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双剣魔眼の剣術学院クロニクル  作者: ユズキ
外伝 深淵の魔導師
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第十七話「俺を怒らせたな」

 元ジェラードの配下の四天王にして、現在は魔王軍の獣界方面軍司令官、呪術師カールがそこにいた。カールはジェラードを取り囲んでいた魔族の女たちの外に降り立った。女たちはジェラードを守るように武器を手にした。


「カール! どの面下げてここに来た!」

「くっくっくっ、おまえはここで死ぬのだ。深淵の魔導師ジェラード、おまえを葬るのは俺ではない。大好きな女たちの腕の中で死ぬがいい。カースドインパクト!!」


 カールが呪いの言葉を吐いた瞬間、ジェラードの傍にいた魔族の女の体が弾けた。ジェラードの顔に血がかかり、衝撃で火傷を負った。カールの魔法の一つカースドインパクトだった。呪いの刻印を刻んだ相手を、任意のタイミングで傷つけることができる呪い魔法だった。


「カァァァルゥゥゥッ! てめぇぇぇぇぇぇッ!」

「おっと、いいのか? その女たちが死んでも」


 カースドインパクトを発動された女は、ぐったりとしている。呪いの刻印が刻まれたあたりの皮膚が裂け、血が流れ出していた。ジェラードが治癒魔法をかけると、女は意識を取り戻した。


「ジェラ……ド様……!」

「傷に障るから喋るな。カールを倒したら俺が治してやる。少し休んでいろ」


 そんも様子を眺めていたカールは、面白い余興を見るかのように手を叩いて笑う。


「何がおかしい。カール、おまえは俺を怒らせたな」

「だったら何だと言うんだ。女が人質に取られていては、もう何もできないだろう? さあ爆ぜろ! カースドインパクト!!」


 直後、ジェラードの周りにいた女たちの呪いの刻印が、裂けて血飛沫が舞った。ジェラードはその都度、火傷を負う。しかし、ジェラードにはその痛み以上の苦痛をもたらした。自分の部下だった女たちがカールの玩具にされているからだ。ジェラードの怒りは頂点に達していた。


「カースドインパクト!! おまえを襲うのは女たちだけではないぞ! 後ろを見てみろ!」


 ジェラードの後方からは獣界方面軍が雄叫びを上げながら駆けてくる。数は多くないが、すべて男だった。ジェラードは女たちの救命を最優先している。何もせずに放っておいたら、血が止まらずに死んでしまうからだ。当然、ジェラードに向かってくる獣界方面軍を相手にする余裕はない。


 カースドインパクトは呪いの刻印を消さない限り、何度でも発動することができる。そして魔王軍屈指の呪術師であるカールなら、その威力もかすり傷程度から致死に値する爆発まで、任意に調整可能だ。ジェラードの反応を楽しむように、カールは女たちをいたぶった。


「さて、お遊びも終わりだ! まとめて爆死させてやる! 女と一緒に死ねて良かったなぁ!」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」

「――爆ぜろ! カースドインパクト!!」


 次の瞬間、ジェラードの周囲で激しい閃光が放出された。辺りには土埃が舞った。カールは勝利を確信したかのような笑みを浮かべる。やがて土埃が消え、そこに現れたものを見てカールは目を開いた。ジェラードが、そして魔族の女たちが立っていたのだ。


「バカな……!? どうして生きている! なぜだぁぁぁっ!」


 ジェラードと女たちを囲むように魔法の障壁が展開されていたのだ。ジェラードの兜に嵌められた水晶から、エルフの女王ディアドラの声が聞こえた。


『結界を張った! この中ではいかなる魔法も無効だ!』

「ディアドラか!? 助かったぜ!」

『水晶を通してだから長くは保たない。いけるか?』

「愚問だな。その間にカールを仕留める」


 ジェラードは近くにいた女から武器を取り上げる。それは棍棒だった。 


「ジェラード様!? な、何を!」

「ちょっと借りるぜ。おまえらは男どもを迎え撃て! ただし、結界の外には出るなよ!」

「でもあれは精鋭部隊です! 私たちより実力は上です!」

「ちっ、なら少しの間時間を稼ぐんだ! 俺がカールを倒しておまえらの呪いを解くまでだ!」

「はいっ!」


 精鋭部隊の数は女たちの半分ほどだ。しかし、実力差を加味すると、精鋭部隊のほうに分がある。ジェラードは急いでカールを倒すことを決めた。カールは結界から出ようと、背を向けて走り出す。だが、ジェラードがすぐに追いついた。


「うらあああああああっ!」

「ぎゃあああああああっ!」


 ジェラードの振り下ろした棍棒が、カールの左肩に食い込んだ。カールはその場に転んでのたうち回る。


「ぐっぞぉぉっ! 魔法さえあれば、俺が負けることは――」

「逃がすか! おらああああああっ!」

「ぐあああっ! あ、足がぁぁっ!」


 立ち上がろうとしたカールの足を、ジェラードの棍棒が払った。


「ひいっ! く、来るなっ!」

「カール、最期に何か言い残すことはあるか?」


 ジェラードは地面に這いつくばるカールを見下ろして言った。


「ち、違う! 俺はギデオンの命令に嫌々従っただけなんです! あなたの、ジェラード様の部下……四天王のカールにどうかお慈悲をぉぉっ!」 

「何をいまさら。おまえらが俺にした仕打ちを忘れたのか」


 カールの顔面に棍棒が直撃し、大きく後方に吹っ飛んだ。そこは結界の外だ。ジェラードは倒れているカールに向かって歩を進めながら、棍棒を捨て右手を突き出した。


「おまえは俺を怒らせた。――斬り裂け! ダークエッジッ!!」


 ジェラードの右手から闇の刃が出現し、カールの胸を裂く。そこから激しく血が噴き出した。ジェラードは倒れたカールを蹴飛ばすと、続けて魔法を放った。


「おまえが女に与えた痛みがわかるか! ダークエッジッ!! ダークエッジッ!! ダークエッジッ!! ダークエッジッ!! ダークエッジッ!! ダークエッジッ!! ダークエッジッ!!――」


 ジェラードは休む間もなく連続で無詠唱のダークエッジを、何度もカールに浴びせる。


「うぎゃああああっ! あびいぃぃぃぃぃぃっ!」

「ダークエッジッ!! ダークエッジッ!! これで終わりだ――ダークエッジッ!!」

「ぎゃああああああああっ!」


 無数に切り刻まれたカールは、もう虫の息だった。ジェラードは追い打ちをかけるように、その頭に向けて右手を突き出した。そして魔法を放つと、カールの額にあった魔石が粉々に砕けた。魔族の心臓ともいうべき魔石がなくなったことにより、カールは死んだ。その屍は灰のように脆く崩れ去っていく。


「まず一人」


 ジェラードは、灰と化したカールの屍に背を向けた。

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