鶴嘴の先端
この小説の原案は小学生時代のノートの上部分の落書きです。
→表紙https://www.pixiv.net/artworks/93201889
百里を離陸したRF-4E二機は低空で列島を横断。日本海に出た。帰投時のエスコート機として、嘉手納から在日米軍の最新鋭航空支配戦闘機、F-15Aが新潟沖で待機していた。これは、ソ連の最新鋭迎撃機、MIG-25に追跡されたときに追っ払う役だった。
RF-4Eは北西のウラジオストクに向けどんどん加速する。海面高度の最大速度であるマッハ1.4で進む。途中でウイングのタンクを投下する。ウラジオストク手前100kmでソ連のレーダーに捕まった。RF-4Eは高度を上げF-15Aが帰投援護に前進し始める。
ソ連の対応は早く、たったの2分でスクランブル機が上がった。更に近づくRF-4Eは防空ミサイルのレーダーにロックオンされた。
二機の偵察機は稼いだ高度で遠距離から撮影を始めた。チャフを散布し、旋回する。そのRF-4Eのカメラは出港するソ連太平洋艦隊とその旗艦―――戦艦ベオグラード。またの名を大和型戦艦1番艦大和―――を捉えていた。
防衛庁内で直ちに統合幕僚級会議が招集され、空自の偵察機の持ち帰ってきた情報が挙げられた。アメリカのNSAからもたらされた情報から、空自はRF-4E偵察機をウラジオストクに出し、無事帰還したのだった。偵察機が撮った写真には、ウラジオストク港に、シベリア鉄道で陸路で運ばれたモジュール式建造の上陸用舟艇が係留し、空軍基地には大量の航空機が所狭しと並んでいる。そして、ソ連太平洋艦隊がウラジオストクから出港する様を撮影していた。
ソ連太平洋艦隊は、戦艦ベオグラード(旧帝国海軍大和)を旗艦に、ヘリ空母アストラーグ(旧帝国海軍葛城)、キエフ級空母2隻、キーロフ級巡洋戦艦2隻、巡洋艦と駆逐艦が20隻近くいる大艦隊だった。更に、確認できていないが10隻近い潜水艦がオホーツク海に潜んでいるはずだった。
日本は直ちに厳戒態勢を敷いた。陸自の北方輸送を開始、海自は横須賀や呉の最新鋭艦のたちかぜやみねぐもを初めとする護衛艦隊を舞鶴、大湊に分散。空自は民間空港も含めた分散配置を開始した。
北海道に展開する第7師団は陣地構築を開始し、防衛庁としても注意情報を外務省と共に発表した。
空自は触接を保つ為に次々と偵察機を出すが、艦載機のフォージャー戦闘機や艦隊護衛のMIGが阻止し、近づけない。そうこうしているうちに、防衛庁自衛隊はソ連太平洋艦隊と上陸艦隊を見失った。
10月15日、ソ連太平洋艦隊がウラジオストクから出港して4日。北海道で今年初の降雪が観測された日だった。例年より早い初降雪、更にはこれから1週間はずっと雪の予報が出ていた。
ソ連の外交官は、毎日のように日本との関係悪化を騒ぎ立て、民放はそれを流している。自衛隊は見失ったソ連艦隊を探そうとしていたが、日本海やオホーツク海に出た直後にソ連機がインターセプトし、何も出来ずに帰投していた。
朝0400、遂に戦端は開かれた。北海道のレーダーサイトは次々とミサイルを捉えた。各レーダーサイトを防空するホークが迎撃するが、圧倒的に足りない。更にミサイルを捉える。次に狙われているのは東北のレーダーサイトだ。空自のスクランブルの第1波は北海道のレーダーサイト防衛には間に合わなかったが、東北のレーダーサイトを狙うミサイルに対し、誘導されて迎撃に向かう。しかし、それが間違いだった。
第1波は三陸沖や日本海におびき出される。
レーダーが沈黙した北海道の地上部隊から、低空で侵入する爆撃機の報告が来る。空自は千歳の第2波をCAPに回した。しかし、空自が発見した時には敵爆撃機は山から札幌上空に迂回し、千歳基地に接近してきていた。
もし札幌や千歳上空で爆撃機を叩き落としたらどれだけの民間死傷者が出るのか。空自は爆撃機を迎撃することなど出来なかった。
千歳の航空自衛隊の基地周辺に次々と爆弾が降り注ぐ。空自は戦闘機を分散させていたものの、千歳に未だ残っていたF-4EJ戦闘機10機、F-1支援戦闘機10機、他多数が地上で失われた。
米軍は横須賀から出港した第七艦隊を派遣することを決定した。護衛艦隊は、第七艦隊が津軽海峡から侵入するのを支援するため、大湊から出港した。F-4EJが艦隊上空を護衛し、あくまで陸地のレーダーサイトの支援範囲内に留まる。
