二日目の朝
図書館内にあった巨大な魔法陣をソラが『術式解体』で破壊した後、ソラは散らばった本達の表紙を見て、選抜のごとく限られた本だけを手にとっていく。その本に関連性はなく、作者も魔法種も全てがバラバラだ。勿論、なんの突拍子もなく、集めているわけでもない。その全てが上位魔法のことが記された魔導書だ。中には魔導書を介さないと使えない魔導書もあるので魔導書収集は必須なのだ。
そんな魔導書選抜業者となったソラの背後に小さい影が一人。ミルク色の髪に純白のワンピースを着た、幽霊少女のルナだ。ルナは先ほどの巨大な魔法陣と言い、ソラの言葉と言い未だに現状について行けていない。
「……ね、お兄さまは結局私に何をしたの?あの巨大な魔法陣はもしかして私のーー」
「それは多分違うね。あの魔法陣はルナがああなった原因ではないだろう。あれはただこの世界に君を繋ぎとめておく為の魔法陣だ。ルナは魂魄の魔導書を熟読しているから知っていると思うけど、人間体と魂体の違いは分かるよね?」
「う、うん。魂体は実在する人と違って、放っておけば魂の魔力、生命力が漏れていずれ消える。けど、人間体は魂の生命力を漏れない様になっているから実在出来ているんだよね?」
さすがは何十年もこの図書館にいたことはある。ルナはソラの様な記憶能力を持つことなく、この図書館にある本の内容は殆ど頭に入っているらしい。
生者と死者の違いは魂がこの世に繋ぎとめられているか否か。瓶の中にある空気を密閉すればその空気はその中に滞在する。その中の空気を開放すれば目には見えないが、確かにそこにあった物は無くなる。つまり、繋ぎとめられている魂にはその魂の器が必要なのだ。
だが、ルナは違う。と言うよりも魂を留めておく身体が無くとも、この世界に魂体として留めておく術は色々ある。それにルナの愛読する魔導書、魂魄魔法の最終目的は魂を使い死者蘇生を果たすことでもある。当然、魂本体が無ければ果たせない。この世に留めておく魂魄魔法。
「……例えば、『魂の残留』とか。でも、ルナはこんなことは思いついていたと思うし、そもそもこれは歯車の一つでしか無い」
ソラの言う通り、ルナもそこまでは辿り着いていた。だが、そこまでだったのだ。幾ら探しても魂の残留魔法の痕跡となる魔法陣は見つからなかった。ルナがいる限り未だ魔法陣は展開されているはずなのに。
ならばどうして?そんな議論を何年も繰り返していたルナだったが、そんな議論は今日、漆黒を纏う少年によって破られる。
「この図書館に異常が無いと思えるのは当然だ。自分の身体が正常に稼動しているのに、異常に思うのはおかしいからだ」
……ん?と、理解できずにルナが疑問符を浮かべる。何故、図書館に異常が無いと思っていたのか、その答えを言われてルナの脳がついていけずに困惑する。ならば、ソラの言ったことはどう言うことなのだ。
「混乱するのも無理は無い。だけどもし、人工的に身体が作れてあったとしたら?」
ルナはますます話が見えなくなった。人工的な身体?それは魂を留めておく為の魔道具の様なものかとルナは想像する。だったらそれは何処にあるのだ?
「ああ、それはこの建物そのものだよ」
………へ?
