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双剣魔眼の剣術学院クロニクル  作者: ユズキ
第二章 死竜の砦
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第十六話「アルを追いかけて」

 アルバートが窓から飛び立ってすぐ、教室にロイドたちが駆け込んできた。


「アルは!」

「いま、そこの窓から出ていったわ」

「窓ぉっ!? って、ここ三階だぞ!?」

「アルには風の翼がありますからね。階段を使って下りるより早いと判断したんでしょう」

「んなことわかってるよ! 俺たちもこうしちゃいられねぇ!」


 ロイドが剣置き場から剣を取る。

 ハロルドとブレンダも同じように剣を取り、ベルトに装着した。

 セシリアは一瞬考えてから、自らも剣を手に取ろうとする。

 それを見たミリアムも後に続く。

 そこで、背後からブランドンの声がした。


「きみたち、何をするつもりだい?」

「決まってんだろ! アルを追いかけるんだよ!」

「剣術学院の規則で、校内では帯剣していいと言っても、それは振り回していいってことじゃないんだよ。きみたちは死竜クラスと命の取り合いでもするつもりなのかい?」


 そう言われて、セシリアたちの顔がこわばる。

 自分でもこれが正しいとは思わない。

 しかし、アルバートがたった一人で死竜の砦に向かった以上、放っておくわけにはいかなかった。


「行くなら止めはしない。ただし、その剣は置いていきなさい」

「ブランドン先生、僕たちに丸腰で行けと?」

「はい、つべこべ言わずに没収するよ。明日になればちゃんと返してあげるから」


 ブランドンは有無を言わせず全員の剣を取り上げた。


「ん~、ここからは俺の独り言だ」


 五本の剣を左脇に抱えたまま、急にとぼけた表情になるブランドン。


「……確か俺の部屋に練習用の木剣が何本か常備してあったはずだなぁ。あっそんなことより、俺は生徒たちの避難を優先しなければ」


 そう言うと、ブランドンは教室を出ていった。

 残されたセシリアたちは互いに顔を見合わせる。


「何言ってんだ……?」

「えっ、ブレンダちゃん、どういうことなの?」

「もう、どうでもいいぜ! 他のやつの剣を借りちまおうぜ!」


 ロイドが剣置き場にあるクラスメイトの剣を指差した。

 そこにはクラスメイト十四名分の剣が保管されている。


「待ちなさい、ロイド」

「ブランドン先生が何と言ったか聞いていなかったんですか?」

「あ? 何だよ?」

「ブランドン先生の部屋よ」


 セシリアは言った。

 そしてセシリアを先頭にハロルドとブレンダが教室を出る。

 わかっていないロイドとミリアムは、セシリアたちを追いかける。

 ブランドンの部屋とは教師用の自室だ。

 ウルズ剣術学院には各教師に一つずつ自室が与えられている。

 その場所は担任している教室のすぐ隣だ。


 セシリアたちが廊下に出ると、慌てふためいている生徒を教師たちが避難させるために誘導していた。

 本来なら、教師の許可なく立ち入りが禁止されているその自室だが、セシリアがドアに手をかけると施錠はされていなかった。

 周りの教師や生徒はそれどころではなく、この場は混乱していた。


「入りましょ」

「ええ」


 ブレンダが後押しするように言うと、セシリアはドアを開いた。

 素早く、全員がブランドンの部屋に入る。

 部屋の中は狭く、机と椅子に本棚という質素な造りだ。

 窓際に目を向けると、数本の木剣が立てかけられていた。


「これです」


 ハロルドがまとめて持ち上げて、セシリアたちに配った。


「おお! これで戦えるぜ!」

「ロイド、まだ戦うと決まったわけではないわ」

「何言ってんだよ! ぜってー戦いになるに決まってんだろうが」

「できれば荒事にはしたくないけれど、相手次第ではロイドの言うような展開は十分考えられるわね」

「……そうよね。うん、わかったわ。それじゃ、アルを追いかけましょ」


 全員で頷いてから、ブランドンの部屋を出る。

 木剣をベルトに差しているが、他の生徒や教師には見向きもされない。

 みんなそれどころではないのだろう。

 足早に一階まで階段で降りると、そこには見知った顔が待っていた。


「遅いですわ」


 ローラは腕を組んでいる。

 そして後ろにはエドガーの姿があった。


「ローラ先輩!? エドガーも!? いった、どうしてこんなところで?」


 セシリアはその答えを半ば知りつつも、驚きの余り口にした。


「決まっているだろう。死竜クラスの暴挙を止めにいくのだ。オレについてこい」


 エドガーが決意に満ちた表情で答える。

 その表情はつい昨日までの覇気のないエドガーとは別人のようだった。


「エドガー……?」


 セシリアはエドガーの変わり振りに驚きを隠せなかった。

 ロイドたちも同様だろう。


「心配かけたね、セシリア。オレは目が覚めたよ。不抜けたオレのままじゃ、死んだイアンが困るだろうとな。そう考えたら、オレは自分のやるべきことをやろうと思ったんだ」


 エドガーは目を瞑り、いかに自分が様々な葛藤と戦い、それに打ち勝ってここに至るのかを悦に浸りながら語り始めた。

 ロイドとブレンダは眉をひそめ、ハロルドは途中から話を聞いていなかった。

 ミリアムは真剣な顔でこくこくと頷きながら、最後までエドガーの話を聞いていた。

 理解しているかはまた別の話だ。


「ローラ先輩、エドガーに何があったんですか?」


 セシリアはローラに近づいて尋ねた。

 すると、ローラは胸を張った。


「ふふっ、エドガーは自分で立ち直ったのですわ。わたくしは信じていましたの。わたくしたちが策を弄さずとも、エドガーなら自ら再起すると」

「そ、そうなんですね。でも、エドガーが元気を取り戻したみたいで安心しました。ところで、本当にローラ先輩たちも行くんですね」

「愚問ですわ。エドガーの向かうところ、必ずわたくしも同行しますわ」


 かくして、セシリア、ロイド、ハロルド、ブレンダ、ミリアム、そしてエドガーとローラ七人の生徒は死竜の塔へ向かうことになった。

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