No-1598《支配者の法典》
ーーあぁ,どこで間違っちまったんだろうな。
どこまでも地平線が広がる全てが黒い空間で独り愚痴をこぼす。
そんな青年の目前にはビルほどもある大剣が今にも振り下ろされそうな状態で静止している。
その大剣を振り下ろしている巨大な怪物も,世界から忘れ去られたように沈黙している。
ーーこのまま時を止めていても埒があかないな。
止まった世界で少年は独白する。
青年の左手は肩から先が千切れ飛んでおり,下半身もない。地面には血の海が広がっている。
青年が時をひとたび動かせば,その血に染まった大剣は即座に青年の命を刈り取るだろう。
にもかかわらず青年は慌てる様子がない。
まるでこの結末を予測していたように。
ーー死ぬ間際にひと頑張りしますかね。
そう言って青年が立ち上がった瞬間,失っていたはずの下半身と左腕が何事もなかったかのように再生する。
その再生は美しい物だがどこか冒涜的でおぞましい。
まるで自分の生命そのものを削っているような。
ーーーこれで■■■■回目か。
怪物をなんとか撃退し,怪我を負った右足を引きずりながらも青年の歩みは止まらない。
ただ黒に染まった空間を,奥へ奥へと進んでいく。
思いを受け継いだものとして。
輪■■■は終わらない。