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episode.8

玄関を入ると、閉まった扉を背に高宮さんに抱きしめられる。


「…ほんとに、いいの…?」


私は勇気を振り絞って小さく頷いた。高宮さんはゆっくりと跪くと私の手の甲にちゅっと優しくキスをした。真っ暗で静かな室内に生々しく音が響く。手の甲から指の方へと何度も口付けされ、だんだんと何も考えられなくなってきた。指からの感触と耳からの情報とで心臓が今にも飛び出しそうに早鐘を打つ。手の甲にキスをされているだけなのに…息が苦しくて変になりそう。


「…ん…た、たか…み…やさんっ…ぁ…」


高宮さんにベロっと指と指の間を舐められると、急に力が入らなくなってしゃがみ込んだ。私、どうしちゃったんだろう…。


「…大丈夫?」


「…ん…は、はい…」


はぁはぁと息も絶え絶えに応える。高宮さんは私を抱き起こすと、お姫様抱っこでリビングまで連れてきてくれた。優しくソファに下ろすと、着ていたコートを脱ぎながら今度は唇にちゅっとキスをした。


「舌、出して」


高宮さんに言われるがまま、べぇっと少しだけ舌を出した。ちゅうっと舌を吸われ身体が緊張で硬くなる。


「…もっと出して」


ぬるっとした感触が上顎を撫でた。思わず甘い声が漏れる。唇の輪郭を確認するかのように、何度も唇が重なり激しくなってきた。


「んっ…はぁ…高宮さ…ん…やぁ…」


「何度も名前呼んで、俺のこと煽ってるの?」


「ち…ちがっ…」


今度は首筋に高宮さんの唇が移動した。高宮さんの柔らかな毛が首元を掠め、くすぐったいような気持ちいいような感覚を覚える。ヒヤッとした高宮さんの手が私のお腹を撫でた。その手はするするとウエストラインをなぞり背中に回る。


「んっ」


「手どけて」


いつもの優しい高宮さんとは違う雰囲気に息が詰まりそうになった。両手を頭の上で掴まれ身動きが取れない中、高宮さんのキスは首筋からだんだんと胸元に降りてくる。


「…高宮…さん」


震える声で呼ぶと、高宮さんが顔を上げた。一瞬で青ざめる高宮さんの表情と、自分のほほを伝う涙の感覚が…。


「ご、ごめん!」


掴まれていた手が解かれ、ギュッと強い力で抱きしめられる。私、泣いてるの? 次から次へこぼれる涙を止めることができなかった。高宮さんの胸からドッドッドっと大きな心音が聞こえる。


「ごめん! ほんとにごめん。君を怖がらせるつもりは無かったんだ」


高宮さんは私の涙が止まるまでずっと背中をさすってくれていた。その間もずっと「ごめん」と謝り続けている。私、いつも覚悟はしてたつもりだったのに…少し強引な高宮さんが違う人に見えて怖くなってしまったのだ。


「高宮さん、ごめんなさい」


「謝らないで…結衣さんは何も悪くないんだ。俺が我慢できなかった…」


身体が離れると、高宮さんが心配そうに私の顔を覗き込む。ほほを伝う涙を指で拭ってくれる。高宮さんが求めてくれて嬉しかったのに…こんな私じゃ…幻滅されたかも…。


「わ、私、大丈夫です!」


「ありがとう…でも無理しないで。これ以上結衣さんを怖がらせたくないんだ」


高宮さんはもう一度優しく抱きしめると「今日はもう送っていくよ」とコートを羽織り直し、車のキーをポケットに入れた。私は不安に駆られ思わず質問をした。


「高宮さん…また…会ってくれますか?」


彼は振り返ると少し寂しそうな顔で私を見つめる。


「私は…会いたいです…」


「…俺もだよ…」


少しの間が私を一層不安にさせた。

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