楽しい気持ち
俺は夜食と称し大量のお菓子や飲み物を買い込んでから帰ることにした。意外と楽しみにしてる自分が居る。
晩ご飯はピザを頼んでパーティだ!なんてありきたりな妄想をする。
大量の荷物を持って家に帰ると丁度家を出ようとしてた母に遭遇した。
「おかえ…何その荷物?」
じーっと見つめてくるので
「今日秋達と、お泊まり会をやるんだ」
素直に答えた。嘘は良くないからね。
「そう、ちゃんと片付けなさいよ!」
「わかってるよ、母さんも気を付けてね」
「はいよ!それじゃ、楽しんで!いってきます」
「行ってらっしゃい」
ガラガラと沢山の荷物を持って、出張に行った。
暫くすると、インターホンが鳴った。
「はーい」
3人揃ってのご登場。
いや、ワクワクしますね。
「どうぞどうぞ、入ってくだちぃ」
お邪魔しまーすと言い、案内されたリビングに集まった。
橘だけは、荷物が通常の3倍以上の量なので先に暫く居る間に使ってもらう部屋に案内した。
「誰もほとんど使ってない部屋だからホコリっぽいかもしれないど、ごめんね」
「大丈夫!こちらこそごめんなさい。無理やり押しかける様な真似して…」
「いいよ、これくらい。橘の気持ちが少しでも安らぐなら」
「どうしてそんなに優しいのかな、君は」
「人は鏡って言うだろ、橘が優しいから俺も橘に優しくするんだ」
「あはは、それもそうだね」
いたずらに笑う彼女に、何か脆く儚いモノを感じた。
「ちょっとお2人さん…男女異性交友ですよ?」
由実が覗きながら茶化してきた。
「由実ちゃん、ごめんね?いっくんて、凄く優しいから私が甘えたくなっちゃうの」
と言って腕に抱きついてきた。
アワアワしてる俺に、両頬をプクーって膨らませた由実が俺の手を引いてリビングまで連れ戻した。
男なら嫌いじゃない可愛い女の子に抱きつかれたら嬉しくなっちゃうよ。
「遅かったな!」
と、秋がゲームのコントローラーをニコニコで持ちながらソファに座ってた。
「待たせたなぁ、始めようか」
「あぁ、俺たちの戦争をよぉ!!」
男2人は気合が違う、気合が違うのだ。
女子2人はついていけない様子でゲームに参加するも、男子が手加減しないもんだから、はぁ無理と言って抜けてしまったのである。
「やる様になったな、秋ぃ!!」
「なんだとぉ!」
「決定的な戦力差が、キャラパでは無いと言うことを教えてやる!!」
「誰が貴様などに!!」
「加速しろ、誰よりも早く!」
「トラ○ザム!!」
橘と由実は軽く今の状況に引いている。
俺と秋の間に、立ち入る隙はない!
