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第七話

挿絵(By みてみん)


またも様々な残留思念を読み取りながら、パチンコ屋に面した側の角部屋付近の廊下を歩き回った。

だが該当するようなものは無かった。


(やはり後から人の出入りが何度もあると急性的思念は残らないか…)

真行寺は溜息を吐いた。


残留思念には急性的思念と慢性的思念があるのだ。


急性的思念は

死に際の念や興奮状態の思念などで

人の出入りが有る場所に長時間残る事はあまりない。


一方で慢性的思念は

普段からの精神的雰囲気を反映した思念であり

それはその人物が滞在した時間が長ければ長い程残る。


吐いた息、汗、抜けた体毛、体表面の油分や分泌物やバクテリア、指紋。

何が媒介しているのかは、いずれ詳しく解明されるのかも知れないが


とにかくその人物が普段通りの精神状態で、普段通りの考え方で長く過ごした場所や、その場所に在った物などに慢性的思念が残留思念として残りやすい。


なのでやはり事件に纏わる急性的思念で尚且つこういった場所だと

事件直後でなければ読み取れないようだ。


(このまま何も手掛かり無しというのも味気ないな…)

と思ったのだが廊下に何か落ちていたのを見つけた。


紙だ。


本を破り取ったもののようだが

すぐにピンと来た。

聖書のページを破り取ったものだろう。


このホテル全体でなのかは判らないが、真行寺がチェックインした部屋にはベッド脇のサイドボードに聖書が置かれていた。

全ての部屋に同じように聖書が置いてあるなら、何処かの部屋の聖書はこの部分のページが破れている筈だ。


(「こんなものが落ちてた」と受付けに持って行った方が良いのか?防犯カメラに映ってるとしたらこのままポケットに入れたら怪しまれるか?いや、今更だな。4階より上の廊下をウロウロ歩き回ったんだ。防犯カメラをリアルタイムでチェックされてたら充分不審だ。何か嗅ぎ回ってる事はバレてる筈だ)

そう思って落ちていた紙切れをポケットに入れた。


その後ももれなくパチンコ屋に面した角部屋付近の廊下を、4階から最上階まで全階、歩きながら残留思念を読み取りつつ嗅ぎ回ったが…あのDVDの事件に該当する残留思念は見つからなかった…。


真行寺の手許には破り取られた聖書のページがあるだけだ。


(「ルツ記」か…)


ページの両面に字が書かれているので

この紙切れに何か意味があったとしても


これらの文章の何処にこのページを破り取って廊下に落とした人間の意図があるのかは判らない。


だが真行寺は殊更、目が引き寄せられる一文を目にした。

『どうか、生きている人にも死んだ人にも慈しみを惜しまれない主が、その人を祝福してくださるように』


だが他の箇所を見ると

『Ⅲ-ⅳ(第3章4節)』

に当たる処に爪で引っ掻いたような痕があった。


(「3-4」か…「3階の4号室」か?それとも何か他の物を示しているのか)


真行寺は紙切れが落ちていた階に(8階に)戻って、丹念に残留思念を読み出していく事にした。


(この辺だったよな…)

そう思っていると

風も無い筈なのに前面から微風が吹いたような錯覚が起きた。


(もしかして進行方向が逆なのか?)


真行寺は紙が落ちてた地点を

「エレベーターから突き当たりまで」

という方向ではなく

「突き当たりからエレベーターまで」

という方向に歩き直しながら

残留思念の痕跡を掴もうとした…。


不意に


『ルーシー』

という女の名前が浮かんだ。


『三丁目四番地の空きビルで待ち合わせか』

という呟きも。


メモがない。

咄嗟に聖書を見て「ルツ記」の部分をめくり該当する数字の部分を爪で引っ掻いて痕をつけ、ページを破り取って、ポケットに突っ込む。


そしてサッサと待ち合わせ場所に向かう。


もたもたしていたら逃げられる。

金を持ち逃げした女にーー


と、そこまで読んで

真行寺は


(「ルーシー」とかいう女、今、マズイ事になってるんじゃないのか?)

という可能性に気がついたのだった…。


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