第一章1 『始まりはいつも突然に』
新しく書かせていただきました。キサラギです。
稚拙ながら筆をとらせていただきます。
更新ペースはランダムですが、よろしくお願いいたします。
日曜日の朝、まだ空が明るくなる前から一台の軽自動車が自宅の前に止まる。
すぐに支度をし、車に乗り込む。
朝日が昇り始めた頃にやっと目が覚めてきた。
「暁斗様、おはようございます」
運転手の男に声を掛けられる。
「おはよう。自分より年上に敬語を使われるのはまだ慣れないな。」
運転手は20代後半、それに対して俺は10代だ。
「それはそのうち慣れていただかないと。役職上は暁斗様の方が上なのですから。」
「まあお前がそれでいいならいいが...」
「今日の予定は、遺物の検査と定期検診です。」
「いつも通りか。」
「ですが、少し中東の方で不審な動きが。」
「不審な動きとは?」
「アリスシステムによると、一部の地域で高エネルギー反応が起きたそうです。大規模魔術の予兆があります。」
「大規模魔術?」
「空間干渉系統の魔術です。」
「なるほど、要注意だな。」
「周辺のサイトで遺物-050が少しエネルギーを生じているとの報告も上がっています。」
「確認しておこう。」
「お願いします。」
「|呼び出し≪コール≫No-001『王の書』。」
そう呟いた直後、分厚い黒の表紙に金の装飾が施された本が目の前に構築された。
表紙のがんじからめの鎖のマークに手を当てると鎖のマークが薄くなり、弾けた。
そのまま本を開き、
「検索、No-050『空間ベクトル計測器』。」
ページがめくれてあるページで開く。
──────────
No-050 空間ベクトル計測器
複数ある小型端末の周囲の空間に存在するエネルギーを測定する。
現在の端末数95/100
端末018、025、037、041、056
高次元生命体からの干渉による高エネルギー反応,契約魔術の予兆を確認
端末032
一部部品(A112,G273)に破損の兆候あり。
──────────
「どうでした?」
「032が一部破損の兆候有り、018、025、037、041、056で上位魔術だとよ。」
「上位者はこの次元に干渉しないはずでは?」
「予兆が契約魔術だから契約にそって発動してるんだろう。」
「そんな契約誰が...」
頭を押さえている運転手に同情しつつ他の遺物のチェックをしていると、
王の書の周囲の魔力が活発化し始めた。目映い光が車内を包み込み、空間が歪む。
「おいおい嘘だろ!?」
「アキト様!退避を!」
運転手が叫びながらちょうど路肩に車を停めた瞬間、魔術が発動した。
障壁魔術と今手持ちのいくつかの遺物で防御したがいつまで経っても衝撃が来ない。
恐る恐る手元を確認すると、
「なんだこれ...」
不明な文字が書かれた一枚の紙が王の書の上に乗っている
運転手が心配して近寄って来た。
「行き先変更だ。本部へ向かうぞ。」
「了解しました。」
ーーーー東京ーーーー
株式会社
社員専用駐車場に車を停め,ロビーへと足を進める。
10代後半の学生が居るにもかかわらず、誰も気に止めない。
「司令官は揃っているか?」
「研究部隊隊長が少し遅れていますが,10分後には到着予定です。」
エレベーターに乗り込み,1~20階のボタンは無視して電子パネルの下にあるスロットにカードキーを通す。
パネルに手を翳すとエレベーターが下へと動き始めた。
扉が開いて運転手と別れ,白の廊下を進みそのまま会議室へ向かう。
会議室に入ると円形の机にもう司令官とその補佐が揃って座っていた。
俺が入った後からちょうど研究部隊隊長の雪乃が入ってくる。
「では揃ったようだな。目は通してあるだろうが001が魔術媒体となり魔術が発動、この紙が出現した。先程まで研究部隊に解析してもらっていたところだ。では雪乃,説明を頼む」
「ん...この紙は魔術で作られてる。...構成物質は...高密度現実固定物質。...リスクレベルはD。」
「ありがとう。では肝心の内容だが魔術内容は発動から48時間後に発動する,対象の強制転移魔術で間違いないか?」
「そう...契約書にサインした人の...周囲10メートル四方の...空間ごと転移する...」
それまで黙って聞いていた戦闘部隊隊長の結衣と支援部隊隊長の鈴音が,
「それって私たちにメリットはあるの?」
「確かにデメリットしかないなら,サインしなければいいだけの話ではないのでしょうか?」
確かに最初は俺もそう思った。だが,この契約には大きなメリットがある。
「それなんだがな,この地球の認識力の半分が向こうの世界へ送られるらしい。」
「半分も!?」
「半分はなかなか大きいですね。」
「あちらの世界に影響はないのか?」
「...あっちの世界は...魔術がありふれた物らしい...リソースとして...消える。」
「魔術主体の世界か。」
「なら科学はあまり発展していないことが予想されますね。」
「では纏めようか。この契約書にサインして別世界に行き,その代わりにこの世界の認識力が半分減る。鈴音、半分減るとどのくらいの影響が出る?」
「およそ数年間はランクB以上の遺物の活性化及び異常現象の発生は防げるかと。」
「そういえば転移先の環境は大丈夫なのか?」
「一応契約書に生存できる環境と記載があるので,最悪遺物があれば対応できるかと。認識力もこの地球の約10倍もあるので遺物の動作に関しても問題ありません。」
「じゃあ採決を取ろうか。向こうの世界への干渉に賛成の者。」
見ると全員挙手していた。
もちろん俺も上げる。なんてったって面白そうだから。
「では転移のメンバーはどうしますか?」
「どうせみんな行きたいんだろ?」
周囲を見渡すと結衣は目を輝かせ今にも身を乗り出しそうで,
雪乃は冷静に思案しているように見えるが,目に好奇の色が宿っている。
鈴音……はもうすでに各所へと連絡を取っている。
「じゃあ俺と司令官全員が転移,サブオペレーターにこちらは任せるということで進めようか。詳細はまた後ほど決めよう。では解散!」
こうして,俺たち世界遺物管理組織、通称FDGの異世界進出が決定したのだった。
ストックをまた貯めないと...
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