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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第90話

 湖の近くでは、カレンが精霊呪文に、四苦八苦している。

 何度、唱えても、成立しない。

 思わず、唇を噛み締めていた。


 不意に、周りに様子を窺うと、誰も似たり、寄ったりの状況だった。

「何で、上手くいかないのよ」

 悔しげな顔を滲ませ、綺麗な湖を見つめた。


 辺りには、様々な精霊が、溢れている。

 精霊呪文が、発動しやすい環境にいたのだ。

 それにかかわらず、上手く行かない。

 やるせない気持ちに、息を吐いた。


 担任であるラジュールも、容易く精霊呪文を、会得できないと見越し、諜報員を捕獲するため、森の中へ、入り込んでいったのだった。

 生徒たちの状況を、彼なりに把握し、行動していたのだ。


 また、嘆息を零しそうになる。

「カレン?」

 聞き慣れた声に、振り向く。


 すると、剣術科に、転科したリュートが立っていた。

 指定された宝を、捜索しているうちに、セナたちとはぐれ、剣術科が、指定した範囲を抜け出し、魔法科が滞在しているところまで、来てしまっていたのである。

 そうとは知らないリュート。


「何で、剣術科のところまで、来ているんだ?」

 首を傾げ、困惑しているカレンを、捉えている。

 自分自身が、出ていることに、気づかない姿に、嘆息を零していた。


(ホント、変わらないんだから、リュートは)


 きょとんとした顔を、カレンに傾けている。

「私じゃなく、リュートが、魔法科のところまで、来ているのよ」

「そうか」

 指摘を受けても、顔色を変えない。

 痛くも、痒くもないといった顔だ。


(少しは、脅威を感じなさいよ。しょうがないわね)


 軽く息を吐き、リュートに顔を巡らせていた。

「いいの? こんなところまで来て。見つかったら、剣術科の先生に、怒られるんじゃないの?」

 窘められているにもかかわらず、リュートの表情が、飄々と変わらない。


 カーチスや、つい最近、知り合いになったセナから、担任のカイルが厳しいと、話に聞いていたのである。

 面倒見がよく、姉御肌のカレン。

 話に聞く教師から、叱責を受けないかと、気を巡らせていたのだった。


「大丈夫だ。カレンは、何を、やっている?」

「見て、わからない? 精霊呪文よ」

「その割りには、何も、起こっていないが?」

 ストレートな物言いに、ムッとしている。


 カレンの周りに、精霊呪文が、発動された形跡がなかった。

 離れた場所を窺うと、誰も、失敗に終わっていた。

 そして、カレン以外、誰一人として、リュートの存在に、気づいていない。

 上手くいかない精霊呪文に、躍起になっていたのだ。


 痛いところを突かれ、眉間にしわ寄せている。

「まだ、成功していないのか? 簡単なのに」

 最後に、爆弾を投下した。

 眼光鋭くしているカレンだった。


(一緒にしないでよ。リュートと、違うんだから!)


 噛み付きたい衝動を、必死に、カレンが押さえ込む。

 天然のリュートに、突っかかっても、しょうがないからだ。

 けれど、多少は、意趣返しはしたかった。

「……悪い?」


 のほほんとしているリュートを睨んでいた。

 辛うじて、威厳を、保ちたかったのだ。

 お姉さん的な存在として。


「別に。ただ、遅いと、思っただけだ」

 さらに、目を細めるカレン。

 憤慨している態度に、気づく様子がない。

「時間を、かけ過ぎだろう」

「悪かったわね」

 吐き捨て、不貞腐れている。


 チラリと、まだ、いるリュートを窺っていた。

「……帰らなくても、いいの?」

 魔法科も、剣術科も、決められている範囲から、出ないように言われていた。魔法科の一部の生徒たちが、いつものように、守らないのは承知していたが、剣術科に、転科したリュートが戻らないと、不味いと巡らせ、促したのだった。


「平気だ」

「それは、リュートの基準でしょ?」

 周りをぐるりと眺め、呆れ顔のカレンに注ぐ。

「アニスと、仲がいいのか?」

 突然、話を変えられた。

 僅かに、パチパチ瞬きを、繰り返している。


(……私が、質問したことに答えないで、いきなり、話を変えないでよね!)


「……仲が、いいわよ」

「そうか」

 穏やかに、微笑むリュートだ。


「いつの間にか、仲良くなっていたのね。アニスと」

 若干、声音に、嫌味が込められていた。

 勿論、気づくはずもない。

 わかっていても、込めていたのである。


「まぁな」

「あまり、アニスに、面倒をかけないように」

 面倒をかけるおそれが、十分にあるリュートを窘めていた。

「かけて……いないと思う……たぶん」

 あやふやな喋り方。


 怪訝そうな眼差しを、カレンが巡らせている。

 ばつが悪そうな顔を、僅かに滲ませていた。


(……体術の稽古は、秘密だからな)


 時間を見つけては、アニスに体術の稽古を、つけて貰っていたのである。

 授業が始まる前や、終えた後、休憩の際に、アニスと、日ごろの出来事や、何気ない会話を楽しんでいたのだった。

 そうした中で、カレンとの話も、何度も出てきて、二人の親密さが、伝わってきたのだ。


「はっきりしなさい。迷惑をかけているの? かけていないの?」

 剣幕を浮かべ、カレンが詰め寄っていった。

「……たぶん、大丈夫だ。笑って、話をしてくれるから」

 狼狽えながら、真摯に答えていった。

 そんな姿に、頬が緩むのだった。


「そう。ならいいわ。それと、リュート。精霊呪文教えて」

 教えを請う姿に、眉間にしわを寄せ、窺ってしまう。

「いいでしょ?」

「面倒だ」


「どうせ、まだ、ここにいる時間があるんでしょ? だったら、教えなさいよ」

 開き直ったカレンが、立っていたのだ。

「クラインは?」

「いつの間にか、いなくなっていたわよ」


(逃げたな)


 溜息を吐くリュートだ。

「できるんだから、さっさと、教えなさい」

 強気な態度を崩さない。

 教えて、当たり前な顔を、徐にリュートが捉えていた。

 そして、うんざり顔を漂わせている。


(……言い合いするのも、面倒臭くなってきた……)


「……わかった」

 満足げな笑顔を、カレンが覗かせている。

「こうだ。よく見てろ」


読んでいただき、ありがとうございます。

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