第20話 女神、服を切り裂かれる
「それで、ディアナさんが描くビジネスプランというのはどういうものですか?」
「はい、文字通りこの店を大きくして繁盛させるわけですけれども、店主さんとしてはどんな方法を考えたりしますか?」
「そう質問されましても…。誠心誠意美味しい料理を提供して当店を好きになってくれるお客様を増やすこととお客様を飽きさせないこととしか考えようがありませんが…。」
「正攻法で行くのでしたらそうでしょうね。」
「では、ディアナ様が考えていることは正攻法ではないと…?」
「少なくとも人から恨まれることを前提としますね。」
「ええ!?そんなことを当店にやらせるおつもりですか!?そんなことをしてしまったらお客様すら寄り付かなくなるでしょう!?」
「そうであっても経営権はもう私が買い取った後ですよ?『はい』以外はありません。」
「…まさかそんなことに巻き込まれるとは思いませんでしたよ…。当店を大きくするためだけに具体的に何をやらせるおつもりですか…?」
「そうですね…とりあえず店長さんに一緒に来て欲しいところがあるんですが、数日間店を他の従業員さん任せにしてついてきてもらってもいいですか?」
「そうまでして何をさせるおつもりですか?」
「今はまだ詳しいことはお話できません。」
半信半疑の店長に出かける支度をすぐに整えてもらい、私は店長を引き連れてそのままビエラの南東と南西に広がる山脈へと向かって街道を南へ南へと歩き始めた。無論、一人でそんなことをし始めたため、後をついてくる店長からは怪訝な顔をされた。
「あの……いったいどこまで行くつもりですか?それに、お一人でそんなことをしてしまってはご両親が心配されるでしょう?」
「ご心配は無用です。両親は基本的に私を自由にさせてくれていますので。それと、目的地はここからそう遠くない場所ですので不安がらなくても大丈夫です。」
「そうは言われましても…。」
そう不平を言いつつも同行してくれる店長。人の往来も少なくなってきたあたりで私は異空間から馬を引っ張り出した。店長のステータスを覗き見して騎馬術のスキルがあるかどうかを調べてみたが、彼女のステータスは以下の通りであり、馬に騎乗させることは難しそうだった。
ーーSTATUSーーーーーーーーーーーーーーー
Name:メイ・セリア
Gender:女性
LV:20
HP:9545/9655
MP:6644/6650
EXP:234234/503344
ATK:567
MATK:654
DEF:576
MDEF:602
STR:854
DEX:821
INT:893
LUC:877
Job:和食料亭『海幸山幸』女将
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Skill:剣術LV.3 弓術LV.2 槍術LV.1
棒術LV.1 徒手空拳LV.4 火魔法LV.3
水魔法LV.3 土魔法LV.3 風魔法LV.3
氷魔法LV.4 空間魔法LV.5 無属性魔法LV.3
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Blessing:サウザンド・オブ・カスタマーズ
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Equipment:麻の肌襦袢、麻の長襦袢、
牡丹柄の着物、桔梗柄の帯、鼈甲の簪、
草履、足袋
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せめて騎馬術のスキルレベルが1以上だったら彼女の分の馬も用意したところだが、そもそも商人にそんな戦闘系スキルはあまり期待できない。店内でおいたをするタチの悪い客を押さえつける程度には戦闘能力はあるようだけれども魔物とか兵士を相手にできるものでもなさそうだった。商人にそれを期待してはいけないんだろうけど…。加護自体も客商売をやることを前提のもののようだし…。
「目的地までちょっと距離がありますのでメイさんの分の馬も出そうかと思ったのですが馬には乗れないんですよね…?」