動揺して声が出なかった。ソラが言うには、この図書館内全てが結界になっており、魔法陣が仕組まれていたのだと言う。だが、『魂の残留』は魔法陣を発動している間術者の魔力は削がれていく筈だ。だが、術者の魔力なくこの時までルナが存在してこれたのか。
それは、この図書館の本棚の構造にある。地下を含め、この図書館は円柱型に内装が作られている。その本棚、地下から二階までで、巨大な魔法陣が作られている。具体的には天井から見なければわからないだろう。だが、ソラはその記憶能力で図書館内の構造を把握し、起動した魔法陣をを解体したのだ。
魔法陣には一つの魔法陣に一つの魔法というのが定跡だ。複数の魔法を使用する場合は複数の魔法を使用するか、複合させ巨大魔法陣を使用するかが、主な使用方法である。だが、ソラが解体した魔法陣は前者後者のどちらにも当てはまる方法だった。
魔法陣を展開するのに位置の差は関係ない。これを利用した魔法陣だとソラは言う。本棚の構造は一階一階に魔法的な意味がある。計三つの魔法が図書館にかけられている。
一つは魂を留めておく『魂の残留』、二つは外魔素を吸収し、魔力に変える『変換魔法』、三つはこの図書館を正常だと理解してしまっていた原因である『精神魔法』。『変換魔法』で三つの魔法陣を展開し続けたことから、かなりの魔力が元々この魔法陣にかけられていたことがわかる。
持続の魔法陣は事前に込められた魔力が強いか、術者が継続して魔力を与え続けることで発動時間が大きく違う。この場合は前者であるが、この時代まで継続されたことからかなりの魔力を事前に消費していたはず、それは人一人分では払えないくらいに……
「……ッ!」
自分の魂にそれだけの代償がかかっていたこと、ルナが自分を嫌悪するのにそれは十分すぎるきっかけだった。ならば、自分はこの数十年間、何人もの人の魔力を食ってここまで生きてきたのか。そんな嫌悪感がルナを支配する。
「……ルナは悪くは無い」
その言葉でルナがそれだけ救われたか。だが、決してルナから罪悪感や嫌悪感が抜けることは無いのだろう。ソラはそのことを知っているのか、その背中からは分からない。ソラは相変わらず魔導書を漁り続けているが続けて言う。
「この魔法陣が誰によって作られたのかは分からない。だが、一つ言えることがある。悪いのは全部、この世だ。」
その一言で、その一瞬で空気が変わった。ソラのその背中が、怒りを、憎悪を語っていた。さっきまでの救いが嘘のように引いていく。血の気が引いていく感じがする。ルナは知らない。ソラを。
だから、ルナはソラのその怒りに共感すこともできないし、共有することもできない。昨日会ったばかりだけじゃない。その怒りは憎悪は深く、深淵を覗くような絶望に似た何かを感じさせた。
「あ、ルナ。コレの破片を探してくれないか。捜査魔法でも確認できなかったから期待はできないけど」
おもむろにソラが振り返り、口を開く。ビクッとルナが肩を震わせるが、突如先ほどとの違いに気づく。その言葉にはさっきまでの深淵を覗くような絶望的な印象は無くなっていた。
ソラがコレと指していたものは、彼の人差し指と中指に挟まれていた。それは先ほど魔法陣を解体する前にルナがソラに渡した色彩色に変わる魔導書、その破片だった。その破片は今もなお魔力を帯びているのか、赤から青に青から黄に色彩に変わっている。
「……ないわ。それ、お兄さまの魔力を受けてそれしか残ってない。お兄さまが起きる前に探したけどそれしか見つからなかったから……」
「……まじか……」
ソラは露骨にがっかりする。何か破片を使って実験でもしたかったのか、今まで止めなかった魔導書漁りの手を止めていた。
「通りで魔法と能力両方の『物質探知』が引っかからないわけだ。物質が時間経過で変化したわけじゃなくそのまま消滅したのか……」
それに相槌をつくように、ルナが何回か頷く。再びソラが手を動かし、魔導書漁りを再開する。が、あらかた魔導書の収集は終わったのか、魔導書を五冊ずつまとめている。まとめ終えるとどこから出したか、細い縄をその手に持ち、魔導書を結ぶ。
