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纏いつく子ども達と教会の前で別れ、シファは聖堂の中に戻る。信者達は皆帰ったようで、決して広いとはいえない聖堂の中は、先ほどの熱狂が嘘のように静まり返っている。静寂ばかりが満ちて、岩壁の荒々しさや小窓から零れる薄暗い光が強調され、ひどく寒々しく彼女の目に映る。
「申し訳ありませんでした、シファ様」
祭壇の奥の扉の前にアーシェラが立っている。彼は目を伏せる。シファは小首を傾げた。
「なを謝るのですか?」
「鈴のことを」
「ああ、あれは・・・わたしもとても驚いてしまいました。あんなに耳の良い人がいるのですね」
まかさ服の下に隠された小さな小さな鈴の音を聞き取る人間がいるとは思わなかった。その驚きが、アーシェラを激しく動揺させたのだろう。あの鈴に込められた意味は、思いのほか深く重たい。しかも、それをただ知られるだけではなく、キラと結び付けられてしまっている。それはさすがに、不味いことだった。
「ですが、確かに多少困ったことにはなりました」
青灰色の瞳が彼女を見つめて揺れている。
「彼らはいったい、なんの用でこの教会へ訪れたのでしょうか」
「一つはナイト・クイーンの調査のためでしょう。もう一つは・・・・・・ベリティリを探しているようでした」
「ベリティリがこの教会へいると?」
「それは違うでしょう。疑われているのはキラのようでした」
アーシェラの眉根が寄る。
「オーウェン・グレイブス。キラがリトル伯爵家で会ったという探偵は彼のようです」
キラがわざわざ祝福を受けに来たのは、そのことをこっそりとシファに伝えるためだ。
「キラと鈴とあなた、そしてベリティリ。今現在これらがあの警察の方たちの中で一繋ぎの紐で結ばれている状態なのでしょう。それぞれの間には結び目があるので、正確には一本に無理やり繋がっているように見える状態ですが、何かの拍子に結び目が解けて実はそれが一本の太く長い紐だと知られてしまうかもしれません。でも、大丈夫ですよ、アーシェ。気にする必要はありません」
「ですが・・・・・・」
アーシェラはまさか服の下に隠してあった鈴のことに気付かれるとは思っていなかったせいか、激しく動揺を表に出してしまった。不審には思われただろうが、それも仕方がない。
「鈴一つで得られる情報はたかが知れています。彼らがすべてが実は一つの紐であることに気付くのは不可能でしょう」
シファはゆったりとほほ笑んだ。
「それにしても面白い人でした」
それはどちらの向けての言葉なのか。