「申し訳ありませんが騎馬術のスキルはありません。料亭女将にそんなものは必要ありませんから。」
「となりますと今日中に到着するのはちょっと難しそうですね。」
「どこまで連れて行かれる予定だったんですか?」
「ビエラの南東と南西に広がっているラーナ山脈とタニア山脈です。」
「そんなところに足を向けてどうされる予定だったんですか?」
「市場を介在せず料亭で使用している食材を直取引で仕入れる商談を行おうと考えていたんです。その商談にメイさんにも参加していただき、取引の内容を把握していただこうかと思っていたんです。経営権を買ったとは言っても、大部分の経営はこれまで通りメイさんにお願いするわけですので。」
「それで私を同行させようとしたわけですね…?そんな遠方に行くのでしたらもっと動きやすい服装にしたのですが…。」
「行き先を話さなかったことについてはお詫びします。私はこの辺りの土地勘はないにも等しいですので最悪この近辺の土地勘のあるメイさんに正確な行き方を教えていただくことも検討していたんです。」
それ以外にも私が一人で行動していたら兵士たちに怪しまれて職質からのサンドバッグコースが待っているから避けたかったというのもあるが…。いちいち兵士を倒して物資を略奪し、ランジェリーを着せるのも面倒だけれども、それ以上に兵士たちにサンドバッグにされる過程で服を汚されると汚れを落とすのが大変だからだ。
「それならディアナさんが心配なさる必要ございませんよ?どちらの山脈もこの街道をまっすぐ南へと歩いていきますとそれぞれの山脈に向けて分岐路がいくつか作られていまして、それぞれの分岐路から山脈に向けて進んでいただきますと目的の山々には行けますので。」
うーん……行き方がわかった以上これは私一人で行動するような雰囲気だ。今更わかりませんのでついてきてくださいなんて嘘言えないし、私一人で向かう方が明らかに効率がいいのに同行を求めたら怪しまれるだろう。としたら……。
「そうですか、ありがとうございます。それでしたら、商談の間だけメイさんにもう一度来ていただく方が効率良さそうですね。ここから先は私一人で現地まで行きますのでメイさんには一度お店に戻っていただくことにしましょうか。ディメンジョンゲート。」
「え!?」
私がいきなりメイの手を取り高位の空間魔法を発動させたためギョッとするメイ。そんな彼女を伴ったまま料亭の玄関に瞬時に転移した。目の前にあるのは数時間前に出発したばかりの和食料亭。そのため、メイは驚きと恐れとで口元を押さえていた。「嘘…こんな小さい子がこんな高位の空間魔法を…。」ともブツブツ言っていた。彼女の狼狽は見なかったことにして、私はさっさと一人旅を続行することにした。
「では、商談を行う際にはまたお呼びしますので、その際は同行お願いします。ディメンジョンゲート。」
メイを店の前に放置して私はさっきの座標に戻った。そして異空間から馬を引っ張り出して騎乗し、一人で山脈へ向かって移動し始めた…のはいいけれども、やはり四歳児にしか見えない子供がフードを目深に被って一人で馬に騎乗して走るとなれば違和感まみれであり、すぐに憲兵に見つかってしまった。
「そこのもの、止まれ!!」
止まれと言われた以上止まるしかない。仕方ないので私は馬を減速させ、馬の背中からジャンプし、くるくると数回空中で回転してから「止まれ」と命令した憲兵の頭の上に静かに着地しピタッとつま先立ちで綺麗な水平バランスをとりつつ止まった。我ながら鮮やか。ここが新体操の大会場だとしたら高スコアが期待できたかもしれない。
「貴様あ!!!馬鹿にしているのか!!?誰がそんなところで止まれと言った!!?」
「止まれと命令したのはあなたでしょう?」
兵士の頭の上で水平バランスを維持しつつ私はそう返した。
「降りろクソガキ!!!」
「仰せのままに。」
兵士の頭を踏み台にして飛び上がりさらにくるくると後方宙返りをしながら地面に着地した。その途端胸ぐらをガッ!!と掴まれた。そして今日の尋問タイムが始まった。
「名前は!?それと出身は!?」
「名前はディアナ・アニマ、出身はビエラです。」
「種族は!?」
「人間族です。」
「本当か!?」
