side律
「はぁ…」
「律さん、新年早々大きなため息、運が逃げてきそうだからそろそろ辞めません?」
「…東堂…」
俺としたことが、結衣さんを泣かせてしまった…なんなら確実に怖がらせた…。あの時、「大丈夫」だと言った彼女の唇は震えていた。「また会いたい」と言ったのも、俺に気を遣ってのことだろう。
「しかしな。いやー、あの律が。全然上手くいってない上に、相手のことばっかり考えてるって(笑)」
「ほっとけ」
「高宮一尉、結衣ちゃんと喧嘩でもしたんすか?」
わらわらと秋庭を始め、隊の連中が集まり始めてしまった。俺は面倒をさけるため早めに帰宅の準備をし、基地を後にした。
スマホを取り出しメッセージアプリを確認する。
いつもなら何かしら結衣さんから連絡がきているのだが、ここ数日は音沙汰無しだった。最悪のパターンが頭をよぎっては通り過ぎを何度も繰り返している。こちらから連絡を入れるべきなのは重々承知だが、しかしどう連絡すべきか…多分この一回の連絡で今後が大きく左右されることは間違いない。
文字ではダメだ…とにかくもう一度会って話さなければ。
でも、そもそも結衣さんが会ってくれる保証などない。あれこれ考えているうちに、結衣さんの職場まで来ていた。我ながら、必死すぎてやばいな…図書館に入ると貸出業務を行っているカウンターを見るもそこに彼女の姿はなかった。足早に館内を見回るが結局その日彼女に会うことは出来なかった。
次の日も彼女に会うことは出来ず、カウンターの女性に結衣さんのことを尋ねたが、個人情報の関係上そういったことは教えられないと言われた。明らかに怪訝そうな顔で俺をストーカーか何かと見ているようだった。
「こんにちは。三雲さんに用事ですか?」
帰り際、図書館のネーム入りのエプロンをつけた小柄な若い女性に声をかけられた。
「昨日もお見えになっていましたよね? 確か前に三雲さんと一緒にいるところをお見かけした事があって…三雲さん今少し体調を崩されているみたいで、今週はお休みだそうです。それで、何か急用でしたら、伝言をお預かりすることはできますが…」
「そうなんですか、体調を…いえ…お気遣いありがとうございます」
俺は図書館を出るとスマホを取り出し結衣さんに電話をかけた。
「…もしもし」
少し掠れた眠たそうな彼女の声が聞こえた。




