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選ばれざる者  作者: ボールペン
[第一部:孤独な姫]第一話 お姫様を救い出せ
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4.カインの生い立ち

 ゾヴュラは、実の父親ではない。気づいた時には既に一緒にいたが、彼は幾度となくそう言っていた。


 カインには、幼い頃の記憶が無かった。思い出せるのはおよそ、六歳くらいの頃からだろうか。それ以前の記憶は、未だ思い出されることはなかった。

 ゾヴュラはカインを連れて、旅をしていた。曰く、カインと出逢う以前から旅をしていたのだという。しかしながら旅の目的も、何故カインを連れているのかも一度も教えてくれなかった。訊こうとすれば、他の話題で逸らされたりはぐらかされたり、虫の居所が悪ければ思い切り拳で殴られることさえあった。


 旅は、基本的にユーロピウス州を周っていた。かの大国フィレンスを訪れたこともあったのだが、如何せん幼かったゆえにその時の記憶はあまり残っていなかった。どちらかといえば内陸が多く、海を見たことはあったが、未だに船には乗ったことが無い。ゾヴュラが酷く酔ってしまうのだという。


 カインは当初読み書きもできなかったが、ゾヴュラと様々な国を周り、色んな言語に触れることで、少しずつ理解が深まっていった。一方で、ゾヴュラがどの国においても、言語面で困惑するところを見た憶えはなかった。読み書きは難なくこなし、異国語であっても平然と意思伝達を出来ていたあたり、彼は実はかなり教養が備わっていたのではないだろうか。

 またゾヴュラには、様々なことを覚えさせられた。彼は言葉を尽くすよりも身体で覚えさせるタイプで、剣術も、馬術も、実際にさせられて覚えてきた。モンスターとの戦闘の際も、彼はあまりカインを守ることもなく、二人で旅をしているとはいえ、自分の身は自分で守るというのが彼の方針だったのだ。それでも情が無いというわけではなく、寝食は共にする上、深手を負ったときにはすぐに傷の手当てをしてくれた。


 街中で目にする、一般家庭のような親子関係ではないのだろう。血は繋がっていないし、酒に酔えば暴力を振るってくることもある。その上命を賭した戦いの最中であっても手はあまり貸してくれない。女遊びも酷いもので、宿にカインを一人ほっぽって口説いた女性と行方をくらますことも珍しくなかった。

 それでも、カインはゾヴュラのことを慕っていた。本当の両親も、自分の故郷も分からないが、そんな自分をこうして連れて旅をしてくれている。疎ましく思うことも多い中、それでも見捨てずにいてくれているのだ。ゾヴュラはその理由を頑なに明かさないが、彼はそれを無償の愛と受け取った。カインが困っている人を見る度手を差し伸べようとするのは、なによりゾヴュラへの思いゆえであったのだ。

 厳しくも優しい、常に気だるそうな中年の男を、カインは誰よりも慕い、敬愛していた。だからこそ、彼はゾヴュラに置いていかれるわけにはいかないのだ。落下を恐れて立ち止まっているようでは、彼には文字通り追いつけない。


 強力なモンスターから囚われのお姫様を救い出す。それは、カインにとって憧れに一歩近づくための手段でもあった。


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