「この耳と尻尾にかけて。」
そう言いながら自由な手でフードを外して耳を見せもう片方の手で服の尻の切れ目から尻尾を引っ張り出した。
「獣人じゃねえか!!!馬鹿にしてるのか貴様!!?しかも名前がディアナだと!!?悪魔の子だろうが!!!どうせ出身地も誤魔化してんだろ!!?ああ!!?」
「私の名前や出身地などどうでもいいことでしょう?」
「よくねえっつうのこの忌子めが!!!俺らの前で正体を現したその素直さだけは認めるが教会に背く悪魔の子に生きる権利などない!!!貴様を教会裁判で極刑にしてくれる!!!さっさと付いて来やがれ!!!」
「嫌だと言ったら?」
「こうするだけだ!!!」
そのまま私は兵士に地面に投げ飛ばされ、また土埃まみれになった。兵士たちはそれぞれが抜剣し、幼子相手に大人気ないことをしようとしてきた。
「どうせ教会裁判で磔刑になることは変わらねえんだし手足の一本や二本なくなったって問題ねえよな?」
「ああ、さっさとやっちまおうぜ?」
「おそらくまだ見つかっていなかった忌子かもしれねえぜ?教会からの報奨金が美味しいかもしれねえな!」
そんな物騒なことを話しながら一歩また一歩と私に向かってくる兵士たち。
「あー…、その武器が思い入れのあるものでしたら使うのをやめたほうがいいですよ?」
私は一応彼らに警告をした。
「あ?クソガキが大きく出たもんだな?そんな子供騙しの嘘に誰が引っかかるかってんだ!」
「手足を切り落とされるのが嫌になって怖くなったか?おしっこちびっちまったか?」
「『ママーー、ママーー、たちゅけてママーー』と言ったら見逃すかもしれねえぜ?」
「おいおいライアン、そんな程度で見逃すなんて甘すぎねえか?俺だったら殺す前にこうするぜ?」
そう言いながら兵士の一人はこれ見よがしに腰を前後に振り始めた。
「おいおいラウル、お前、ロリコンだったのかよ…。」
「ふはははは!!美女と幼女に俺の精液を注入するのが楽しいんだよ!!顔が可愛ければ種族なんてどうでもいいさ!!むしろ亜人の幼女とかやりたい放題じゃねえか!!どんだけヤっても文句言わねえし罰されねえし!!人間族様のすることは絶対だからな!!」
「まあな、それがこの社会の掟だからな!!」
ヘラヘラと教会の権威を笠に着て好き勝手をしようとする兵士たち。そのゲスい発言を聞くだけでも虫酸が走るが、怒り任せに彼らを襲うと確実にオーバーキルになる。そんなことをして目立ってしまっては、この先の内部工作に差し支える恐れもあった。私は深呼吸して呼吸を落ち着かせ、彼らが死なない程度に彼らの相手をすることにした。
「……セルフ・リミッター。」
私が魔法を唱えた途端に身構える兵士たち。しかし、何も起きなかったことで私の魔法が失敗したと思ったのか、余裕の表情で私を見下した発言をし始めた。
「ちっ、このガキがビビらせやがって……!!」
「まあ、こんな劣等種に俺らの真似ができるわけねえもんな!!」
「コケにしてくれた借りはその体で返してもらうぜえ?」
剣を構えてどんどん私に近寄ってくる兵士たち。対して私は一切動かなかった。
「行くぜおらあああ!!」
先頭の兵士が私の右腕を斬り落とそうと剣を振り下ろし、街道にガキイイイイイン!!と硬質な音が響き渡った。やがて音が止み、兵士が振り下ろした剣は中程から直角に折れていた。
「な……なんなんだこいつ……!?」
「なんなんだと言われましても困りますって。」
「このっクソガキ!!舐めた真似しやがって!!」
「全員で袋叩きにすりゃあそのうち倒せるだろ!!」
「容赦なしだ!!」
またしても集団リンチで私はサンドバッグにされた。しかも彼らは剣で斬りつけることまでしてくるためなおさらタチが悪い。
ステータスに制限をかけていても私の体には傷一つつかなかったが、服はそうはいかず、着ていたパーカーワンピースはどんどん切り裂かれてビリビリに破かれていき、ポケットからは金貨や銀貨が散らばって街道に散乱し、チャリンチャリンと音を立てた。
「おいおい、このクソガキ忌子のくせに金たんまり持ってやがるぜ?どこでこんな大金くすねやがったんだ?」
「どうでもいいだろそんなこと。教会に没収されちまう前に俺らで山分けしちまおうぜ?」
