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選ばれざる者  作者: ボールペン
[第一部:孤独な姫]第一話 お姫様を救い出せ
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7.姫発見

 真っ暗闇の中を手探りで進むと、一〇〇メートルほど行ったところであっただろうか、ほんのりと奥の方に明かりが見え始めた。


「明かりだ・・・」


 風は無い。洞窟は山を貫通はしていないから、外の光ではない。つまり、見えた光こそが、恐らくキャスティラ第一王女クラウディアの囚われているフロアのものだろう。生死すらも定かではなかったが、こうして明かりが見つかったことで、カインは一抹の安堵に駆られた。


「クラウディア姫!」


 思わず駆け出した。足もとは未だ暗がりではっきりと見えてもいないのに、なぜだか居ても立っても居られなくなったのだ。

 早く姫を連れて、ゾヴュラの元に戻ろう。いつモンスターが帰って来るかも分からない。きっと、クラウディア王女も一刻も早い脱出を願ってやまないことだろう。

 そしてついに光源の元に辿り着いたカインは、その先に人影を発見した。


「クラウディ・・・・あ、・・・・姫」


 しかし、反射的にその名を叫ぼうとして、彼は思わず声を飲み込んだ。松明の明かりに照らし出された、その人影はまさしく若い女性で、姫に相違なかった。

 しかしながら、その美貌たるや、これまで旅の中で出会ってきたどんな女性よりも美しく、輝きを放っていたのだ。


「誰・・・・?」


 カインの声か気配か、彼の方を姫はゆっくりと振り返った。


「・・・・姫、救出に参上しました。

 早く、ここから出ましょう!」


 石畳の上に上品に座っている姫を起こそうとして近寄った時。カインは、ここにきてようやく二人の間を鉄格子が阻んでいることに気が付いた。


「なっ・・・」


 なぜこんなところに鉄格子があるのか。モンスターが敢えてここに姫を幽閉したのであれば、やはり相当に狡猾なものである。鉄格子はところどころ錆付いてはいたが、それでも剣で叩き斬れるほど脆くはなさそうだった。


「私を、連れ出しに参ったのですか・・・?」


「はい!

 軍はモンスターによって全滅させられ、キャスティラは僕のような冒険者を募って姫の救出にあたらせました。

 

――――ここには、まだ一人も・・・?」

 

 カインの応答に、姫は青ざめた表情を浮かべ、静かに首を横に振った。


「いいえ、誰も・・・。誰一人、来てはいませんわ・・・・。

 ・・・貴方も、早く逃げて。私をここから出すのは不可能なのです。

 早くしないと、貴方も・・・」


「姫。僕は貴女を救いに来ました。

 是が非でも、助け出してみせます」


 狼狽える姫を元気づけようと、カインは必死で笑顔を作ってみせた。絶望に染まった姫の表情を、少しでも明るくしたい。彼の心は、死への恐怖から一転、勇気と決意で満たされた。

 鉄格子を何とかしなければならない。力の弱いカインでは不可能だが、ゾヴュラならば鉄格子を叩き斬れるかもしれない。カインは思い立ったが吉日、姫に背を向けて駆け出そうとした。

 その時だった。


「待って!

 話をお聞きください!」


 唐突に、背後から呼び止める姫の美しくも悲痛な叫びに、カインは吾知らず足を止めた。


「姫・・・?」


 振り返り、姫の顔を見据える。彼女は僅かに俯き、胸の前で両手を合わせていた。

 そして、震える声で、彼女はカインの心を大きく揺さぶる一言を発したのだ。


「お願い、私を・・・・。




 ――――私を、ここから連れ出さないで」


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