ソ連軍は無論護衛艦隊を殲滅するために爆撃機を離陸させた。
日本がソ連編隊を察知したのは1700、日が落ちて暮れようとしている時だった。艦隊前方で対潜哨戒していたHSS-2B対潜ヘリがTu-95の特徴的なレーダー波をパッシブで検知した。艦隊護衛のCAP機は直ちに前進し始める。更に増援で三沢から最新鋭戦闘機F-15Aが10機上がる。初めに交戦したのは、CAPのF-4EJだった。爆撃機編隊に向かっていた空自編隊は突然下方から突き上げで攻撃を受ける。無線封止で側方から突っ込んできたMiG27戦闘攻撃機がセミアクティヴレーダーミサイルを発射した。CAP編隊は高度優位を使い反撃に移る。Mig-27のミサイルは30000フィートのF-4に届かない。しかしもファントムも下方のシークラッターと敵機を判別できず、近距離戦闘に入った。護衛艦隊の先頭にいたミサイル護衛艦あまつかぜがターターSAMを敵機に発射する。
艦隊護衛機と護衛艦が戦闘している間にどんどんTu-95が接近する。50機のTu-95は二発ずつ、合計100発のKh-22対艦ミサイルを発射した。低空に引きずり込まれたF-4EJはその発射を阻止することはできなかった。米軍のF-15A戦闘機が速度を上げ対艦ミサイルに遠距離からスパロー中距離ミサイルを発射した。スパローミサイルの射程外であったが、相対的に接近するKh-22に推進剤は間に合うはずだった。更に後方から強力なレーダー波がかぶせられる。茨城沖まで前進していた米機動艦隊が艦載機のF-14Aを出したのだ。F-14A戦闘機は長距離から護衛艦隊に向かうミサイルへAIM-54フェニックス長距離ミサイルを発射する。Kh-22は母機を離れてどんどん上昇している。スパローの大部分は高度6万フィート以上を目指して上昇するKh-22に命中することがなかった。一方でF-14Aの放ったフェニックスはKh-22に次々と撃破する。100発の内50発はAIM-54が撃破した。護衛艦隊の手前20kmで降下を始めたKh-22にF-15Aがサイドワインダー短距離ミサイルを発射する。サイドワインダーで10発前後の対艦ミサイルを撃破したが、音速の4倍のミサイルをF-15も補足しきることはできず残りは護衛艦隊に接近する。
真っ先に反応したのはあまつかぜとたちかぜだった。しかし、ミサイル護衛艦は護衛艦隊にこの二隻しかおらず、ほとんどの艦の主力防空装備は76mm砲だ。さらにはMk13ターターミサイル発射器は単装だ。再装填こそ短いが、レスポンスに時間があるのも事実だった。護衛艦隊は全艦が全力でECMをミサイルに対し照射する。レーダーホーミングのKh-22は盲目となった。ECMが効いているのかいないのか、艦に接近する6発を対空ミサイルと主砲で撃破した。
続いて北にソ連機編隊を捉える。ソ連側は無線封止で歩調がそろわなかったのか波状攻撃となる。超低空でTu-22Mが接近している。空戦が終わり高度を取りつつあるF-4EJ編隊が襲い掛かった。腹に残ったスパローを吐き出していく。40機のTu-22Mは第一撃でほとんどを撃墜される。しかし、それらは最後の一矢をばかりにミサイルを発射した。護衛艦隊の一番北に位置するはちくご型二番艦あやせ。ECMもミサイルもなかった。たちかぜがミサイルを発射するがSM-1ERミサイルは間に合わず、あやせに350キロトンの核弾頭のKh-22が命中した。あやせを中心に大きな衝撃波が艦隊を襲う。艦隊各艦は核の爆心地たるあやせに艦を立て被害を押さえようとする。そんな護衛艦隊をあざ笑うかのように大波が襲った。みねぐもは艦尾のDASH無人ヘリを失い大波で艦の半分は空中に浮いた。たちかぜは襲ってきた大波が76mmオートメラーラ砲を大破させ、Mk13対空ミサイル発射機は波にさらわれていった。はるなは帰投したばかりのHSS-2Bヘリを乗員ごと失った。ちくご型一番艦ちくごは波で艦橋に亀裂が走り、艦橋に波が襲ってくる。
今回の戦闘で、護衛艦あやせが被撃沈、他二隻が中破、F-4EJが8機撃墜、ヘリを3機失った。護衛艦隊は日本海の安全化を断念し、大湊へ進路を取った。
オホーツクから伸びる大きな低気圧はさらに発達を続け、日本を飲み込まんとしているかのようだった。