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双剣魔眼の剣術学院クロニクル  作者: ユズキ
外伝 深淵の魔導師
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第二十五話「遺跡をてめぇの墓標にしやがれ」

 ジェラードたちが遺跡の奥へ進んでいくと、そこには異形の化物が佇んでいた。


「……ジェラードか。ちょうどいい、おまえの魔力も根こそぎ食らい尽くしてやるぞ」

「その声……ヘイデンなのか?」

「そうだ。これから魔族の支配者になるのだ」

「少し見ないうちに、えらく醜い姿になったもんだな。これはどういうことだ?」


 ヘイデンの容貌はジェラードの知るそれとはまったく別のものになっていた。かろうじて人型を留めているが、その体は十倍以上に膨れ上がり、腕の付け根からは触手のような器官がいくつも飛び出している。声を知るジェラードでなければ、このおぞましい怪物がヘイデンとは気付かなかったであろう。ジェラードが辺りを見回すと、魔導兵の死体が転がっていた。


「おまえがやったのか?」

「そうだ。俺の養分にするために魔力を吸い尽くしてやったのだ」


 ソニアとレイラが体をこわばらせる。ジェラードが目配せすると、理解したようにメレディスが二人を下がらせて庇うように前へ出た。ジェラードは視線をヘイデンへ戻し首を傾けて鳴らした。


「そうか。さっき倒した魔導兵はおまえから逃げてきたんだな。何が魔族の支配者だ。おまえが魔王にでもなるつもりか」

「そのとおり。俺こそ魔王に相応しい」

「はっ、なるほどな。それが禁呪の力ってわけか。俺が手にしていたら、俺がそうなっていてもおかしくなかったということか」

「悔しいか。俺が先に力を手にしたことが」

「いや、そんな化物みたいな姿にならなくてホッとしているんだよ。ジジイ、ソニアとレイラを連れてここを出ろ」


 ジェラードは振り向かずに言った。


「おまえはどうするんじゃ?」

「こいつを倒す。派手な魔法の撃ち合いになるはずだから、足手まといはさっさと離れてろ」

「しかし、あの魔力……。さっきの魔導兵とは比べものにならんぞ。いったいあやつは何なんじゃ……!」

「余計なことは考えなくていい。ジジイは二人を守ることに専念しろ」

「うぬぬ……、さすがのおまえでも集中しなければ倒せない相手か。だが、一人であれを相手にするのは……!」


 メレディスはヘイデンの恐ろしさを身をもって感じているようだった。するとジェラードの兜にはめ込まれた水晶からディアドラの声がした。


『私がいるから大丈夫だ。おまえたちは下がるがいい』


 ディアドラが言うので、メレディスは渋々ソニアとレイラを連れて来た道を引き返す。ソニアとレイラは心配そうに何度も振り返っていたがララが逃げるように誘導する。ジェラードは背を向けたままだった。ディアドラがジェラルドにだけ聞こえるように囁く。


『あれで良かったか?』

「ああ、おまえがああでも言わなかったら、あいつらはここを離れなかったはずだからな」

『しかし、水晶越しでも恐ろしいまでの魔力を感じるな。あれに勝てるのか?』

「愚問だな。俺が勝つ。だが、ソニアたちも心配だから短期決戦でいくぞ。俺に力を貸せ」

『わかった。どうすればいい?』

「いいか、まず――」


 ジェラードはディアドラに指示を出すと、彼女は驚きつつも了承の意思を示した。


「いくぜっ! 大地に眠る精霊よ――」


 ジェラードは呪文の詠唱を開始する。ディアドラに全魔力を自分に供給するように告げて。異形の怪物と化したヘイデンは怯む様子もなく、ゆっくりとジェラードに迫っていた。その体から漂う瘴気はどんどん膨れ上がっている。


(アースクエイクを最大威力でぶっ放す!!)


 ヘイデンが手を伸ばすが、わずかに早くジェラードの呪文が完成した。遺跡内でアースクエイクを放てば遺跡自体が保たないとジェラードも解っている。そしてジェラードは、目の前の怪物が自身より巨大な力を有していることにも気づいていた。その上で、跡ごとヘイデンを潰すつもりでいたのだ。


「遺跡をてめぇの墓標にしやがれッ! 地の果てまで落ちろ!

アァァァスゥゥゥ――クエイクッ!!」


 ジェラードが力ある言葉を発した瞬間、地面に無数のひびが入り、壁や天井まで亀裂が伸びていった。すぐに天井が崩れ始め、その破片が次々に落下し始めた。ヘイデンは襲いかかる瓦礫に押しつぶされ地面の亀裂に挟まれた。身動きの取れないヘイデンに追い打ちのように瓦礫の雨が降り注ぎ、すぐにその姿は埋もれてしまった。


『だから言ったのだ。私の魔力も合わせればこうなることは目に見えていただろう。やつを倒せるのはいいが、このあとどうするのだ?』

「へん、決まってんだろうが! 逃げんだよ!」


 魔法の兜が落ちないようにしっかり右手で押さえつけ、ジェラードは一心不乱に辿ってきた通路を逆走する。ジェラードの行く手を遮るように天井の一部が目の前に落ちてくる。ジェラードは左手でダークエッジを放ち、ことごとく粉砕した。


『もう少しだ、急げ!』

「わーってる! ぎゃあぎゃあ騒ぐな、エルフの女王がみっともない!」


 ジェラードは一気に駆け抜けた。無事に脱出したジェラードの後ろでは、ちょうど遺跡が完全に崩壊したところだった。ソニア、レイラ、ララ、メレディスが安堵の表情で駆け寄ってくる。


「ジェラード様!」

「よくご無事で!」

「やったにゃん!」

「おおお、ジェラード!」

「泣くんじゃねぇ、おまえら! 俺が死ぬとでも思ってたのか! こら、ジジイ! どさくさに紛れて抱きつくんじゃねぇ! 気持ち悪いだろがっ!」


 ジェラードはただの瓦礫の山と化した遺跡に振り返る。しんと静まりかえって、遠くで魔獣の咆哮だけが木霊してした。


(結局、禁呪とやらは手にできなかったが、これで良かったのかもな……。ヘイデンの野郎も生きてはいまい)


 こうしてジェラード一行の遺跡探索は幕を閉じたのだった。

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