そして魔導書を結び終えると再びどこへ行ったのか、その場から消失してしまった。魔法には上級空間魔法に『空箱』と言う、魔力で作った空間に物質を入れ、保持する魔法があるが。ルナは勝手にソラのそれを『空箱』と思惟する。
ソラはルナが『空箱』と結論づけた空間系能力『空間虚構』(本来より開ける空間が小さくなっているが、念には念を、と言うことで能力を使った)に魔導書類を入れた後、その場で起立し、軽い伸びをする。
伸びをしたままルナの方に向くと、
「あー、ルナもほかの魔導書がいるなら言ってくれ」
「……へ?」
何かおかしい。ルナが外に出れないとソラは知らなかったっけ。昨日から今日までの記憶を思い返すルナはやはり自分がどこかの話で言ったことを思い出す。だが今、ソラはなんと言ったか。ルナも?自分は出れない筈なのに、ソラがそんなミスをするとは思えなかった。
「……あ!」
考え無くても気づくことだ。少し前、ソラが魔法陣を解体して、ルナを縛っていたものが解けたのだ。ならばルナは縛られていたこの図書館から抜け出せるのは自然の摂理の様なもの。
だが、今度は少し考えて気づく。魂はこの世に留まるためにはいくつかの方法はあるが、あの即興で出来ることは限られる。例えば『魂の残留』魔法陣に事前に魔力を通すか、継続して魔力を注いでいる事で魂があの世に行くことを止める魔法だ。
つまり、今ルナがこの世界にしがみついているのは、ソラが魔力を与えているから。これまで何人がルナの魂を維持するのに必要な魔力を食ってきたか。それをソラは一人でやっているのだ。
確かに一日、二日は一人分の魔力でどうこう出来るかもしれない。だが、一週間、一ヶ月も一人の魔力でどうにか出来るとは思えない。第一、ソラがそこまでルナの面倒を見てくれるとも限らない。二日か三日、ソラは常人よりも遥かに魔力量が多いから一週間ほどか。ルナは孤独になることに躊躇いはない。だから心の準備なんてとっくにできていた。
だが、そんな孤独の運命をソラは少し怒り気味に吹き飛ばした。
「魔力は最小限、一日分の魔力は十分の一ほどの消費でいい。ルナが心配しなくても、僕は君が嫌だと言うまでは面倒を見るつもりだよ。そのうち魔石があれば電池のように充電交換式の魔石で魔力供給をできるようにするさ」
充電やら電池やらは地球の物質がルナに通用するはずもなく。ルナにはソラが何を言っているのか所々分からなかったが、一番ルナが心配すべき場所は決まっている。
「……本当に
……本当に私を一人にしない?」
確認とは違う。それは願い。ルナが求め続けた希望であり、夢。それがあれば自分は一生後悔はしないだろうと言う願いの表れ。ソラは少し目を細めて、作り笑顔のような顔をした。その笑顔は歪で、ソラの悪性に蓋をする為だけに作った。いわば、お面の様な飾り物だった。
悪意など無かった。だが、ソラは答えなかった。ルナが一人にしない。と聞いてきたのに対して。ソラは無言で作り物の様な笑顔を返しただけだった。そこに悪意など存在しない。ソラは嘘は言っていないだろう。ルナの面倒を見ると言った以上、それをソラが出来ることは実現させるだろう。
だが、それはルナがそれを拒絶するまでなのだ。それを、近い未来にでもソラのことを拒絶するのを予知しているかの様だった。
「無いならもう行くよ。こんな閉鎖空間にいたら心まで曇ってしまうよ」
ルナはそれをソラが言うのか、と思う。ソラは片手を上げて半ば降参のポーズ。ルナが無言だったからか、魔導書はもう散々と言うサインなのか。
と、言うか、
ルナは思考を切り替える。ソラが一緒にいてくれることで頭がいっぱいだったが、ルナはこれから何年、何十年もいたこの図書館から出るのだ。そう、外に出るのだ。思い焦がれた外の世界だが、いざ出るとなると不安が脳をよぎる。
「……心配はしなくていい。君を見えるものは僕と多分、もう一人いるが、一般人には見えない。あ、あと、魔素操作はできなくなっている筈だから、そこは気おつけるんだ。よし、行くよ」
外へ出るにあたり注意。そして安心させる様にルナに言うと、ソラはルナに片手を突き出す。握手と言うよりは横並びで手を繋ぐ様にルナはソラの手を握る。
