慌ただしい1日の終わり
リビングに戻ると、由実が半泣きで謝ってきた。
「あの…南野先輩…すみませんでした…」
詩音も続いて
「いっくん、ごめんね…」
俺の方こそ変なもん見せてごめんな…
「2人が謝ることはないさ…俺の方こそ、ごめん」
「いつき、俺もごめんな。勘違いして渾身のゲンコツかましちまって…」
1番効いたのはお前のゲンコツだからな。
「よし、この件はこれにて閉廷!」
早くこの空気を何とかしたくて、話題を変えようとした。
「何か映画でも見よう!何か適当に流すぞ!」
それぞれが、そうしようとなった。
ソファにみんなで座り、俺、橘、由実、秋の順で座っている。
秋以外はテレビを観てるようで観ていなかった。
だが、時間が経つに連れて平常心を取り戻し、コメディなんかが流れていてくれたら良かっただろう。
無意識に再生していた映画は、海外のホラー映画だった。ポルターガイストから始まり最初と言えばそこまで怖くないのだが、中盤辺りから徐々に怖くなっていく。
幽霊が片鱗を見せ始めた、流石の俺もちょっと怖い。
隣に居た橘を見ると時が止まっていた。
怖いもんな、そうだよな。
由実は様々なリアクションをしていて面白かった。
秋は、普通に観ていた。
恐怖の終盤になるに連れて、橘が俺の手を握り腕にしがみつき終わる頃には抱き付かれていた。
さっきの一件といい、ドキドキするよこれ。
良い匂いだし。何より良い匂いがポイント高い。
「あわわわわわ…ダメ…来たらダメ…早く逃げて…」
橘の小声が面白かった、何言ってるかわからんけど怖いんだろう。ごめんな、ホラー映画なんて流しちまって。
てか、ポニテじゃない橘って新鮮だ。
学校内1、2を争う美少女と言っても過言ではない。
けど俺はツイン派だ、写真集を買ってしまうほどのツイン派。橘がツインテールになったらうっかり一目惚れしてしまうだろう。
「もう終わりますかねえ…」
ボソッと呟いた由実。
俺を除いた全員が集中して観ていた。
橘さん、観てた?
「終わったー!」と嬉しそうに言う由実がこちらに視線を向けると、俺に抱きつく橘を見て
「先輩…何やってるんですか…?」
「俺は何もやってない」
「詩音先輩、終わりましたよ!!」
橘の反応がない。
「おい、橘?終わったぞ?」
反応がないので顔を覗き込むと、可愛い顔して寝ていた。
「まあ、無理もないだろ、時間も遅いし」
秋が時計を指差して言ったので、時間を見ると2時近くになっていた。
「無理させちゃったかな…」
と、申し訳ない気持ちになった。
「こうやって遊ぶのも滅多にないんだ、楽しかったら良いんじゃないか」
秋のその言葉に、それもそうかと納得した。
「あ、布団準備し忘れた…」
「ここで寝かせるのもな」
「私はソファでもいいですけど…」
「俺も家で寝れば良いだけだ」
「まあ仕方ない、橘は俺のベットに寝かせるか」
一応、秋の分もと思い俺の部屋に布団は用意していたのだが…2人分は干しっぱなしだ。
「秋悪い、今日は自分の家で寝てくれ…由実と橘は俺の部屋に寝てもらう」
「先輩はどこで寝るんですか?」
「俺は親のベットで寝るよ」
人様の親の布団で寝たい人はいなかろう。
「それならいいですけど…」
橘をベットに寝かせて布団をかけた。
「由実、後はよろしくな。おやすみ」
「はい、おやすみなさいです」
電気を消して、部屋を後にした。
「もう寝たのか?」
秋が、少しの荷物を持って聞いてきた。
「あぁ、多分な」
「じゃ、俺も寝るわ!おやすみ」
ふわあと欠伸をしながら家に戻っていった。
ソファに座り、テレビを着けてたまたまやっていた深夜アニメを観ていた。
自分のスマホをふと見ると1時間前にメッセージがあった。
北川さんからのメッセージだ。
「まだ、起きてる?」
先程とは違って普通のメッセージに戻った。
「起きてるぞ」
と返した。
すぐ返事が来た。
「少し声が聞きたい…です」
「通話するか?」
と返信したらすぐ着信があった。
ちょっとびっくりした。
「もしもし?」
「「も、もしもし…いつきくんですか?」」
「違います」
「「え?ご、ごめんなさい間違えました!」」
「嘘だよ」
「「なんで嘘つくのー!」」
「あはは、ごめんごめん」
「「もう、怒るよ!」」
「ところで、どうしたの?寝れない?」
「「うん、ちょっと寝れなくて…」」
と、初々しい他愛無い話をしていたが、ポワポワした気持ちになって俺の方が途中で寝てしまっていた。寝落ちというやつだろう。