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双剣魔眼の剣術学院クロニクル  作者: ユズキ
外伝 深淵の魔導師
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第十八話「これがモフモフというやつか」

「外伝」は一旦ここで中断して、明日からは「本編」三章を始めます。

「外伝」の続きからエピローグまでは三章終了後に投稿します。

 呪術師カールを倒したジェラードは、すぐに踵を返して女たちの加勢に向かう。精鋭部隊相手に女たちは善戦していた。騒ぎを聞きつけたソニアやレイラ、メレディスも参戦している。カールが死んだいま、女たちの呪いは解けている。そして、エルフの女王ディアドラの結界もなくなっている。


(くそっ! 密着し過ぎて魔法で狙いにくい!)


 混戦状態なので、ジェラードの魔法で一掃というわけにはいかなかった。同じ理由で魔法主体のソニアやメレディスも苦戦している。レイラも険しい顔で剣を振るっているが、腕のほうは魔族の女と同じくらいだった。精鋭部隊は興奮状態でカールが死んだことに気付いていない。倒すしかないだろうとジェラードは思った。 


 すべてを蹴散らすように精鋭部隊が暴れ狂う。その時、ジェラードの脇を何かが通り過ぎた。


「治すにゃ! エクスヒール!!」


 ジェラードが見ると、獣人の子どもが傷ついた魔族の女に治癒魔法をかけていた。人間とほとんど変わらぬ容姿だが、獣人特有の頭から生えた獣の耳と尻尾があった。見た目は十歳ほどの女の子だ。獣人の少女は体の向きを変えると、襲ってきた精鋭部隊の腹に回し蹴りを放った。


「ぐわっ!」

「遅いにゃ!」


 獣人の少女は魔王軍の精鋭部隊に突っ込んでいった。精鋭部隊の剣を仰け反って躱し、そのまま後方に宙返りを決める。着地した途端、身を低くして背後にいた精鋭部隊に足払いをした。そして、その短い手足からは想像できないほど、力強い一撃を叩き込んでいく。


(誰だかわからないが、敵ではないようだな。獣人の戦士か……?)


 やがて、精鋭部隊は全滅した。味方に死者が出なかったことにジェラードは安堵する。ソニアとメレディスが、怪我をした魔族の女に治癒魔法をかけて回っていた。ジェラードに目を留めたレイラが手を振ってから、駆け寄ってきた。


「ジェラード様! お怪我はありませんか?」

「ああ、おまえこそ大丈夫か?」

「それにしても、魔族の傷の手当てか……」

「あら、だってあの魔族の女の人たちは、ジェラード様の味方ですわよね?」

「いや、そうなんだが、おかしいと思わないのか? どうして俺が魔族と味方なんだとかよ」

「え、だってソニアお姉様からさっき聞いたんですわ。ジェラード様が魔族だってことを」

「…………なんだと?」

「もうソニアお姉様もメレディス様もずっと前から知っていたって言うじゃありませんか! なのにわたくしにだけ秘密だなんてあんまりですわー!」


 ソニアはメレディスが止めたにも関わらず、ジェラードが魔族だということを明かしていた。しかし、レイラは簡単に受け入れた。レイラは、ジェラードが悪い魔族ではないと確信したのだろう。


「その兜の下に魔石があるんですのね! 見せてくださいまし!」


 レイラは興味津々の様子で、背伸びしてジェラードの兜に触れようとした。レイラの手が水晶に触れると、ディアドラの声が聞こえた。


『人間の小娘よ、ジェラードを困らせるな』

「わあ!? 兜が喋りましたわ! あれ……これはディアドラ様の声!?」

「ああ、この水晶を通してディアドラは見えているし、どうやら会話もできるようだぞ。さっきは助けられたしな」


 レイラが目をキラキラさせてジェラードの兜を見つめる。そこへソニアとメレディスがやってきた。


「ジェラード様! これはいったい……」

「何があったんじゃ。いきなり戦闘が始まったから焦ったぞ」

「ああ、実はな――」


 ジェラードがひとしきり話すと、加勢してくれた獣人の少女が歩いてきた。見た目は完全に子どもだ。ジェラードの腰ほどの高さしかない。獣人の少女はジェラードを見上げた。


「こんにちはにゃん! あてぃしはララ! 獣王国の戦士だにゃ!」

「おう。俺はジェラードだ。助かったぜ、ララ」


 ララの話を聞くと、彼女は普段、獣王の護衛をしているようだ。今回はたまたま獣王に周辺を見回るように言われて、辺りに異変がないか動き回っていたところ獣界方面軍の精鋭部隊を見つけ追いかけてきたらしい。


 メレディスが同盟の旨が記載されている親書を見せると、獣王国へ案内してくれると言った。魔族の女たちは魔王軍を裏切ったため行き場を失ったが、ディアドラが面倒を見てくれるという。懐の深い女だとジェラードは素直に感心した。魔族の女たちがエルフ界に向かったのを見届けてから、ジェラードたちは馬車で獣王国を目指すこととなった。


 ジェラードの隣にレイラが座り、その向かいにメレディスと膝にララを乗せたソニアがいる。ソニアはララが気に入ったようだ。ララの耳を撫でると、彼女は気持ちよさそうに体をくゆらせた。


「ふにゃぁ~」

「ララちゃんの耳、モフモフしてて触り心地がとてもいいですね」

「ソニアお姉様だけずるいですわ! ララさん、次はわたくしの膝の上にどうぞ~!」

「わかったにゃ」

「ああっ! これがモフモフなのですね! 噂には聞いていましたが、あっ……この尻尾もモフモフですわ! ジェラード様もどうですか?」


 そう言って、レイラがララを持ち上げてジェラードの膝に乗せた。しかもジェラードに向かい合わせにだった。ジェラードとララが視線を合わせる。


「ふにゃん!」


 ジェラードが耳に触れると、ララは嬉しそうに抱きついてきた。


「……これがモフモフというやつか。めちゃめちゃ気持ちいいな」

「ふにゃにゃ~」


 あまりにもジェラードが触りまくるので、ララがふにゃふにゃしてきた。


「はい、終わりです~」

「ちょっと待てレイラ。俺はまだモフモフを堪能しきってないぞ」

「駄目です。順番ですよ~。はい、ソニアお姉様」

「あ、でも……メレディス様は?」

「……いや、わしはいい」

「そうだ。ジジイにはもったいない。ジジイの分は俺がモフモフしてやろう」

「おまえにやらせるくらいなら、わしがやるわ! …………うおおっ! これがモフモフかっ! まさか、生きているうちにモフモフできるとは思わなんだ!」

「おい、ジジイがおかしくなったぞ! ソニア、何とかしろ!」

「メレディス様!」

「ふにゃあんっ!」


 それから獣王国に着くまで、ララは四人にモフモフされ続けた。

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