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第10話 帝都ヴォルカノフへの旅路

 タルバの町を出てから数日と経たない日のこと。私は通りがかりの帝国兵士にしっかりと職質され暴行されてしまっていた。今日も絶好のサンドバッグ日和だ。わーい。


 そもそも整備された街道とはいえ魔物とか野生動物に襲われるかもしれないのにたった一人でフードを目深に被って歩くなんて相当な変わり者かやましい事情を抱えている者しかいない。それに見た目は三歳児だ。なおさら怪しまれる。


 なので、帝国兵士たちにも速攻で怪しまれてフードを剥がされ、獣人だとバレて、サンドバッグにされて、今に至る。


「くそっ!!くそっ!!このクソガキ!!何でこれだけ痛めつけてもケロっとしてやがるんだ!?」

「何かおかしいぞ!?亜人ってこんなにも打たれ強かったか!?」

「もう終わりですか?」

「じゃかましいわこのクソガキ!!さっさとこちらの質問に答えやがれ!!何で一人で歩いていた!?帝都に行って何企んでやがった!?」


 隊長格の男に蹴られ、わざと地面に倒れた。


「美味しい食べ物食べに行きたいなあと思っていました。」

「見え透いた嘘つくんじゃねえ!!さっさと企みを言え!!」


 弓使いらしき男がガスガスと私のお腹を踏んづけた後で脇腹を蹴り付けた。私は男の蹴りに合わせてゴロゴロと地面を転がった。


「本当なのに…。」

「亜人風情が人様と同じ物食えるとか冗談は休み休み言え!!さっさと狙いを吐け!!」


 今度は量産品のローブを着た男が私を踏みつけ、ロッドの石突きで執拗に小突いてきた。あーあ、そんな乱暴な扱い方したら武器が可哀想でしょうが…。


「そう言われましても…。」

「黙れ!!誰が口をきいていいと言った!!」

「でも、口をきかないと帝都に向かう理由なんて話せませんよ?筆談でもしろと言うのですか?それともお尻とか尻尾で文字書けばいいですか?」


 そう言いながら私は立ち上がりつつ服の下から尻尾を引っ張り出して絶妙な力加減で尻尾を動かし、『ぐ』『る』『め』『た』と次々と空中に文字を書いて見せた。墨付けて半紙とかに書いたら確実に達筆になった自信がある。


「うるせえクソガキ!!子供が大人に逆らってんじゃねえ!!尻尾で文字とか舐めてんのかてめえ!!」


 『び』と空中に尻尾で書こうとした瞬間に地面に倒され、散々踏みつけられ、罵声を浴びせられる。大の大人がたかだか三歳児にやっていいこととは思えない。何と言うかこの兵士たちの頭には大人気ないと言う言葉はないのだろうかと彼らの教育水準が心配になった。


 そんな風に地面に倒されて踏みつけられ続けているせいで、せっかくのパーカーワンピースは茶色とか黄土色とかに変色しつつあった。後で洗うのは良いとして汚れちゃんと落ちるだろうかとそこが心配になった。最悪洗剤とか柔軟剤を生成して洗うか…。


 そんなことを考えている間にも、兵士の男たちは私をいたぶる体力すら底をついてしまったのか、揃いも揃ってゼイゼイと喘いでいた。ちょっと彼らの状態気になるからステータス見てみるか…。


「ステータス・ルック・イン。」


ーーSTATUSーーーーーーーーーーーーーーー

Name:ポール・ハルトマン

Gender:男性

LV:40

HP:5/25050

MP:0/12460

EXP:343443/1434556

ATK:1435

MATK:750

DEF:1360

MDEF:900

STR:2300

DEX:1795

INT:445

LUC:50

Job:第154輸送隊隊長

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Skill:剣術LV.8 弓術LV.4 槍術LV.5

 火魔法LV.7 水魔法LV.6 土魔法LV.6

 風魔法LV.7

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Blessing:インドミネート・ウィル

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Equipment:鉄の片手剣、鉄の鎧、木の弓

 鉄の短剣、鉄の兜

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーSTATUSーーーーーーーーーーーーーーー

Name:ダラス・オルカルコス

Gender:男性

LV:30

HP:5/18960

MP:0/12400

EXP:444678/897345

ATK:1222

MATK:890

DEF:1121

MDEF:998

STR:1443

DEX:1994

INT:657

LUC:109

Job:第154輸送隊弓兵

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Skill:剣術LV.4 弓術LV.9 徒手空拳LV.3

 氷魔法LV.6 雷魔法LV.7 闇魔法LV.6

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Blessing:ヒッティング・ターゲット

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Equipment:鉄の片手剣、鉄の鎧、木の弓

 鉄の短剣、鉄の兜

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーSTATUSーーーーーーーーーーーーーーー

Name:ウォルター・サルダー

Gender:男性

LV:30

HP:5/18960

MP:0/12400

EXP:456631/897345

ATK:908

MATK:1679

DEF:900

MDEF:1324

STR:556

DEX:60

INT:2031

LUC:1144

Job:第154輸送隊回復術師

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Skill:徒手空拳LV.3 棒術LV.7

 光魔法LV.8 回復魔法LV.9 無属性魔法LV.7

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Blessing:ヒールブースト

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Equipment:木のロッド、下級神官ローブ、

 白の経典、加護の指輪

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 MP枯渇にHP残り5って…。相手が私だから良いけどこれが魔物だったらこの兵士たち即死だろうなあとしみじみと思った。どれだけ無計画に相手を攻めたがるのやら…。まあそもそもエデンでこんな風に戦うなんてことは元から想定していなかったため、人々を転生させる際に戦い方を一切説明してこなかった私の落ち度でもあるのかもしれない。


