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episode.14

「時間が解決してくれる…」


東堂さんはそう言っていたけれど、高宮さんを忘れられる日なんてくるはずもない。不安なとき、高宮さんの優しさに何度救われたか…私とのことにどれだけ真摯に向き合ってくれたか…言葉では言い表せない。


だけど、高宮さんが千代さんを選んだのなら…。



私は意を決して、高宮さんに電話をかけた。数コールして、電話ごしに高宮さんの声が聞こえただけなのに胸がギュッと締め付けられる。



「高宮さん、会ってお話ししたいことがあります」


「俺も結衣さんに話さなければならないことが…」



名前を呼ばれて思わず涙がこぼれそうになる。外で話す内容ではないからと家に呼ばれたが、きっと辛くなってしまう…それならと初めて出かけたときみたいに高宮さんの車で話をしたいと提案した。


3日後の金曜日、仕事終わりに高宮さんが迎えに来てくれて会うことになった。



図書館の仕事が終わりロッカー室で、髪を直して服装を確認する。別れるとしても…今日会えるのが最後になったとしても、高宮さんにはいつもちゃんとした自分で会いたい。


少し早く待ち合わせ場所に着いた。厚手のコートにマフラーをしていてもこの時期の夕方はかなり冷え込む。かじかんだ手をポケットに入れるも芯まで冷えた指先が温かくなることはなかった。



待ち合わせから10分が過ぎた頃、高宮さんの車が駐車場に入ってくるのが見えた。車に近づくと高宮さんは車から降りて助手席のドアを開けてくれた。


いつもと変わらない高宮さんに、ここ数日の出来事は夢だったのではないかと錯覚してしまいそうになる。



「ごめん、遅れて…寒かったよね。手も鼻先も赤くなってる。待ってて…暖房キツくするから」



少し前までの高宮さんなら、迷わず私の手を取って温めてくれた。こういうところで現実を突きつけられると結構くるものがある。



「大丈夫です! さっき来たところだし、そこまで冷えてませんよ」



感情とは裏腹に、高宮さんに心配をかけないように努めて明るく振る舞うようにした。


「あの、それで話なんですけど…」


「うん、とりあえず温かい飲み物買って、落ち着いたら話そう」


コンビニに寄って、お互い温かい飲み物を買うと車に乗り込んだ。高宮さんは駐車場から車を出すと、10分ほどで海の見える近くの公園へ到着した。その間、お互いに話はせず、私はただひたすら買ってもらったカフェ・オ・レのボトルを見つめていた。



「寒いから中でいいよね?」


「あの、私から。…これ…」



私はカバンから小さな箱を取り出して高宮さんに手渡す。高宮さんは複雑な顔で箱を見つめていた。



「今まで…ありがとうございました。私…高宮さんと付き合ってよかったです」


「…もしかして…東堂から千代のこと聞いた?」



覚悟はしてきたつもりだったが、高宮さんから彼女の名前を聞くと結構つらいものがある。泣き出したい気持ちをおさえ、高宮さんの質問に答えた。



「ごめん、俺からちゃんと話さなきゃいけなかった。千代のこと好きとか、付き合うとかじゃなく…ただ今は彼女の側にいてやりたいんだ。…だから、こんな状態で結衣さんと付き合うのは違うと思って…。本当にごめん」



「謝らないでください。私は…後悔してないです」


「…俺に出来ることがあったら…」



『私の側にいて』と心の中で何度も言ったが、最後まで口にすることはなかった。



「最後に…抱きしめて下さい」


私がそう伝えると、高宮さんは少しためらいながら私を引き寄せ優しく抱きしめてくれた。

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