episode.21
シトシトと外から雨音が聞こえてきて目が覚めた。休みの日はベッドから出るのをついつい後回しにしてしまう。
スマホを確認するとまだ朝の8時。私はもう一度ベッドに潜り込むとうとうとし始めた。すると、眠りを妨げるように手の中でスマホが震えた。無意識に通話をスワイプすると、耳もとで心地よい低音の声が響いた。
「もしもし結衣? もうすぐ着くけど準備出来てる?」
えっと……そうだった! 思考がはっきりとし、一気に眠気が引っ込みベッドから飛び起きた。今日は高宮さんと久しぶりのデートの日だったのだ。最近はまた海に出ることが多く、なかなか会えなかったのに。あと5分では到底間に合わない。
「あ…あの…高宮さん。…ごめんなさい! 今起きました!」
で、うちのキッチンで高宮さんが私の朝食を作っている。私はかろうじて軽く化粧を済ませ、昨日から用意していた服に着替えていた。雨も降っているし、午前中は家でのんびりしようということになった。
「あの…高宮さん…本当にすみません」
「さっきから謝ってばっかりだね。そんなに悪いと思ってるなら…」
「えっと…それは…」
私の隣に腰を下ろすと、高宮さんはミニトマトをフォークでさし差し出した。う……食べろってことだよね…。目が合うと高宮さんはにっこり微笑んだ。ええい! 覚悟をきめてミニトマトをパクッと食べた。
恥ずかしい気持ちをどうにか抑え、もぐもぐとミニトマトを食べる。高宮さんは満足そうに、次の獲物を品定めしている。
「もう大丈夫です! 自分で食べます!」
少し残念そうにする高宮さんからフォークを受け取り、きれいに焼かれた卵焼きを頬張る。ふわっと口の中に甘さが広がった。高校生から一人暮らしで料理はできると聞いていたが、ありあわせの材料でここまでちゃんとした朝定食を作ってしまう高宮さんって!
どれもこれも美味しすぎて、次から次に口に放り込んでいった結果むせる。大丈夫? と、すかさず高宮さんがお茶を手渡してくれた。
「完璧過ぎます……仕事熱心で真っ直ぐで、優しくて大人で、しかも料理までできちゃうなんて…」
その上、ハーフのようなきれいな顔が好きなことはとりあえず伏せておいた。
「結衣は俺のこと、大好きでいてくれたんだね」
「そ…それは…」
高宮さんは少しだけ椅子を近づけ「ケチャップついてた」と指で私の唇をなぞると自分の口へと運ぶ。私はすんでのところで高宮さんの手を引いた。
「…どうするの?」
高宮さんは余裕の笑みで私を挑発してくる。何か今日は私ばっかり高宮さんにドキドキさせられっぱなしで悔しい! 私だってドキドキさせたいと、ケチャップの付いた高宮さんの指をペロっと舐めてやった! 「どうだ!」という気持ちで高宮さんを見ると、すごく色っぽい目で私を見据えている。
「これは結衣が悪いよね?」
「…え?」
クイっと顎をあげられ高宮さんの唇が重なる。ぬるっとした感覚が上顎に触れ、身体が反応してしまう。高宮さんは私の反応を見ながら、ゆっくりと深いキスをする。息つく間もなく、優しい口づけがふってくる。
「ん…やぁ……た、たか…みや…さ……んっ…」
高宮さんがキスをしたまま私のブラウスのボタンを一つずつ外す。下着が露わになり急に恥ずかしくなった。
「隠さないで…」
ブラウスを胸元で押さえていた手をゆっくりと解くと、するりと肩から落ちる。無駄な抵抗が出来ないように、高宮さんは私の両手を掴み上げると、椅子の背もたれ側に押さえた。
また唇が重なろうとした時、テーブルの上に置かれた高宮さんのスマホが鳴った。
「た、高宮さん! スマホ!」
「ん、大丈夫…」
とスマホを無視して私に何度もキスをしていたが、切れては鳴りを3度繰り返したときには、さすがの高宮さんも気になったようで「ごめん…」と電話に出た。
どうやら仕事の電話のようだった。電話を切ると青ざめる高宮さんがいた。
「大丈夫…ですか?」
「東堂が…負傷したらしい…」