すると、次の瞬間。視界が真っ白にーーーーー
「ーーーッ!?」
「大丈夫だ。ゆっくりと感じると思うのは仕方がない。側から見れば一瞬だが、体感しているこっちはゆっくりになってしまうのがこの能力の性質だからね」
視界が真っ白に染まって、体感五秒ほど。景色が室内から明確に変わったことを理解したのは、三秒ほどかかった。
以前視界は真っ白だが、ソラが発した能力の光では無かった。それは陽の光、眩しく照りつけるこの世界の太陽。肌に感じるのは暖かい風。
…………外だ。
言葉が出ない。あの図書館とは色とりどりの色彩が真っ白な視界から浮かび上がってくる。例えば、行き交人々。例えば、屋台に並ぶ果物や物品。例えば、色とりどりの民家、宿屋、ギルド、図書館でさえ。中と外ではこんなにも違う。そう実感した。図書館から見えていたはずの空でさえ、外からは新鮮に感じる。
ルナが外へ出たことに感動し、もう目元に涙すら浮かばせそうな表情をしたその時だった。
図書館と言う。庶民にとってあまり需要がないこともあり、あまり人通りが少ない。その為、大通りから走ってくる人影がより目立って見えた。
ルナよりも煌びやかな、金髪に白の制服の様な服を着込んだ少女だ。年はソラと同じくらいだろう。ルナはその少女に目をやる。何処と無く嬉しそうに走ってきた少女は、ルナとソラの前で止まると、息を切らして膝に手をついた。
「はあ…ふう…いやあ、ソラさんいつの間に外に出たんですか?私朝から結構待ったんですけど出たとこ見えなかったですけど……え、その少女誰ですか?」
その少女は図書館に来たソラと行動していた。自称商人少女シエルだった。ソラはシエルに対して、呆れた様にため息をつく。
「君はさ、まあいい。まあ一つずつ答えていこう。まず彼女はルナ。まあ君にわかる様に言うと、幽霊かな」
ユウレイぃぃぃぃぃぃ!?と発狂じみた悲鳴をあげるシエルだが、ソラはあまり大声をだされたくない為嫌な顔をする。一方、ルナは至って正常に、そして優雅に貴族のご令嬢が客人に挨拶するかの様に両手でスカートの裾を掴み、片足を斜め後ろに下げて軽く頭を下げる。
「はじめまして、私はルナと申します。この度、お兄さまにこの身をもらって頂き現在では、お兄さまが居ないとこの身が消えてしまう体になってしまいまい、お兄さまと共に行動させていただかせてもらっています。以後お見知り置きを」
おお、その挨拶で驚いたのはシエルよりもソラだった。様に見えた。実際ソラは驚いていた。ソラがルナと初めて会った時は彼女はまともに会話が出来るが、たどたどしさを感じずには居られないほどだった。
ルナが挨拶するとシエルは半ば反射的に軽く頭を下げてお辞儀をする。真っ正面シエルを写すルナの青い瞳はソラに似ていて、だが、ソラよりも浅い。
シエルはルナの青い瞳を含み、その整った顔を眺める。あまりにも綺麗で見惚れてしまう。歳は十歳ほどだろうか、それにしては言葉使いや礼儀がきちんとしているなあ、と。シエルは見た目十歳ほどの少女に対し感心していた。
と、そんなことよりも。シエルは思考を戻し率直に言う。
「そのう、ルナさんって幽霊なんですよね。精霊とかではなく」
「うん、私はお兄さまの魔力で存在を保てているの。精霊じゃないけど、従魔に近いかも?」
疑問形なのは自分の回答に自信が持ててないから。ルナはおもむろに空に視線を向ける。この説明であっている?と言う意味だ。何年も魂魄魔法の魔導書を読んでいたルナでも自分が今どの様な状況にあるのか分からなかったらしい。ソラは軽く目をつぶって首を縦に一回。
シエルは何となく理解をしようとしているのか手を顎に当てて考えているポーズをとっている。それにソラはお構いなく次に話を進めようと口を開く。
「じゃあ次。僕たちがどう出てきたかだけど、それは転移系の魔法である『転移』だ。」
転移魔法、『転移』はソラの『瞬間移動』の能力とさして変わらない。時間に多少のラグはあるが、特定の場所から場所までを瞬時に行き来できる魔法である。無論ソラの『瞬間移動』は現在弱体化中の為使い物にならい。その為、ソラは魔法『転移』で移動したのだった。
