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双剣魔眼の剣術学院クロニクル  作者: ユズキ
外伝 深淵の魔導師
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第二十六話「いくぞ、おまえら」

 王都に戻ったジェラードたちはさっそく緊急会議を提案した。遺跡からの帰り道で話し合った結果、魔王城に攻め入るのは魔王軍が瓦解した今を置いてないと判断したからだ。戦いが長引けばいずれ魔王軍も立て直しを図るだろうと、勇者も同意する。


 そうして国王はついに魔王軍との最終決戦を決意した。ジェラードや勇者の活躍に士気の高まっていた多くの冒険者が、魔王軍との最終決戦に志願した。綿密な作戦や人選などの面倒ごとは勇者に任せて、ジェラードは屋敷でくつろいでいた。


(いよいよか……。四天王も残るはライナス一人。そして、ギデオン。てめえは必ず俺が倒す)


 数日後、急ピッチで進められた最終決戦の準備が整った。魔王城に攻め入るのはジェラード一行と勇者パーティーを筆頭にSランク冒険者を含めた大所帯だ。一方、勇者を進軍部隊に回すことで手薄となる王都の守りには軍の兵士たちと各町から集まった冒険者、それと同盟国から派遣されてきたエルフと獣人の戦士たちだ。


「よくもこんなに集まったもんだぜ。ついこの間までは魔王軍に怯えてたってのによ」


 その光景を見下ろしながら腕を組んでいるジェラードが、隣に立っている勇者に言った。勇者は微笑を浮かべながら手を差し出した。


「これもすべてあなたの活躍によるものですよ。人々に立ち上がる勇気を与えたのは紛れもなくあなたです。ともに魔王を討ち取り、世界を平和に導きましょう」


 差し出されたままの勇者の手を一瞥して、ジェラードは遠く離れた魔王城の方角に目をやった。


「よせよ、男の手を握るのは趣味じゃねぇ……」


 だが勇者はそのままの姿勢で待っていた。やがて根負けしたように頭をかいたジェラードが、勇者の手と打ち合わせるように叩いた。小気味よい音が響く。勇者は困ったように笑いながら、


「最後の戦いです。必ず勝利を手にしましょう!」

「負けるつもりはねぇ、おまえこそ死ぬんじゃねぇぞ。終わってからのほうが大変だからな、その役目はおまえがやれ」

「承知しました」


 こうしてジェラードたちは最終決戦に臨むのだった。




 魔王城への道のりは平坦なものではなかった。道中で襲いかかる魔王軍に勇者パーティーと冒険者は果敢に戦った。少なからず命を落とした者もいる。そうして魔王城が見えるところまで辿り着いたジェラードたちは最終確認を行った。ジェラードが書いた魔王城の見取り図をソニアたちや勇者パーティー、冒険者の代表が目を凝らして眺めている。


「――で、ここが魔王のいる場所だ。頭に叩き込んだか」

「はい。それでは手筈どおりジェラード様は我々と一緒に魔王のいる玉座の間を目指すのですね」

「ああ……」


 勇者の確認にジェラードが返事をする。魔王城の周囲には魔王軍屈指の精鋭が待ち構えていた。それを統率するのは数人の幹部たちだ。勇者が振り返って、個々に集った仲間たちに目をやった。それから、ジェラードに目配せをする。ジェラードは「やれやれ」と言いながら腕を組んで胸を張った。


「これから魔王城に進軍する! いくぞ、おまえら!!」

「「「おおおおおおおおおおおおっ!!」」」


 ジェラードの号令に一同張り裂けんばかりの大声で応える。手にした剣を、杖を、そして拳を振り上げて応える。こうして魔王軍との最終決戦が幕を開けた。魔王軍も進軍を開始している。すぐに決戦の火蓋は落とされた。


 ジェラードは呪文の詠唱に集中する。ララが魔王軍を絶対に近づかせない。全六十六節からなる文言に魔力を込め終えたジェラードが両手を広げて叫んだ。


「まとめて灼き尽くす! すべてを灰燼と化せッ!

クリムゾンッ――フレアァァァッツ!!」


 爆炎魔法のクリムゾンフレアは幹部もろとも魔王軍を蹂躙する。それを見てさらに士気の高まった冒険者たちが総攻撃を開始する。


「ジェラルド様に続けっ!」


 勇者が剣を振り上げて駆け出した。冒険者もあとを追いかける。ジェラードはソニアとレイラを守りながら魔王城に向かって歩き出す。隣にはララとメレディスもいる。皆、最終決戦に決意を固めた顔つきだ。


「ジジイ、ここではもう魔法は使うな。温存しろ。あとはあいつらが道を作ってくれるだろうよ」

「何をいまさら! 勇者殿や他の者にだけ戦わせるわけには――」


 反論するメレディスを制したのはソニアだった。


「メレディス様、どうかここはジェラード様の言うとおりに……」

「う、うぬう、聖女様がそう言われるのであれば……」

「ジジイ、ソニアたちのこと頼んだぜ」

「な、おまえはどうするんじゃ!」

「俺はやることがある」


 魔王城の前まで辿り着いたジェラードたち。周囲ではいまだ魔王軍との戦いは続いている。外で戦い続けてはキリがないので、同時に魔王城に攻め入るのだ。ジェラードは勇者に近づいて声をかけた。


「おい、魔王はおまえがやれ」

「……ジェラード様?」


 勇者はきょとんとした顔でジェラードを見つめ返した。


「あの……予定ではジェラード様は我々と一緒に魔王を討つはずでは?」

「俺には俺の最終決戦がある。おまえに一番美おいしいところをくれてやるから、きっちり仕事してこい」

「わ、解りました。ジェラード様もご武運を!」


 そう言って勇者は勇者パーティーに声をかけて魔王のいる玉座の間へ向かった。続いてジェラードはメレディスに声をかける。


「ジジイ、ここにいる冒険者たちと固まって一緒に行動しろ。おまえの命に代えてもソニアたちを守り切れ。期待に応えることができたら、今回ばかりは俺が酒を奢ってやる」

「おぬし……いったい何を!?」

「ジェラード様! もしや危険なことをされようとしているのでは……!?」

「ソニアお姉様、どういうことですの!」


 ジェラードはソニア、レイラ、ララを順に見る。そして口元に笑みを浮かべた。


「おまえらは何も考えず、ただ俺を信じていればいい。じゃあ、頼んだぜジジイ」


 言い残してジェラードは飛翔の魔法を唱えジャンプし、大きな柱を蹴って二階の奥に消えていった。残されたソニアたちは不安そうな顔をしていたが、ララがパンと手を打った。


「ジェラード様を信じるにゃ! あてぃしたちは自分にできることをするんにゃ!」

「え、ええ! ……ジェラード様を信じて行動しましょう!」


 メレディスはそんなソニアたちを眺めてから、ジェラードの向かった先を見つめていた。


「…………必ず生きて帰るんじゃぞ。ジェラード」

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