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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第94話

「出て、来いよ」

 カーチスの合図で、待機していたトリスとクラインが、彼らの前に、颯爽と姿を露わにしたのだった。

 二人の姿を、見せたことにより、諜報員たちが、唇を噛み締めている。


「ようやくか」

 首を回しながら、トリスが漏らしていた。

 その隣で、苦笑しながら、クラインが歩いている。

 僅かに、リーダー格の男の声音が、低くなっていたのだ。

「俺たちは、お前たちの企みに、引っ掛かったようだな」

「でしょう」


 愉快そうに、カーチスの頬が緩ませている。

 諜報員たちの顔からは、一切の油断がない。

 気配が、研ぎ澄まされていたのだ。

 それでも、トリスたちは動じない。

 いつもの表情だ。


「俺たち、七人に、五人で、どうするつもりだ?」

 まだ、まだ 諜報員たちの余裕が、絶たれていなかった。

 数では、断然有利だった。

「別に。ただ、捕まえるだけだよ」


 諜報員たちの気配に、誰一人として、怯んでいる者がいない。

 平然と、事を構えていたのだ。


(なぜ、ここまで平気でいられる? バカなのか? できるのか?)


 今まで見たことがないパターンに、微かに、心が揺らぎ始めていたのである。

 けれど、それが表情に、出ることがない。


「慣れているようだな」

「昔から、諜報員が、うろちょろしているからね」

 カーチスに成り代わり、トリスが口を開いた。

 視線の矛先を、トリスに傾ける。


 何度も、諜報員に出くわしていたのだ。

 そして、それを鴨にして、遊んでいたのである。

 積み重なった経験が、あったのだった。


「なるほど。一応、聞くけど。リュート・クレスターを知っているのか? ま、お前たちの様子を見ると、知っているように、思えるけどな」

「知っているよ、友達だからね。でも、俺たちは、友達を売るようなことは、しないよ」

「俺たちとしては、売って貰えると、助かるんだけどな」

「残念」

「報酬は、いいぞ」


 禍々しい笑みを、携えていた。

 だが、誰一人として、トリスたちの表情が変わらない。

 僅かに、リーダー格の男の目が細められる。


「報酬よりも、友達かな。それに、お金は、自分でも、稼げるし」

「そうか。では、まず、お前たちの実力を、溜めさせて貰おうかな」

「いいよ」

 余裕綽々で、笑っているトリスだった。

 それを合図に、カーチス、ブラーク、キムが距離をとった。


 三人を相手にしようと、諜報員四人が動き出す。

 残りの三人が、トリスとクラインに向かって、駆けていった。


 村の複数の場所には、誘き出して、戦えるような、罠が仕掛けてある場所が、いくつも点在していたのだ。

 その一つが、ここだった。

 勿論、追いかけてきた教師や、諜報員を仕留めるためにだ。


 リーダー格の男が、あっと言う間に、トリスたちとの距離を詰めていく。

 無駄のない、見事な動きに、惚れ惚れとするトリスだった。


「油断するなよ。さっさと片づけるぞ」

 遊びそうなトリスを窘めた。

 できそうな男に、仕掛けた罠の実験が、してみたと言う顔が、ありありと描かれていたのである。

 できそうな諜報員の男に、遊んでいる余裕はないと、クラインが踏んでいたのだ。


 ここに、メンバーであるリュートがいない。

 いつもよりも、戦力が落ちていたのだ。

 平坦な顔を漂わせても、それなりの腕があると、推測していたのである。

 それに、自分たちは、オラン湖に戻る時間も、迫られていた。

 長く、遊んでいる暇がない。


「少しぐらいは……」

「ダメだ」

 有無を言わせない、クラインの顔だ。

「……わかったよ」


「ほぉ。俺たちが、あっさりと、やられると思っているのかな」

 笑いつつも、眼光の奥に、怒りを灯している。


 リーダー格の男が、ターゲットをいつの間にか、クラインに変え、持っていた長剣で斬りかかっていた。

 素早い動きに、クラインが舌打ちを打つ。

 けれど、魔法でブロックし、寸前のところで、攻撃を交わした。

 無駄のない、スマートな防御。


 感心しているリーダー格の男だった。

 まさか、ここまで、いい動きをみせるとは思ってもいない。

 リーダー格の男の危険度が、上がっていった。


「だったら、これは、どうだと」

 さらに、攻撃のスピードを上げていく。

 巧みな攻撃も、忘れない。

 それを、スレスレなところで、クラインが避けていた。

 息も、できないような攻撃だ。


 段々と、詰められていくクライン。

 それでもなお、クラインの目が、死んでいない。

 繰り出す攻撃を交わしながら、クラインが、慣れたように背後にジャンプし、距離を開けていく。

 常に、一定以内の距離が開くようにしていたのだ。


 クラインとリーダー格の男の間には、大きな岩や、大きな荷物が入っていたような箱が、幾重にも、ランダムに積み重なっていた。

 微かに、クラインの息が上がっている。

 ニヤリと、嘲笑しているリーダー格の男だった。


 突如、リーダー格の男が、大きな岩の上に飛んだ。

 岩の上に、足をつけようとした瞬間、顔色が褪せていく。

「!」

 ちぇと吐き捨て、無理やりに、前ではなく、後方へ下がっていった。