 何れにしても、これだけ消耗していると、私が手を出さなくても彼らはもう体力使い果たして戦う余力なんて残っていないはずなので、私は何事もなかったかのように立ち上がった。


「貴様あ!!誰が立って良いと言った!!座ってろクソガキ!!」


 まだ怒鳴る元気はあるみたいだった。


「貴様あ!!大人を馬鹿にしやがって!!そこに直れ!!」


 無視してパーカーワンピースについた砂埃をはたき落した。


「なめやがってこのクソガキ!!」


 ウォルターが激昂してロッドを私の頭めがけて振り下ろしてきた。私の頭を直撃するロッド。その瞬間、ベキッ!!と音を立て、振り下ろされたロッドが中程から折れた。ここまで壊れるともはや武器としても機能しなくなるだろう。

 やっぱり量産品といっても乱暴に扱われる武器が可哀想だ。ロッドは鈍器じゃありませんよ?人を殴りたければメイス一択でしょうに。それか槌を使うとか…。


「なん……だと……!?樫の木で作られた頑丈なロッドが真っ二つになるなんて…!!」


 呆然とした顔でベッキリと折れてしまったロッドの残骸を見つめる男を横目に見つつ私は服に付いた砂埃をはたき落としてみた。けれども、はたくだけではこれ以上汚れが落ちる見込みはなかった。


 白地だったのに茶色とか黄土色のマーブルカラーに染められてしまったパーカーワンピースを見つめつつ私は「はあ…」とため息をついた。


「やれやれ…あなたたち、よくも私の服を汚してくれましたね?洗濯代は高くつきますよ?」


 私はにっこりと微笑みながら三人の兵士たちを見回した。その瞬間、兵士たちの顔が青ざめた。すでに彼らは魔力枯渇、体力5で、もはやまともに戦えない状態、対する私はあれだけサンドバッグにされてもダメージを一切受けず、服が汚れただけの状態。どちらが優勢かは火を見るよりも明らかだった。


 私はトン、と地面を蹴り、三人の眉間を人差し指一本で優しくつついた。その瞬間、HPが1になった彼らは地面に大の字になって倒れた。HPを0にしてしまうと死んでしまうのでそれだけ手加減したのだ。私は無駄な殺生は好まない。


「カラビヤウエクスパンド。」


 三人が地面に倒れたのを確認したら、私はまず異空間を展開した。


「フィジカルブースト 。」


 続いて身体強化をかけて兵士たちが引いていた荷馬車を持ち上げ異空間の中に収納した。馬だけは後で乗るつもりでいたのでそのまま放置した。


 その後で、地面に転がる三人の兵士たちの鎧や服、装備、所持金などを根こそぎ奪い取り、いつぞやかのレジーナとボリスみたいに丸裸にした。奪った装備は全て異空間にしまい込み、所持金はパーカーワンピースの腹部のポケットに全て入れた。その上で異空間収納魔法を閉じた。


 服を散々汚してくれた仕返しとしてはこれでも不十分かもしれないが、まあ彼らも職務でこういう対応を取らざるを得なかったのだろうと思うと丸裸で放置していくのは気が引けた。そこで、私は彼らにもレジーナたちみたいに慈悲を施すことにした。


「オブジェクトクリエイション。」


 加護を発動させる言葉を唱え、彼らの服を用意した。ポールには赤色のランジェリーとブラジャー、ダラスには黄色のランジェリーとブラジャー、ウォルターには緑色のランジェリーとブラジャー。それぞれの体に着せておいた。三人揃って信号カラー。なかなか私のセンスはいいかもしれない。起きたら彼らはきっと私に感謝してくれることだろう。

 目を覚ました彼らが絶叫しながらタルバへと駆け込み、その件で再び町中で私に関わる噂が飛び交うようになったのを私が知ったのはそれから一ヶ月以上後に変装してタルバにフィレステーキを食べに行った時のことであり、その時の私はそんなことになるとは知る由もなかった。


 今日の夜にでも野宿をしつつ彼らに汚されたパーカーワンピースの洗濯をしないとなあと思いつつも私は奪った馬に乗り、そのまま帝都ヴォルカノフに向けて馬を走らせた。


 彼らを街道に転がしておいたあとも私は馬を走らせて帝都に向けて街道を進んでいった。自分で歩くよりも馬に乗っている方がやはり楽だ。歩くのと違って体力を温存できる。


 帝都に向けて街道を半日くらい進んだあたりで日が暮れてきたので一度進むのをやめて、私は野宿を始めた。


「オブジェクトクリエイション。」


 再び物質創造の加護を発動させ、テントとタライと腰掛けと洗剤と柔軟剤と物干し台と馬用の餌を生成した。ついでに服が乾くまでの着替えとしてジャングルで生成した白いワンピースを異空間から引っ張り出し、洗濯と乾燥の間そっちを着ていた。もしかしたらまだ使うかもしれないと思って洗って乾かして保存しておいたのが役に立つとは思わなかった。


 翌日以降も私は街道に沿って馬に乗って走り、兵士たちに見つかってはサンドバッグにされ、服を汚され、クリーニング代替わりに彼らを倒して所持品と輸送品を巻き上げ、全裸の兵士たちに女性用の下着を着せながら帝都を目指して進むのだった。


 略奪した馬を走らせること二十日目。ようやくマリーシャス帝国帝都ヴォルカノフへと到着した。帝都にはどんなグルメがあるのだろうと期待に胸を高鳴らせながら私は帝都へと入るのだった。その時は、当初の旅の目的すらも頭から消え失せていた。

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