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双剣魔眼の剣術学院クロニクル  作者: ユズキ
第二章 死竜の砦
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第三十話「任せなさい」

 ブランドン先生から渡された〈樹竜の鱗〉のおかげで、俺はバリスタの脅威から校舎を守ることができた。

 その〈樹竜の鱗〉は俺の魔眼からの魔力供給がなくなったからか、元の石片に戻っていた。

 ブランドン先生は〈樹竜の鱗〉を手に取って、意味ありげに眺めたあと何事もなかったように懐にしまい込んだ。


「まだ持ってたんだな。然るべきところへ持っていったんじゃなかったのか?」

「いやあ、俺もいろいろと忙しくてね。つい後回しになっていたんだよ。それに〈樹竜の鱗〉が大活躍したじゃないか。しかも、これを使ったことは俺ときみしか知らない」

「……まあな。…………あっ、こんなところで喋ってる場合じゃない! 早くセシリアたちのところへ行かないと!」


 セシリアたちはいまも死竜の砦の屋上で、死竜クラスの生徒たちと戦っているはずだ。

 あの人数相手じゃ勝負は見えている。


「うぐっ……!」


 思い出したように右足首が猛烈に痛み出す。


「うん、骨折しているね。あれだけ派手にぶつかったんだ。骨はグチャグチャになっているだろう。その足で行く気かい?」

「あたりまえだ! いまもセシリアたちが死竜の塔にいるんだ!」


 俺は左足で何とか立ち上がって、死竜の砦のほうへ顔を向けた。

 ブランドン先生がその隣に並んで、俺の肩に手を置いた。


「まだ魔力は残っているかい?」

「……ああ、少しだけなら」

「飛翔の魔法を使って俺を下まで降ろしてくれ。俺が死竜の砦へ向かおう」

「えっ!? ブランドン先生が?」

「重傷のきみに魔法を使わせるなんて教師として酷い話だと思うけれど、少しでも早いほうがいいだろう? あと、きみが思っているようなことにはならないと思うよ」

「……? どういうことだよ?」

「ジェラルドの計画が頓挫したからには、彼ならこれ以上無益な戦いはしないだろうということさ」


 ブランドン先生が言うには、戦闘はもう止められているという話だが、それでも俺はセシリアたちが心配だった。

 最優先であるバリスタを止めるためとはいえ、無謀な戦いを進んで引き受けてくれたセシリアたちを後回しにしてしまったのだ。

 ロイドやハロルドなんて俺に木剣を貸したばかりに、素手で戦う羽目になってしまった。

 大きな怪我をしてなければいいが。


「……わかった。この足じゃ本当に何もできそうにないし、死竜の砦まで辿り着くのも困難だ。あとはブランドン先生に任せるしかない……か」

「任せなさい。五年風竜クラスの担任として、きみの代わりにしっかり務めを果たしてくるよ」


 俺は大きく頷いてから飛翔の呪文を唱えた。

 背中から翡翠色の翼を顕現させると、俺は両手を前に出した。


「ほら……乗って」

「ふむ、お姫様抱っこかい。何だか照れるねぇ」

「俺だってブランドン先生をこんな形で抱えるなんて夢にも思わなかったよ。でも背中の翼が邪魔でおぶることはできないから仕方ないだろ」


 俺はブランドン先生を抱えて校舎の屋上から滑空した。

 無事地面に着地すると、ちょうど魔力を使い果たした俺はその場にへたり込んだ。

 立ち上がろうにも足が言うことを聞いてくれない。


「ははは、さすがのきみでも無理だろうね。あとで町の回復術士のところへ連れて行ってあげるから、もうしばらく痛みに我慢していてくれるかい? 下手に動くと悪化するかもしれないから、絶対に動かないこと。いいね?」

「俺の怪我なんかどうでもいい。早くセシリアたちのところへ言ってくれ」

「了解した」


 ブランドン先生は俺に背を向けて駆け出そうとした。


「あ、ブランドン先生……」

「ん? なんだい?」


 ブランドン先生がゆっくりと振り返る。


「終わったら聞きたいことが山ほどある」

「ん~。すべてに答えてあげられるかわからないけれど、まあ聞くだけは聞こう」


 ブランドン先生は笑みを浮かべた。

 そして、今度こそ死竜の砦へ向かって走っていった。

 俺はその背中が見えなくなるまで眺めて、それから地面に寝そべった。


 右足の痛みは激しさを増しているが俺にはどうすることもできない。

 ブランドン先生の言うとおり下手に動かさず、じっとしているしかないだろう。

 もうじき日が沈み、夜になる。

 あとはセシリアたちの無事を祈りつつ、待つしかないようだ。

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