final episode.
「……ん……?」
身じろぎをすると肩に温かい感覚があり、あまりの心地よさに顔をうずめた。大きな優しい手が私の髪の毛を撫でる。
「高宮さん?」
まだ眠たい瞼を開くと、高宮さんが優しく微笑んだ。
「疲れたでしょ? 少しは眠れた?」
「……あれ!? 私、何で!」
混乱する思考で起き上がると、さっきの出来事を思い出そうとする。確か、みんなが集まってきて…そんなことを考えていると、ギュッと高宮さんに抱きしめられた。
「とりあえず家に帰ろう。話はそれからでも大丈夫だから」
「でも! もう高宮さんとは一緒にはいられない……指輪も」
私が高宮さんに結婚指輪を差し出すと、一瞬迷った素振りを見せたが、私の手を優しく包み込むと指輪を受け取った。
「もう、俺と一緒にいるのは嫌になった?」
「そ……そういうわけでは……」
「じゃあ、大丈夫だよ。何も心配しなくていいから」
ポンポンと頭を撫でると、私の手を取って立ち上がる。昨日からの緊張でほとんど寝られなかったせいで少しふらついてしまった。高宮さんは何も言わずに私を抱き上げると、駐車場まで運んでくれた。
「あ、ありがとう……ございます」
「家着くまで寝てて大丈夫だから」
「ううん、高宮さんと話したい……です」
夕方の市街は車の量が多く思うように進まない。市街を抜けて少し車を走らせてると、大きな夕陽が丘陵地に飲み込まれていくのが見えた。夕陽が沈んでいくにつれ、海は漆黒の闇に包まれ何も見えなくなってしまう。
「いろいろ家のことで迷惑かけてごめん。結衣にお金渡すなんて、ほんと何考えてんだか! 親父が最低なことして、もう俺らに関わりたくないと思ってるよね……本当にごめん」
「……仕方ないです。私、高宮さんと釣り合うほどの家柄もスペックも持ち合わせてないので、お父さんが反対される気持ちわかります。ドラマとかでよく見るので、きっと政略結婚とか、いろいろあるんですよね」
家柄とか考えた事なかったけど、結婚の話が出てから自分なりに高宮家について調べるようになってからは、私なんかが一緒にいること事態奇跡なんではないかと思うほどだった。
確かに高宮さんの容姿や、滲み出る貴族感は育ちの良さから来るものだったのだろう。私は、王子に憧れる平民の娘の立場で、一生関わることのない人種だったに違いない。
「何か、変なこと考えてない?」
「とんでもないです! この1年すごく幸せな時間を過ごす事ができました! 魔法が解けただけで……」
「魔法? 俺、魔法使いじゃないし、その言い方……俺とのこと終わった話みたいに言うのやめてくれる? 俺は一生結衣を大切にするって、さっき神様に誓ったばっかりなんだけど」
「あの! 罰なら私一人で被ります! 高宮さんは何も悪くないことちゃんと神様に伝えて謝ります! だから高宮さんはこれからちゃんと幸せになって下さい」
「いい加減……!」少し荒い運転で路肩に車を停めると、高宮さんに唇を塞がれた。いつもの優しいものではなく、怒りをぶつけるようなそれに抵抗をするも力で押さえつけられる。
「俺は結衣としか考えてないって言ってんの。頼むからもうあきらめて」
「……私、高宮さんとずっと一緒にいたい……」
本当に一緒にいてもいいのかな……一緒にいられるなら……迷っている私を見かねた高宮さんが小さく両手を広げる。多分選択肢は一つしか残っていない。高宮さんの胸に飛び込むと思いっきり抱きしめると、答えるようにぎゅっと抱きしめられた。
「君を一生大切にすると誓うよ」
高宮さんはそう言うと、私の左手に指輪をもう一度はめてくれた。




