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風が通り抜ける街  作者: よしやる夫
1/16

全てはこの日から


風が楽しそうに、悪戯に吹く5月。

街で君に出会った。


風の悪戯か、神様の悪戯か。

それとも運命なのか。


「君に出会えてよかった」

この言葉で、全てが満たされた。


もし、1つだけ願いが叶うのなら…


「「君の側に居たかった」」



*****************


今年の春から高校2生となった。

俺は、南野みなみの 五軌いつき



今日も、小学生の頃からの親友の

東雲しののめ あき爽やかイケメンと

いつもの通学路を歩っていた。


「昨日見てたアニメがさ、急に波がザプーンって」

秋が昨日の深夜アニメの話をし始めてきて

「あ、それ俺も見た」

衝撃的だったので反射的に応える


「あれよくわかんなかったよなあ、キャラクター同士会話してんのに映像ずっと波だし」


「そうそう、まあ今期の名だたる迷作だから…」


と、まあこんな感じに男同士平凡な会話をしながら

高校生活を送っているのだが、秋が突然柄にも無い事を言い出したのだ。


「今日1日憂鬱だなあ」


普段なら絶対言わない様な事に驚きを隠せず、

「いや、お前…熱でもあるのか?」

何故なら、秋は真面目で何事にも真剣に取り組むような男なのである。生まれてこの方、秋のそんな言葉聞いたこともない。


「熱なんてないし、俺だってめんどくせえなあって思うことくらいあるよ」


「今世紀最大の驚きだぜ…あ、もしかして!」

皮肉も込めてニヤニヤと

「告白されすぎていい加減飽きてきたんだろ!」

と、冗談で言った。

高校に入学してから、女子からの呼び出しは当たり前だし実際そうなのでは?と思っているが…


「告白されるのは、誰でもいつでも嬉しいもんだよ」

と、照れ臭そうに笑った。

何このイケメン、眩しい。

なんだこの敗北感…


「俺も恋してえなあ」

と、心の声がぽろっと出てしまった。

それと同時に学校に着いた。


その時の秋の表情が曇っていた事も気付かずに。


それぞれ別々の教室に向かい、いつも通りの1日を過ごした。



******************



掃除も終わり、後は帰るだけとなったのだが


「南野先輩!」


ん、俺を呼ぶ女子の声!

「どうしたんだ!(イケボ)」


「今日一緒に帰りましょう!」

俺と一緒に帰りたいというこの小さい後輩は


西田にしだ 由実ゆみ


小柄で元気なこけしちゃんだ。


「俺を通さず秋に直接言えよ」

どうせ、秋先輩と仲良くなりたいんでしょ。

仲介役にされるのは勘弁だ。


「なんです?南野先輩と帰りたいだけなんですけど!」

プンスカプンってなってる可愛い


「1人で帰るのが怖くなったのか?」

おちょくっていたら、急に俺の両肩に由実の両手が乗り

背伸びで顔に近づいてきた。

「い、いえ…その、相談したいことが…」

と、小声で耳元に囁いた。


「そ、そうか、それならそうと早く言え」

少し驚いたが、由実は弾ける笑顔で

「では、校門で待ってますね!」

と、小さな手を振り去って行った。


あいつ悩みなんてなさそうなのに、秋と何かあったとか?

まあ、可愛い後輩の頼みだし聞いてやるか。



*****************


考えてもわからないことは考えても仕方ないので、素直に校門に向かうと楽しそうに秋と話してる由実。


なんだ、いつも通りじゃん。

その光景を見てふと考え込む。

秋は由実の事どう思ってんのかな、由実の事好きだったりして…


「いつき!何してんだよ!」

秋にこちらを発見され、呼ばれてしまった。

「お、おう」


「よし、久しぶりに今日は3人で帰るか!」

と、嬉しそうに少年の眼差しで歩き始める秋。


由実と2人で帰りたいなんて言える雰囲気でも到底ない。

由実の方に視線を向けると、困った様な顔でこちらに微笑んでいる。


「秋は今日、部活じゃなかったか?」


「それがさ、急に部活休みになったんだよね」


「それならそうと、早く教えてくれよ」


「本当ですよ!折角だし遊びに行きませんか?」

由実がそう言った時、秋の雰囲気変わった。


「いや、今日はみんなでまっすぐ帰ろう」

「やっぱり体調悪いのか?」

と、心配になって顔を覗き込むと暗い顔をしていた。


「大丈夫、とにかく今日は帰ろう」


「あぁ、そうだな」

恐らく何を言っても雰囲気を悪くしてしまうばかりか、小さな後輩がなんとも気まずそうなのでなんとかその場をやり過ごす事にした。

徐に口を開いた秋が

「そうだ、今日はみんな出かけないよな?」

強めの口調で聞いてくるもんだから

俺も由実も少し戸惑っている。


だか、ここまできたら素直に言うしかあるまい。

「悪い秋、俺たち約束があるんだ」

由美は少し不安な顔をしている。


「それって由実の相談ってやつか?」


俺も由実もどうして?って顔をしている。


「まあ内容も大体予想つくけど」

は?エスパー?

俺全く把握してないけど?


「俺の誕生日がもう直ぐだからってサプライズは要らないぞ」

驚きのあまり、黙っている我々を無視するかの様に秋は続けた。


「ちょっと、それ誰から聞いたんですか?」

え、サプライズで何かしようとしてたの?

見た目だけじゃないのね可愛いの。


「お前の考えてる事はわかるよ」

と、平然と言う秋に対し

「いや驚き通り越して怖えよ!」

間抜けなツッコミをした。


「とにかく、今日はダメだ」

真剣な顔で秋が俺に言う。


「今日のお前、変じゃないか?」

つい言ってしまったが、本当に変だ。すごく心配になる。


「いや、悪い。」

うつむく秋に、由実は

「秋さん、私、何かしちゃいました?」

泣き目で聞いてる姿はまるで小動物。


「そうじゃないんだ、ごめん」


謝る秋を見て、俺は何を言ったらいいのかわからなかった。

正しくは、何が起きてるのかわからなかった。

この時はまだ、思春期の悩みかな?なんて下らない事を考えてる自分に後悔するとも知らずにー。

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