side律
何故俺は…今彼女を他の男のところに送り届けているのだろうか…。
「だめですよ東堂さん」
「結衣さん…でも俺…」
深刻な表情で東堂を見つめる結衣に、なんとも腹立たしい気持ちを抱いている俺は心が狭いのだろうか…東堂の件については結衣に一任した手前、下手に口出し出来ない立場にいる。
「筋トレより、まずは怪我を治すことを優先させて下さい!」
俺は明日からの任務に備え、あと数分でこの場を去らないといけない…いけないのだが! 色々言いたかったことをグッと飲み込むと彼女に声をかけた。
「結衣、東堂のこと頼むね」
「はい! 任せて下さい!」
彼女は無邪気な笑顔を見せ、気前のいい返事をする。思わず彼女の手を引き腕の中に収める。彼女は驚くも、抵抗することはなく腕の中で恥ずかしそうにしていた。
「…高宮さん?」
俺の顔を見ようと、上を向く彼女の額にキスをする。これくらいなら許されるだろう。彼女が頬を赤くする様を見ているだけで、離れるのを寂しくさせた。多少の牽制のつもりだったが、東堂はニヤニヤと俺の行動を確認していた。
遠くの親戚より近くの他人かよ。
「高宮さん…気をつけて行ってきてください…」
顔に出てたか? 俺のちょっとした感情に敏感に反応する結衣の頭をなで、笑顔で「行ってきます」と声をかけ病室を後にした。
「高宮一尉! 東堂一尉の怪我は少しは良くなってますか?」
「秋庭…今、俺の前でその名前を口にするな」
「何でですか!? 高宮一尉は心配じゃないんですか?」
あぁ! ある意味な! 東堂が! 変な気起こさないか心配だよ。でも、ここはスマホの電波が届かない海の上。船体を青く染め上げるのではないかと思うくらい真っ青な海が今日は憎らしく感じたのだった。




