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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第91話

 意図も簡単に、リュートが呪文を放つ。

 目映い輝きが、手のひらに、集まっていく。


 食い入るように、眺めているカレンだった。

 何の躊躇いもなく、湖に向け、投げ放つ。

 唐突に、爆風を上げ、水しぶきが辺り一面に、散らばっていった。

 その衝撃により、ようやく魔法科の生徒たちが、リュートの存在に、気づくのだ。


 周辺は、リュートの存在に、ざわつき始める。

 けれど、リュートも、カレンも、意に返さない。

 平然としているリュートは、いつも通りの行動だったが、カレンは、見事な精霊呪文に、釘付けになっていたのである。

 ざわつきよりも、今は精霊呪文の会得だったのだった。


「簡単だろう」

 何の説明もない。

 徐々に、カレンは、顔を引きつらせていく。

「やってみろ」

「説明もなしで、できる訳ないでしょ!」


 咎めるような声音に、何でだ?と、理解に苦しむ。

 リュート自身、息をするように、魔法を自在に放つことができたのだ。

 だから、できない気持ちが、理解できない。


「見て憶えろ」

「無理。懇切丁寧に、説明をしなさい」

「クラインからは、ある程度、教えて貰っているんだろう?」

「えぇ。説明して、すぐに、消えてしまったけどね」


 逃げてしまったクラインに、憤っていたのである。

 胡乱げな顔を、リュートが覗かせていた。


「だったら、余計なことは考えないで、呪文を唱えて、発動させるだけだ」

「その経緯を、しっかりと説明しろって、言っているのよ」

「面倒だな」

「面倒でも、やるの」

 有無を言わせない顔だ。


「……わかったよ」

 懇切丁寧に、イメージから説明し、呪文のプロセスを語っていく。

 カレン以外にも、遠くいる生徒たちも耳を済ませ、リュートの説明に、聞き入っていた。

 誰一人として、聞き漏らそうとしないように。

「……以上だ」


 どうだと、胸を張っている。

 そんな姿が、無性に苛立つカレンだった。


「何か、質問は」

「ないわ。とにかく、やってみる」

 ムカつくほど、理解しやすい解説をしてくれたのだ。

 できない気持ちを、理解することができないが、とても無駄のない、シンプルな説明をしてあげたのだった。


(ホント、変わらない天才ぶりね)


「何よりも、大切なのは、精霊の声に、耳を済ませることだ」

「わかった」


 気持ちを整え、息を吐き、心の中を真っ白にしていく。

 言われたイメージを、頭の中で、思い描いていた。

 そして、静かな声音で、呪文を詠唱していった。


 すると、カレンの手のひらに、温かい光が、小さく密集している。

 先ほどとは違い、光が密集していったことに、歓喜していると、集まっていた光が霧散し、なくなってしまったのだった。

「……できた。ねぇ、リュート。できていたわね」


 信じられないと思いと、やっと、できたと言う思いが、入り混じった表情を滲ませていた。

 あんなに苦戦していた精霊呪文が、できたのである。

 リュートの教えを受けて。

 先ほどまであった、ムカついていた気分は、すでに、どこかへ飛んでいた。


「ああ。集中力を解いたから、途中で、失敗したがな」

 そっけない顔で、起きたことを、言葉に出していた。

「ありがとう」


 今まで、できなかった発動が見られたことに、失敗したと言うことは、聞き流してあげていた。

 それほどまでに、発動できたことを、喜んでいたのだった。

 カレンが、発動できたことにより、誰もが、リュートの教えてを復唱し、呪文を唱えていった。カレン同様に、途中で霧散し、消滅している生徒もいれば、最後までできる生徒までいたのである。


「さすが、リュートね」

 ホクホク顔が、止まらない。

 ニンマリしているカレン。

 怪訝そうに眺めていた。

「別に」


「あんまり剣術科で、無茶しちゃ、ダメよ」

「無茶なんかしない」

「そう思っても、他の子にとって見れば、無茶している時が、あるのよ」

「それを言うのなら、カーチスたちもだろう」

「確かにね」


「ここを抜け出して、合コンするなんて」

「そうね……。って、どういうこと?」

 笑顔を滲ませつつも、目が笑っていない。

 だが、疑問に思わないリュート。


「わかるように、説明してくれる?」

「ここを抜け出して、みんなで、合コンすることに、なったんだ」

 何でもないと言う顔をし、みんなで、合コンすることになった旨を、喋っていた。

 隠す必要性がないからだ。

 周りにいる生徒たちは、苛烈な焔を燃やすカレンに、気遣わしげな視線を巡らせていく。


「へぇー。そうなんだ。楽しそうね」

 棒読みのカレンだった。

 微妙に変化しているカレン。

 だが、リュートは、のほほんとしたままだ。


「俺は、楽しくないが、カーチスは、楽しみにしていたぞ」

 さらに、地雷を落とした。

 そうしたリュートの言動に、魔法科の生徒たちが、バカと、心の中で突っ込んでいたが、気づく気配がない。

「カーチスが、楽しそうにしていたの?」

「ああ。一番、楽しそうにしていたぞ」


(((((それ以上は、やめろ。カーチスが、死ぬぞ)))))


 カレンがいる手前、言葉を発することが、できない生徒たち。

 近くにいたとしても、手出ししなかっただろう。

 それほどまでに、カレンの形相が、能面になっていた。


「一番?」

「ああ。一番だ」

「へぇー。一番、楽しそうにしていたんだ」

 胸を張っているリュートを見ていない。


「よかったわね」

「ああ」

 呪文の会得どころではなく、多くの生徒たちが、頭を抱え込んでいた。


「ありがとう。いいことを、聞かせて貰ったわ」

「そうか」

 リュートが、笑顔を滲ませていたのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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