「ほんと、いい獲物だぜ!!なはははは!!」
そんな風に下品な笑い声を響かせながら道端の金を拾いつつ代わる代わるリンチを続行する兵士たち。しかし、これだけ長時間痛めつけても傷一つ付かない私に不信感を抱いたのか、次第に声色に焦りが見えてきた。
「お、おい、何かおかしくねえか?何でこのクソガキこんだけ痛めつけてんのに五体満足なんだ?」
「どころか俺らの剣が先に使い物にならなくなってねえか?」
「はは……そんな馬鹿な……。」
「いい加減現実に目を向けたらいかがですか?」
『ひいっ!?』
あれだけリンチされていた私が何事もなかったかのように立ち上がったため兵士たちから息を呑む音がした。彼らの目の前に立つ私はそれだけ異質に見えたのだろう。
服がボロボロになるまで切り裂かれ、素肌や狐耳、尻尾が丸見えの格好になっているにも関わらず血が一滴も出ていない、傷一つ付いていない異様な姿。それだけでも常識の埒外の化け物のように彼らには映っているだろう。
そんな彼らを差し置いて私は執拗に切り裂かれたパーカーワンピースを見た。あちこち原型をとどめないくらいに切り裂かれて破れ、中に着ている下着はおろか素肌すらもろ出しだった。これはもう修復しようがないなあ…と結論づけざるを得なかった。
「はあ……汚すだけならまだ許せましたがここまでビリビリに破かれてしまうと流石に見過ごせませんね……。セルフ・リミッター、セルフ・リミッター、セルフ・リミッター、セルフ・リミッター、セルフ・リミッター。」
前言撤回。もう目立ってもいいから私の服を台無しにしてくれた馬鹿野郎どもを考えつく限りの最悪の処刑法で誅したくなった。ステータスの制限を行う魔法を重ね掛けし直して私は一番近くにいた兵士に瞬時に肉薄した。
「徒手空拳LV.10:ディープインパクト!!」
「ぎゃああああああああああ!!!」
街道に響き渡る兵士の叫び声。一呼吸の間に執拗なまでに私に金的を攻撃され、この世の地獄と形容できるような痛みを味わったのだから当たり前だろう。
たかが一兵士に最高位の武術系スキルの一つ、相手の急所を執拗なまでに手足のみで攻撃する武技ディープインパクトを使うだけでもやりすぎだろうけれども、ステータスに制限をかけていても今の私のステータスは以下の通りであり、確実にオーバーキルになる。
ーーSTATUSーーーーーーーーーーーーーーー
Name:ディアナ・アニマ
Gender:女性
LV:9999
HP:99999/99999(制限ステータス適用中)
MP:96999/99999(制限ステータス適用中)
EXP:999999999999999/999999999999999
ATK:31250(制限ステータス適用中)
MATK:31250(制限ステータス適用中)
DEF:31250(制限ステータス適用中)
MDEF:31250(制限ステータス適用中)
STR:31250(制限ステータス適用中)
DEX:31250(制限ステータス適用中)
INT:31250(制限ステータス適用中)
LUCK:31250(制限ステータス適用中)
Job:創世神
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Skill:剣術LV.10 弓術LV.10 槍術LV.10
棒術LV.10 双剣術LV.10 徒手空拳LV.10
斧術LV.10 槌術LV.10 騎馬術LV.10
火魔法LV.EX 水魔法LV.EX 土魔法LV.EX
風魔法LV.EX 氷魔法LV.EX 雷魔法LV.EX
光魔法LV.EX 闇魔法LV.EX 空間魔法LV.EX
無属性魔法LV.EX 回復魔法LV.EX
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Blessing:オブジェクトクリエイション
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Equipment:パーカーワンピース(白)
