episode.11
高宮さんの運転で近場のキャンプ場まで来ていた。この前もらったチケットはこのキャンプ場で行われる『星空観測会』のもので、結構人気のあるイベントらしい。
夕方キャンプ場に着くと、何から何まで高宮さんがテキパキと準備してしまった。暗くなるまで時間があるということで、2人で周辺散策をすることにした。管理棟近くにはフードワゴンも出ておりちょっとしたお祭りのようだった。まだ明るい時間だったが、広場では大きな丸太が高く積み上げられ、キャンプファイヤーが行われている。
キャンプ場から少し歩くと林道がいくつも整備されており、シーズンになるとハイキングのお客さんで賑わうと高宮さんが教えてくれた。
「足元悪いから気をつけて」
と自然と高宮さんが私の手を取りエスコートしてくれる。林道をはいると周囲は木々が鬱蒼と茂り、私一人では間違いなく迷子になりそうだった。
「もう少し行くと滝があるよ」
高宮さんが慣れた感じで林道を進んで行く。
「よく来るんですか?」
「今はあんまりだけど、昔はよく来てたかな…」
いつものスーツ姿もかっこいいけど、今日の山仕様の服装はメーカー専属のモデルばりに着こなしていてかっこいい。
すると、不意に高宮さんにキスされた。
「あんまり可愛い顔で見られると襲いたくなるからやめて」
恥ずかしそうに高宮さんが頭をかいた。
「す、すみません! あまりにもかっこよすぎて…その…」
眼前が開け、大きな滝が目の前に現れた。言葉にならない自然の雄大さに魅入っていると、高宮さんに後ろからハグされる。
「さっきまで俺のこと見てたと思ったのに…ちょっと心配になるな」
え? それってヤキモチですか!? 可愛すぎます、高宮さん!!
テントサイトに戻ると高宮さんが簡単にホットサンドを作ってくれた。テントサイトは管理棟や広場からは離れており、近くのサイトからの話し声が少し聞こえるだけでとても静かだった。冷えた空気の中、ほおばるホットサンドは世界一美味しかった。
焚き火台の火も落ち着き、炭が赤くなっては消えを繰り返すころには、空は満天の星空になっていた。
「すごい…空には星がこんなにもあるんですね」
「街だと灯りが多すぎて見えないよね」
熱々のコーヒーをすすりながら2人でのんびりとした時間をすごす。たぶん何時間見てても飽きないくらい星が美しかった。
高宮さんが急に立ち上がり私の側で跪き、上着のポケットから小さな箱を取り出し私の手に置いた。
「結衣さん、俺と結婚して下さい」
星の瞬きと同じくらい、高宮さんがくれたその指輪はキラキラと眩しく光り輝いて見えた。私も高宮さんとずっと一緒にいたい…。
「あれ? 律? やっぱり律だ!」
小柄で可愛らしい女性が高宮さんにかけより、親しげに話しかける。
「…千代…なのか?」
高宮さんは驚いた表情で彼女の手を掴んだ。
「今までどこにいたんだ!? どれだけ俺が心配したか…」
すると彼女は高宮さんを抱きしめ「ただいま」と呟いた。「よかった、無事で…」と、あまりにも当たり前に抱きしめ返す高宮さんを見て、胸が押し潰されそうになった。