 その途端、大きな爆音が、鳴り響いた。


 音に驚愕し、仲間の諜報員たちが、視線を巡らせる。

「気をつけろ。この辺一体に、罠が仕掛けられているぞ」

 リーダー格の男の叫び声に、仲間の諜報員たちが、若干、身体を強張らせていた。

 罠と言う響きに、周囲を窺う。


 一瞬の隙が、でき上がっていたのだ。

 トリスたちは、見逃すはずもない。


 リーダー格の男は、仕掛けられた罠に気づき、一か八かで、さらに速度を上げ、後方に逃げたのだった。

 爆風の勢いも借り、思いの他、後方へ飛んでいた。

 襲い掛かる暴風を防御しつつも、警戒も怠らない。


 さらに、クラインと、リーダー格の男との距離が、開いている。

 やるなと言う眼差しを、携えているクラインだった。


「甘く見ているぞ、やられるぞ。敵だと思って、本気でやれ」

 間髪おかず、仲間たちに声をかけていった。

 リーダー格の男の言葉に、目の前にいるのが、生徒だと言うことを、忘れる諜報員たち。

 いつも、対峙している敵だと、咄嗟に、認識を変えていく。


「時間、もっと、早めた方がいいな」

 二人を相手にしながら、トリスがぼやいていた。

「これを仕掛けたのは、お前か」

 二人の諜報員を相手にしているトリスを、見ることはない。

 リーダー格の男が、見据えているのは、油断もなく、身構えているクラインだ。


「正解。感想を、聞かせてください」

 二人を相手にしながら、飄々とトリスが喋っていた。

 二人の諜報員は、余裕ありげな姿にムッとしている。

 自分たちが、格下のように、見られていることに。


「上手いな。下手したら、危なかった」

 素直に、賞賛を贈っていた。

 気づくのが遅れていたら、大きなダメージを、与えられていたからだ。

「ありがとうございます」


 短剣が飛び出したりする音や、呪文が発動している気配を、あちらこちらから感じているリーダー格の男。

 カーチスたちを、相手にしている仲間の四人が、トリスの罠に、いくつか掛かっていたのだ。


(バカどもが!)


 脳裏に、撤退と言う文字を掠めたが、瞬時に、捨て去っていた。

 ここまでコケにされ、逃げ出す訳にはいかない。

 意識を、クラインだけに、注ぎ込む。


 二人を相手にせず、一人ずつ倒すことに決めたのだ。

 指定されたクライン。

 当の本人は、参ったなと言う顔を覗かせ、いつでも、発動できるような態勢を取っていたのだった。


「行くぞ」

「どうぞ」


 互いに、向かっていく二人。

 鮮やかな連係プレーを駆使し、トリスたちは、諜報員たちを、誰一人として逃がすことなく、捕まえることに成功した。

 トリスとクラインは、相手にしている彼らを、ひと集まりにし、トリスが仕掛けた罠と、クラインの魔法でダメージを与え、トリスが一瞬の隙を狙って、一人ずつ拘束していき、三人を捕まえたのである。




 それから、しばらくして、四人を相手にしていたカーチスたちも、諜報員たちを拘束していったのだった。

 傷だらけのカーチスたち。

 その中でも、キムが、一番傷を受けていた。


「大丈夫か?」

 気遣わしげに、トリスが声をかけた。

「疲れた」

 その場に、座り込む。


 ヘトヘトなキムに、クラインが首を竦めていた。

 拘束したとは言え、油断はしてはいけなかった。


「最初から、力が抜けていたぞ」

 戦闘の初期の段階から、キムの動きが鈍かった。

 それを、ブラークが怒っていたのである。

「だって、疲れているのに、こんなことしようと、するから」

「関係ない。それと、気を抜け過ぎだ。立ち上がれ」


 窘めているブラークに促されても、立ち上がれない。

 諜報員を見定めた瞬間から、キムには、やる気がなかったのだ。

 カーチスたちが、やる気になっていたので、渋々、付き合っていただけだった。


 拘束されているところから、逃げ出そうとしている諜報員たちを、冷静に見下ろすクライン。

 けれど、バドが開発した拘束から、逃げることは、不可能に近い。


(バドが作ったものだから、無理だと思うけど……。ブラークが言うように、少し安心過ぎるかな)


 呻き声で、抗議の声をあげている。

 だが、口も塞いでいるので、何を言っているのか、わからなかった。


「そういえば、そろそろ先生たちも、来ることじゃないかな」

 辺りを、クラインが窺っていた。

 教師や、警備員たちが、来る気配がない。


 カーチスたちと、目配せをしたトリスたちは、近くの店の人に、教師や警備員たちに知らせるように伝えていたのだった。

 勿論、何があっても、出てこない方がいいと、忠告も添えて。


「置いておくか」

 戦闘も終わり、面倒臭くなってきたブラークが提案した。

「ダメだろう。一応、引き渡さないと」

 トリスの意見に、カーチスたちが同意した。


 教師や警備員たちが、来るまでの間、先ほど、声を掛けまくっていた、女の子たちの話をしていると、ようやく来たのだった。

 諜報員たちの前で、トリスたちは、誰一人として、名前を呼び合っていない。

 自分たちの名前を知られないように、互いに、名前を呼び合っていなかった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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