、プロだったら死んでたぞ。」アインが厳しく言う。
(確かに俺には覚悟が足りなかったのかもな。まさかアインに助けられるとは。)ワットが心の帯を締める。キャシーも覚悟を決めたようだ。
地下1階の敵は素人しかいなかった。チカマツと戦ったワットとキャシーにとっては倒すのに何の造作もない敵ばかりだった。こうして3人は地下1階を攻略し、地下2階に突入した。
ーー地下2階ーー
地下2階でもたくさんの敵がいた。だが同じく素人ばかりなので3人は無双していた。ところが急に敵から歓声が上がる。
「アレク三兄弟が来てくれた!」「リベレイションズの殺し屋三兄弟が助けに来てくれた!」
すると3人の目の前に男が2人と女が1人立ちはだかる。
「アレク三兄弟?」ワットは立ち止まる。
「そんな奴ら知るか!俺が片付けてやる。」アインはそう言いながら、攻撃魔法を繰り出す。だが、女の防御魔法により防がれてしまう。
「俺の攻撃を防ぐとは、なかなかいい腕してるね。」アインが言う。ここまでアインの攻撃を防ぐことができた者はいないので、それなりの実力があるのだろう。
「さて、獲物をどう分ける?」女が言う。
「そんなもの早い者勝ちに決まっているだろう。:男の1人がそう言うと、ワットに襲い掛かる。ワットはすんでのところでガードをする。
「じゃあ私はあのカワイ子ちゃんをもらうわ。」そういって女はキャシーを攻撃する。
「こんな奴らにかまってられるか。俺がボスを倒して手柄をいただく。」アインはそう言って、残る男を無視し、別の部屋に入った。遠回りして、地下3階への階段を目指すらしい。だがそこには残る男が既に立っていた。
「不気味な奴め。」そう言ってアインは魔力を込める。
「攻撃魔法:サンダーブレイク」無数の雷がワットに降りかかる。ワットは防御魔法を展開し、全て防ぐ。(なんて攻撃だ。防ぎきれるか?)もう少しのところでワットの防御が破られるところで敵の攻撃が止んだ。
「私の攻撃を正面から受けきるとは。貴様、名は?」男が尋ねる。
「人に名前を尋ねる時は、まずは自分が名乗るべきなんじゃないか?」ワットが答える。
「それは失礼した。」男はそう答え、「私の名前はアレク。アレク三兄弟の長男だ。リベレイションズの思想に賛同した殺し屋だ。さあ、貴様の名を答えよ。」と言った。
「俺の名前はロバート・ワトソン。魔法省の者だ。」ワットは静かに答えた。
「では、ロバート。2セット目に行くぞ!」アレクはそう言って、魔力を込めた。
(させるか!)ワットはアレクが攻撃をする前にナイトメアを放った。
「攻撃魔法:サンダーブレイク」ワットのナイトメアが当たるのと同時に雷の攻撃が降り注ぐ。
(自分が攻撃されてもお構いなしかよ。)ワットは再び防御魔法を展開する。(だが、ヤツにナイトメアが当たった。ヤツはしばらく動けないぞ)ワットは攻撃の雨が止むのをじっと待つ。
すると、攻撃の中の1つがアレクに当たる。するとアレクは目を覚ました。(な!?自分で自分を攻撃して、幻術を解きやがった。)ワットは動揺する。
「幻影魔法とは、なかなか小賢しいなワット!まだ踊れるだろ!?」そう言ってアレクは再び雷の雨を降らせる。
(くそ!この攻撃量は防ぐので手一杯だ。ヤツにナイトメアを当てる隙がねぇ。何か作戦を考えねぇーと。何か他に使える呪文はないか?)ワットは過去に記憶を巡らせる。
ー10年前 魔法学校ー
「先生、俺にもっと魔法を教えてくれよ!」学生時代のワットが言う。
「いいえ、我々が教えられるのは基本魔法それぞれ1つずつだけです。」先生は優しく答える。
「なんでだよ!先生はもっとたくさん使えるじゃねぇーか。」ワットは強く言い返す。
「魔法は人によってそれぞれ得意・不得意があるのです。例えば、私は防御魔法が得意なので、『プロテクト』以外も使えますが、幻影魔法は『ナイトメア』以外使えませんよ。なので、私が教えられるのは、皆が共通して使える魔法1つとその上位魔法だけで、あとは自分の得意な魔法を独学で伸ばしていくしかないのです。」
「なんだよそれ〜。じゃあ俺が得意な魔法はなんだ?」
「私が見る限り、君は幻影魔法が得意なようだね。これを読むといい。」そう言って先生は、分厚い本を手渡した。
ー現在ー
(そういえばあの時先生に貰った本になんて書いてあったっけ?当時は難しくてよく分かんなかっただよな。)ワットが記憶に想いを馳せる。だが、
「隙あり!」アレクが無数の雷を一点に集中させる。無数の雷が一本の強力な雷となり、ワットの防御と体を貫く。
「がはっ!」ワットはその場に倒れ込む。だがワットの脳内は過去の記憶が蘇っていた。「幻影魔法は、攻撃力がゼロに等しい。故に他の魔法に比べて甘く見られがちだが、当たれば確実に敵の動きを封じるという強みがある。幻影魔法を極めたい者はまずこの魔法を覚えてみよ。」ワットはかつて師から貰った本の一節を思い出す。そしてゆっくり立ち上がる。
「まだ立ち上がるか。たが、次攻撃をくらったらもう立てはしまい。」そういってアレクは再び魔力を込める。
「幻影魔法:フェイクダブル」無数のワットが現れた。
「これは分身!?だがすべてを攻撃すれば、本物は1つだけだ!」アレクはそう言って、すべての分身に攻撃をした。だがそこに本物のワットはいなかった。
「何!?」アレクは驚く。と、同時に後ろを振り向く。そこにはワットがいた。
「お前の攻撃は強力だが、再び攻撃をするまでに隙がある。それがお前の弱点だ。」ワットはそう言って攻撃魔を放つ。
「攻撃魔法:ショックスタン」アレクに直撃する。
アレクはその場に倒れ込み意識を失った。ワットVSアレク。ワットの勝利である。
ーTo be continuedー