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セクロスのできるVRMMO ~外伝:クリスマス黙示録  作者: curuss


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10/13

漢たちのキャロル

「隊長! 左翼が! 左翼が突破されそうです!」

「なっ――リンクス! リーンクス! 左翼へ弾幕! なんとかしてくれ! ――予備戦力再編は?」

「――いける! ――あとは動きながら準備して! 皆、でるよ! ――持ち堪えてみせるよ、タケル君! 左かい?」

「すいません、右へお願いします! 右の方がヤバくて! ――左用に隊を作るぞ! ――カイ達から連絡は?」

「まだです! 呼び出しますか?」

「……いや、連絡を待とう。カイなら任せても大丈夫だろ。シドウさん達も一緒だし」

 そう答えた『RSS』の指揮官――タケルの顔は、いまにも泣き出さんばかりに追い詰められている。

 なぜか予想の数倍は激しい戦いを強いられ、なおも敵性リア充の戦意は旺盛だ。


 ……意味が解らない。どうしてこうなった?

 襲撃と共にリア充どもは、蜘蛛の子を散らしたかのように退散するはずだった。

 あとは散発的に立ち向かってくる御節介な(正義感の強い)奴を対処しながら、のんびりと『噴水広場』の占拠に取り掛かればいい。

 そんな予定だったし、事前の協議でもすんなりと了承された。

 しかし、現実には大苦戦だ。

 作戦の第二段階を開始どころか、第一段階である『噴水広場』の占拠すら危うい。

 クリスマスだからと浮かれ騒ぐリア充の番どもに、目に物を見せてやりたかっただけ。

 なのに、なぜ?


 テレパスやアリサと他数名の女子(タケル観察の専門家)でなくとも、容易に彼の落胆は読み取れただろう。

 嗚呼、彼は幸せそうにクリスマスを送るリア充どもが、妬ましくて妬ましくて堪らない()()なのに!

 しかし、苦戦は必然とすらいえる。

 童貞(彼ら)は理解していなかった。いや、理解不能だったのだ。

 イルミネーションに彩られたクリスマスツリーを襲撃するという本質を!


 実のところクリスマスツリー襲撃は、彼らが思うほど容易な話ではない。

 なぜならリア充のメスは――とくに(カップル)の片割れは、クリスマスツリーを愛しているから。

 それは偏執的といっても過言ではない!

 (カップル)のオスに抱っこでもされ、キラキラでピカピカなイルミネーションに彩られたツリーならば……飽きもせず何時間でも眺めているほどだ!

 この時の表情も『頭がフットーしそうだよおっっ』であり、間違いなく事実である!

 そんな聖域を侵されしリア充のメスは怒り心頭!

 採算度外視で反抗してくるし、必然的にリア充のオスも八つ当たりで参戦してくる!

 ……これが目の前で繰り広げられる乱戦の原因だ。


「奴ら……死狂いしてやがる! こんなことならリルフィー達の呼び戻しは慎重に……安全策を取って……大回りさせて……くそっ!」

 身震いするような悔しさのあまり、思わずタケルは心中を口にしていた。

 ……仕方のない側面もある。間違いなく絶体絶命だ。

 今回ばかりは援軍を――『アキバ堂』連合の参陣を期待できない。

 彼らは有明で決戦の予定だ。ログインしているメンバーも数えるられるほどだろう。

 絶望! そして撤収しかないのか?

 敗北? 栄誉ある『RSS騎士団』が……リア充相手に?

 そんな思いなタケルに素っ頓狂な報告が届く。

「隊長! お、お客さん?だ! えっと……とにかくッ! お客!」

「はぁ? 客? なんなんだよ、いったい! いまは戦争中だぞ! お客なんて――」

 と怒鳴り返しながらタケルが振り返ると――


 世紀末が! 圧倒的近未来的盗賊(世紀末)ルックの人物が手を振っていた!


 それはギルド『モホーク』が(マスター)、モヒカン!

 先日、『RSS』と大戦争を演じた迷惑ギルドのリーダーその人に他ならなかった! 

 意外な人物にタケルが呆気に取られていると、さらに驚くべきことを宣う。

「よう、タケル! 派手にやってるな! 俺達も混ぜてくれよ!」

「ど、どうしてお前らを仲間にしなきゃいけないんだよ! それに! そっちの奴! そっちの奴もモヒカン(お前)のところのメンバーか?」

 ついでとばかりに、隣の男へタケルは喚くも――

「い、いや! おれた――我々はッ! 我々は義挙を前にぃ! 同志『RSS騎士団』とぉ! 志を同じくぅ! していると――」

 ……さらに事態は混迷を迎えた。

「だぁーっ! 演説は止めろ! 忙しいんだよ、俺は! 簡潔に! 簡潔に答えろ!」

「えっとー……俺達は『黒巾党』といいましてぇ……あー……仲間に入れて下さい!」

 よく見れば男は黒い布を頭に被り、さらには腕へも巻いていた。

 おそらくは中国の『黄巾』に習ったのだろう。色が黒なのは『RSS』のギルドカラーを配慮した結果か?

「ギルド加入希望なら後にしてくれ! それからッ! モヒカンッ! 笑うんじゃねぇッ! だいたい、どうして俺らが『モホーク(お前ら)』と共闘なんだよ! 敵同士だぞ、俺たちゃぁ!」

「えーっ! ケツの穴ちいさいこと言うなよー。こんなお祭り、参加するしかないだろー? 混ぜてくれよぅー! それに……こういう時は『心に棚を作れ!』だぜ? 名言にもあっただろ?」

「そのクネクネするのを止めろ! 馴れ馴れしくするな! そもそもお前らが先に――」

 しかし、タケルは最後まで言い終えることができなかった。

 突然にモヒカンが凄みを見せたからだ。

「――いいんだぜ、俺達は? いまから『RSS(お前ら)』と決着をつけることにしても? どんな形でも……勝ちは勝ちだしな?」

 そして確かに拙い。モヒカンの言う通りだ。

 ただですら苦境の現在、さらに『モホーク』まで敵へ回れば敗北が確定する。


 嗚呼、選ぶべきは屈辱の勝利! それとも誇り高き敗北か!

 さしものダース・タケル(悪落ち主人公)も苦渋に顔を歪める!


 だが、絶体絶命な最後の寸前、救いの手は意外な人物から伸ばされた。

 ……なんとモヒカン自身からだ。

「ならこうしようぜ? 俺達は勝手に『RSS(お前ら)』の左翼で暴れる。あくまでも自発的にな。あー……そっちの黒いバンダナの兄ちゃん達は右翼だ。なぜか俺達がお互いに戦わないのは……まあ……『不思議なことが起こった』とでもしろよ」

 あなや! なんたる邪悪な囁き声!

 不自由な二択をみせて、第三の手を提示する。これぞ詐欺の常套手段!

 けれどもタケルは決めねばならない! なぜなら勝者は、すべからく選ぶ!

「か、勝手にしろ! 壊滅しそうになっても助けやらんからな!」

 タケルの罵りに、モヒカンと黒巾の男は笑顔を見せる。

「ゆ、ゆるされた! 我ら黒巾党! 参陣を許されたぞー!」

 その奇妙な叫びは……戦いが新たな局面へ突入することを意味していた。


 ………………むせる。

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