マルオカートは、結局2人で白熱してしまった。
気がつくとそこそこいい時間になっていた。
キッチンに2人の姿があった。
そして、いい匂いが立ち込めてきた。
「詩音先輩、料理上手ですね!」
「由実ちゃんこそ、いい手捌きじゃない」
と、何やら料理してた様だ。
そういえば、すぐゲームを始めちゃったもんだからご飯食べてないね。
「何作ってんの?」
「えっと、グラタンと、スープとパスタですかね」
「冷蔵庫の物勝手に使っちゃってごめんなさい」
「いや、好きに使ってくれ。俺は使わないから」
「うん、ありがと!」
「しかし美味しそうだなあ」
久しぶりの出来立て手料理に目を輝かせてしまう。
「本当に美味しそうだ、片付けするぞいつき!」
秋も嬉しそうになっている様子。
食卓に並んだご飯を囲って、楽しく食べた。
暫くは、この楽しさを忘れる事はないと思う。
こんな風にみんなでご飯を食べるのは久しぶりだから。
「「ご馳走様でした!」」
「橘も由実も料理上手なんだな」
俺は正直な感想を述べた。
「まあね、良くやってたから」
えへへと、橘は照れた様子。
「私はほとんどなにもしてませんよ、橘先輩今度料理教えてください!」
「うん、いいよ」
「橘がうちに居る間は由実も来ればいいんじゃないか?」
「それもいいわね!そうしましょう!」
ぱあーっと目を輝かせて
「はい!そうさせていただきます!!」
「よぉっし、俺らは片付けしようか!」
秋が食器を片付け始めた。
「そうだな、橘と由実は先に風呂に入っていいぞ」
「うん、ありがとう。そうさせてもらうね。」
「みんなが来る前に風呂は洗っておいたし、ご飯の前にお湯張っておいたからもう入れるぞ」
先読みって大切だからね。
「先輩の癖に気が効くじゃないですか」
「いつも気配りしてんだろ、誰よりも」
「南野先輩から気配り取ったらなにも残りませんもんね!あはははは」
こいつは俺を馬鹿にするのが趣味なの?
「そんな事ないぞ、こいつは良いところいっぱいあるじゃないか」
秋のナイスフォローが入った。
「えー?例えばどんなところですか?」
「えっと、あの、ほら、色々ある…よね?」
「おいそれ以上やめやめろ、それは俺に効く」
「みんな仲良しだね〜」
と、笑いながらまとめてくれた橘に感謝。
「まあなんだ、早く風呂に行ってこい」
「うん、行ってきまーす」
「お風呂借ります!」
2人仲良く風呂に行った。きっと2人のお風呂シーンは楽園だろうな。
洗い物もひと段落ついて、ふと自分のスマホを見た。
メッセージが1件 2時間前
「こんばんは、北川です。
昨日は本当にありがとうございました。
今日は、何事もなく平和でした。
いつきくんのおかげです。
明日お時間ありますか?少し会ってお話ししたいです」
メッセージが来たことに嬉しさ満点だが
何故敬語なんだ…
昨日より距離感がある様に感じたが、文章ならそんなものかと、返信した。
「それはなによりです。
ごめんなさい、明日は予定があって難しいです。
日曜日はどうでしょうか?」
俺も敬語で返しちゃったよ。
すると、直ぐに返信が来た。
「わかりました。日曜日の2時くらいにアンカフェにお待ちしております。」
アンカフェのココアが美味しいので特に異論もなく、
「了解です」
と、だけ送って終わった。
約束を交わしたことに嬉しくなり、ポワポワな気持ちになった。
「いつき、俺は1回家に戻るぞ」
「おう、忘れ物か?」
「いや、風呂入ってくる」
「お、おん。行ってらっしゃい」
秋は自分の家に戻って行った。
女子の風呂は長い。1時間以上は掛かるだろう。
べ、別に覗こうなんてしてないもんね!
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〜一方その頃お風呂では〜
「由実ちゃんっていっくんといつから仲良くなったの?」
「えっと、最近なんですよね〜」
「え!そうなの!?」
家が近いからてっきり昔からなのかと思った…
「はい、私入学してすぐいじめに近い事されてたんです」
「由実ちゃんが?どうして?」
「私はそんなつもりないんですけど、男に愛想振りまいてるから〜とか、ありきたりな事で…」
「うわあ〜、それ伝統なのかしら」
「よくある事ですよね、男子も女子に嫌われたくないからって避けられる様になって…」
「まあそうよね、1人より多数に嫌われる方が普通嫌だもん」
この小さな女の子をみんなで寄ってたかって…あり得ない!
「それで2週間したくらいで、体育館裏で集団に囲まれて袋叩きされそうになったんです」
「え!?怪我は!?その前にそいつらの名前を教えて!!私がえいってやっつけてあげる!」
許せない!!
「あはは、それが大丈夫だったんですよ」
「どうして?」
事の顛末を話し始めた。