そこで幽霊少女のルナが疑問を抱く。
「あれ、転移魔法なんてあったっけ?」
そう、ルナの言う通りあの地下魔導書図書館に転移魔法の魔導書はなかった。ルナでも知らない魔法のことは分からない。だが、ソラは魔法を組み合わせることで図書館にはない情報を組み合わせた魔法の派生系として、使用できる段階まで調整を施した魔法だ。
「まあ、実用段階にできたのはこの一つだけどね」
ソラが方を下ろし、諦めのジェスチャーをする。そもそも、魔法というのには相性があるのだ。火、水、地、風を基とする、四大属性とそれから派生した属性、又は四大属性とは外れた無属性とその派生がある。ソラはその四大属性の全ての適性を持っていたが、無属性の適性をあまり持ってはいなかった。かという転移魔法も元を辿れば無属性、ソラの見立てでは百から二百辺りが限度だった。
あらかた、この状況に収集がつき、シエルは頭の中で情報を整理する。数は少ないが、情報の内容が濃かった。先ず、ソラが見知らぬ少女を連れて突然転移魔法で外に現れたところから。幸いソラの能力のお陰で目立つことはない。ルナも幽霊だから他人に見られることはない。
そこでシエルは気がつく。ルナは幽霊であって、精霊ではない。だが、通常可視化の魔眼の様にイレギュラー的な何かを持っていない限り、人間が視認できる魔力量を有していない幽霊や纏っている魔力が濃すぎる精霊なんかは人間に視認できないのだ。
「ソラさんはどうしてルナさんが……?」
「……さあ?」
シエルの疑問に対してソラの答え?は即答だった。だが、その答えはシエルの期待とは外れ、ソラはふざけた調子に言う。これに限ってはシエルとは違うベクトルの例外と言えるだろう。魔導書を長年読んできたルナもあの魔導書達から派生系を作り出すことができるソラでさえ、これは分からなかった。いや、現状あの図書館だけの情報だけでは不足なのだ。この世界の不明点が多すぎる。
「まあ、所詮は階級主義の王国、その国民用に落とされた図書館だったから情報には期待は薄かった。地下魔導書図書館には驚いた、がそこにも疑問が連なる。現段階ではやはり不明点が多すぎるだよね」
魔導書とは本来なら一般人が目にしていいものではない。それは勿論国レベルの事情であり、こんな誰でも読めるところに置いていい代物ではないのだ。隠し空間の様なスペースにあったため人に読まれる心配はなかっただろうが、誰がどの様な事情で置いたかまでは知れない。ソラの言う通り不明な点が多すぎるのだ。
図書館には地下だけではなく全体をめぐる様に魔方陣が貼ってあったことからルナを閉じ込めようとしていたことは分かるが、そこに脱出のヒントを与える様な魔導書を置いておく理由はないのだ。
ソラは保留というよりは半分諦め気味で図書館から出てきたと言ってもいい。魔法百パーセントで出来ている以上、今のままでは情報不足だ。
ソラはシエルの質問へ回答を終えた。ならば次に動く。
「シエル、僕が言っていた人物は見つかった?」
そう、ソラはあらかじめ次に動けるよう先の一手を打っていた。内容はシンプルだが困難ではある。人探し、ある人物の所在を特定して報告させる。そしてそれは現在ソラにとって重要な物を作れる者だ。
「ええ、あとはソラさんの詳細を記入するだけだそうですよ」
頼んでいたのはこの世界の人間である証拠。いわゆる身分証明証みたいなものだ。昨日シエルから聞いた情報では国を出入りするのにも必要でありギルド登録の際にも必要らしい。
「そうか、それじゃあ案内してくれ。もう少し情報が欲しい。さっさと終わらせて情報収集に戻りたい。行くぞルナ」
「ん、分かった、お兄さま」
「……以外とせかっちですね、ソラさん。分かりましたついてきてください。あまり遠くはありません」
そう言ってシエルは先頭を歩く。ソラが続き、ルナがソラに雛鳥の様にしっかりとついて行く。不穏という言葉が見つからないくらい清々しい朝の空の下、ソラたちは進んでいた
次回も完成次第お届けしますう
ソラの主人公無双までしばしお待ちください