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5分間HPMPを10分の1に、それ以外を2分の1に制限する魔法を五回重ね掛けしてもそのステータスはイシスを遥かに凌駕する。そんな私の攻撃を何度もくらっても兵士が無事なのはディープインパクトという武技の最大の特徴でもある。
この武技は攻撃力がカンストした状態で使ってもHPとMPが必ず1ずつ残るのだ。ではなぜわざわざステータスに制限をかけてこのスキルを使ったのかというと、これ以上攻撃力があるとそもそも急所が痛みを感知しなくなるのだ。
ステータスを制限しないと攻撃された相手は攻撃されたことすらわからないまま失神する。それでは意味がない。私のお気に入りの服を台無しにしてくれたお礼をするためには相手に地獄のような痛みを味あわせなければ。
実際、私の攻撃をくらった兵士は白目を剥き、口から泡を吐き、股間を押さえながら失禁して道端に倒れた。その光景を見ていた兵士たちの顔が青ざめた。
私がゆっくりと彼らに顔を向けると、彼らは未知の化け物でも見たかのように叫び声を上げながら我先にと逃げ出した。
「セットアンカー・ターゲット・オールソルジャー、チェインバインド・オールターゲット。」
私が呪文を唱えると、逃げ出した全ての兵士が鎖で拘束され身動きが取れなくなった。
「さてと、次はあなたたちです。私の服を台無しにしてくれた仕返しを受ける覚悟はできていますね?」
笑顔でそう言うと動きを封じられた兵士たちは私のお仕置きをくらう前から失禁し始めた。もちろん、そうなったからと言って容赦するつもりはない。
私は私の服を台無しにした咎人たちに等しく罰を与える。例外はない。まるで死刑宣告のように武技を発動させる言葉を唱えた。
「ディープインパクト。」
『ぎゃああああああああああっ!!!!』
一分と経たないうちに街道には失禁しながら気を失う王国兵士たちが転がった。
私は彼らの鎧を剥ぎ取り、所持金も全て抜き取り、没収してから服を破かれた反動で街道に落ちたお金も全て回収した。
その後、兵士たちの服や下着を脱がせて一箇所に集め、こうした。
「インフェルノ。」
あっという間に地獄の業火で灰燼と化した兵士たちの服や下着。汚物は焼却焼却!!それを見届けてから私は加護を発動させた。
「ウォーター、オブジェクトクリエイション。」
少量の水を呼び出して両手足を洗浄した後生成したのはさっき切り裂かれたのと同じ白のパーカーワンピース(裏起毛)と赤紫色のタイツと何枚ものオムツ。
オムツはもちろん兵士たち用です。某オムツメーカーの履かせるオムツです。ゆるうんちストッパー付きで背中漏れも安心です。いい歳した大人でありながらおしっこを漏らすような手癖ならぬ股間癖の悪い兵士たちに履かせるパンツはありません。オムツで十分です。ワンピースを裏起毛にしたりタイツを作成したのはここ最近野宿していて寒かったから。
裏起毛付きで服を生成してみると思いのほかフカフカで弾力性に富み、触り心地は文句なしだった。温暖な地域で野宿する時とかにこれを着ないで枕にするのも良いかもしれない。
緯度が変わるだけで結構冷えるなあとここ最近になってようやく痛感していた。帝国にいた頃はそこまで夜間の温度も気にはならなかったが……。
一通りの物資を作り出した後、私はオムツ以外を着用し、未だに気を失っている兵士たちにオムツを履かせていった。あとは仕上げに……。
「セットアンカー・ターゲット・オールヒューマニックソルジャー、ディジェネレーション・オールターゲット・インテリジェンス・トゥ・ベイビー、リザレクション。」
その瞬間、地面に倒れていたパンツ一丁……ではなくオムツ一丁の兵士たちはHPMP全快状態で目を覚まし、バブバブ言いながらハイハイをしたりその場でギャン泣きし始めた。大の大人でありながら。体の大きさはそのままに知能指数だけ赤子並みに退行させてしまったのだから当たり前だが……。
そんな子泣き爺……と言うよりも子泣きソルジャーズの方が合っているか……を横目に見つつ何事もなかったかのように私は再び馬に騎乗して街道を走り始めた。
私の服を台無しにしてくれた愚か者どもよ、ゲームオーバーの時間だ!!赤ん坊からやり直すがいい!!ふはははははははは!!!