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side律

数日前からインド洋を航行する船を護衛する任務にあたっていた。日本を離れてすでに2週間が過ぎていた。


りつお疲れ。すげー盛り上がってるぞ、お前の略奪愛りゃくだつあい話」


「あ”!?」


略奪愛ってなんだよ!? 他に話す事ないのかよ。ただでさえ、あの日から結衣ゆいさんと連絡が取れない状況に俺がどれだけのストレス状態に陥っているか。


「まぁ、落ち着けよ。律にしては珍しい行動だったのは否めないが、結局付き合うことになったと聞いたぞ。何が不満なんだよ」


「付き合うことにはなったけど、俺が強引に押し切った形になったのに、一か月放置って何プレイだよ? 最悪だろ」


「いやいや、今までだって数か月放置とか普通だったろ。それで何度俺たち別れてきたと思ってんだよ。海上自衛官の宿命だ。それくらいお前も覚悟の上だろ? それにだ、仕事人間の律が今までの彼女にそんな執着見せたこと無かったし」


東堂とうどうは呆れたように、盛大にため息をつくと、「ご愁傷様」と俺を残して艦内に戻って行った。



ようやく横須賀に戻れたのは一か月後だった。陸に上がって事後処理を行った後、ようやく基地を離れる事ができた。てか、何でよりによって今日なんだよ。


「すげー顔してるぞ、律」


「じゃ、今日じゃなくていいだろ?」


「19時、ハイランド東京。遅れるなよ〜」


基地を出てからスマホの電源を入れると、鬼のような着信が数分鳴り止まなかった。まぁ初めのうちは驚いたが、今ではもう慣れてしまった。メッセージアプリを開くと彼女の名前を探した。


一件の表示に恐る恐るメッセージを開く。


『連絡下さい』


日付を見ると3週間も前のものだった。たったの一件が3週間前のそれだけって。



午後7時すぎ、東堂に指定されたホテルの最上階にあるバーラウンジな来ていた。店内は落ち着いていて、ガラス張りの店内からは東京の夜景が一望できた。


先に来ていた同期の東堂とうどう圭介けいすけと、同じく同期で陸上自衛隊所属の藍沢あいざわたくみと合流する。大学時代から何かある度、こうして3人で集まっていた。俺は席につくと、少し強めの酒を煽った。


「東堂…俺、多分もうすぐ振られる予感がする」


「何で? 今日会って来たんじゃねーの?」


「あのウワサの!? 高宮が一目惚れして告った相手だろ? お前がそこまでする相手ってどんなスペック持ってんだよ? しかも今日って長期任務明けじゃねーの? よくそんな体力残ってたな?」


「変な想像すんじゃねーよ。ほんとに彼女の仕事終わりに少し会って来ただけだっつーの」


「いや、待て、あの高宮が? 一か月もご無沙汰なのに!? 女目の前にして指一本触れずに? お前ほんとに高宮か?」


この男、いったい俺のこと何だと思ってんだ? 俺だって彼女のこと思いっきり抱きしめたかったが、ただでさえ俺に興味もってない上に、拒否られてこれ以上幻滅させる訳にはいかなかったんだよ。クソっ!


「お前もそんな弱気になる時あんのな。女なんて、他にごまんといるから安心しろ」


「律、逃げられる前に何かしら手を打った方が後悔が減るぞ」


「あぁ、まぁ近いうちに会って話をするつもりだ。って、おい、俺が振られる前提かよ!?」



ホテルを出ると2人とは駅で別れた。カバンからスマホを取り出し、メッセージアプリを開く。外の空気とは打って変わって、スマホにはまだ先程の店内の冷気が残っていた。


『明日もう一度会えませんか?』


俺はスマホを胸ポケットにしまうと、基地方面の電車に乗り込んだ。

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