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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第88話

「暇だな」

 澄み切った空を、何気なく、ブラークが見上げている。

 その隣では、キムがウトウトと、眠気に襲われていたのだ。

 カーチスが、小枝を振り回り、時間を弄んでいた。

 何もすることが、なかったのである。


「そんなに暇なら、精霊呪文を会得しろよ」

 呆れながら、トリスとクラインが、三人の前に姿を現す。

 三人は、バドを警戒し、徐々に、魔法科がいる場所から離れ、森の中へ入り込んでいた。


 魔法科がいる範囲からは、完全に、それていたのである。

 それでも、安心はできない。

 バドであるから。

 リュートに続いて、2位をキープしているほど、優秀だったのだ。


 トリスが小さく笑っている。

 罠のチェックを、終えたトリス。

 クラスメートに、教えていたクラインと合流し、逃げている三人の元に、訪れていたのだった。

 三人の行動を読み、あっという間に、三人を見つけることができた。


「面倒臭い」

 ぼやくカーチスに、首を竦めているクラインだ。

「必須だぞ」

 魔法科に置いて、精霊呪文を一つ会得することが、必須になっていたのである。

 いずれは、精霊呪文を、会得しなければならなかった。


 渋い顔を、三人が覗かせている。

 A組の中で、彼ら三人は、最下位争いをしているメンバーだった。


「クライン。後で頼む」

「後でなく、今の方が、都合がいいんだけど?」

 ニコッと、クラインが微笑む。

「「「……」」」

 口を尖らせ、不服そうな面々。


 どうしようもないやつらだなと、抱くトリスだ。

 突如、カーチスの双眸が、軽く、頭を痛めているトリスを捉える。


「トリスは、会得したのかよ」

「まったく」

 悪びれる様子もないトリス。


「じゃ、何で、俺たちだけ、真面目にやれって、言うんだ」

 納得できないカーチスである。

「「そうだ、そうだ」」

 抗議を上げる二人。

 そんな三人の姿を、冷めた目で、トリスが眺めていた。


 そうしたトリスに代わり、クラインの口が開く。

「多少の助言をすれば、トリスは会得できるが、カーチスたちは、できるのか?」

 射抜くように、カーチスたちを、クラインが見下ろす。

 言われた当人たちは、居た堪れない。

 誰も、口を噤んでいる。


 いつも、クラインやリュートに頼み込み、教えて貰うことが多い四人だが、その中で、一番に抜け出すのが、いつも飲み込みが早いトリスだった。

 物覚えが早く、瞬く間に、勉強会から抜け出していた。


 注がれるクラインの視線。

 逃れるように、外していく。


「俺としては、聞いているんだけど」

 珍しく、辛辣に、クラインが追求していった。


(((今日は、厳しいな、クラインのやつ)))


 隣では、声に出さないで、トリスが頑張れと、小さくなっているカーチスたちを応援している。

 状況を楽しんでいる姿が、気に入らないカーチスたち。

「「「……早く、会得できるように、努力いたします」」」

 頭を下げる三人だった。


 そんな彼らに、クラインが双眸を傾けたままだ。

 目が細められている。

 下げたままの頭を、上げない三人。


「努力しても、やらないのかよ」

 口角を上げつつ、トリスが突っ込む。

 少しは、身に染みたかと、表情を緩めるクラインだ。

 徐々に、カーチスたちも、力を抜いていった。


「ところで。バドは、どうしているの?」

 バドの動向が、気になるキムだった。

 餌食になりたくないと、顔に描かれている。

 そんな姿に、クスッと、二人が、笑みを零していた。


「精霊呪文に、苦戦しているから、少し、見逃してほしいと頼んだ」

 生徒の半数以上が、精霊呪文に、四苦八苦していたのである。

 そのため、クラインが教える需要が高く、身体が少し疲弊していた。だから、休憩も兼ね、カーチスたちのところに、避難しに来たのだ。


 教える側のクラインとしても、できるだけ、会得してほしいので、捕獲しようと、意気揚々としているバドを、説得したのだった。

 功を制し、バドは、みんなを捕獲することなく、姿を眩ましてくれた。

 魔法科では、安心して、精霊呪文の練習が、できる環境だった。


「さすが、クライン。助かった」

 ホッと、ブラークが胸を撫で下ろした。

 同じように、キムの顔にも、安堵の色が滲んでいる。


「だったら、今頃、獲物を探して、彷徨っているかもな」

 のん気なことを、口にしているトリスだ。

 何気なく、漏らしたのだ。

 眉を潜めるブラークとキム。

 もしかすると、この辺を、彷徨っている可能性を、見出したからだ。

 辺りを、キョロキョロと、窺う二人。


「……もしかすると、剣術科が、危ないんじゃないのか?」

 怪訝そうな顔を、カーチスがみせた。

「確かに。その可能性も、高いな」

 逡巡する顔を、トリスが覗かせていた。

「リュートも、いるからな。使えると思うかもな」

 研究に対し、貪欲なバドに、クラインが首を竦めている。


「……それに、諜報員もいるから、その辺も、獲物にするんじゃないのか」

 冷静に、バドの行動を踏まえ、分析結果を、トリスが口に出した。

 学院内を、探っている諜報員でも、実験対象としていたのである。

 そのことで、何度か、教師たちから、叱られた経緯があった。


「諜報員だったら、いいけど。剣術科だったら、どうする? リュートに知らせるか?」

 知らせるかと言うカーチスの提案。

 微かに、トリスが思案を巡らせる。

「……大丈夫だろう。それに、剣術科にとっても、いい勉強になるんじゃないのか」


「……バドだぞ」

 胡乱げなカーチス。

 それに対し、平然としている顔を、窺わせていたのだった。


「バドだからだ。ある意味、バドは、容赦しないからな」

 楽しげなトリスとは対照的に、苦々しい顔を、カーチスやブラーク、キムが浮かべている。

 クラインは、ただ、苦笑しているのみだ。

「少し、魔法科を、甘く見ている節が、剣術科にある。バドの、恐ろしいほどの研究熱心さを、学ぶ時かもしれない」

 不敵な笑みを漏らしていた。


「えげつないな、トリス」

 眉間にしわを寄せているブラーク。

「それは、ある意味、ブラークたちのためだと、思うんだが」

「んっ?」

「俺たちに向ける目が、軽減されるんじゃないのか」

 魔法科の仲間を、捕まえても、納得できるまで実験できないと、最終的に、ブラークたちまで、手が伸びていたのである。


「……剣術科は、頑丈なのか?」

「それなりに、頑丈だよ」

「向こうも、魔法科のレベルを知った方が、いいかもしれないな」

 ニヤッと、ブラークが口の端を上げている。

 横では、若干、キムが引いていた。


「ご愁傷様」

 魔法科がいる方へ、カーチスが視線を傾けていたのだ。


(ま、剣術科よ、頑張れ)


「で、どうする?」

 今後のことを、尋ねるトリスだった。

「ナンパしよう」

 ニコニコしているカーチスに、トリスとクラインが不平を唱える。

「合コンするのにか?」

 胡乱げな顔を、二人が滲ませている。

 ブラークとキムは、乗り気な顔だ。


「そうだ。付き合え」

 いい顔を、カーチスが漂わせていた。

 行く気に、なれない二人。


「クライン。今、戻ると、みんなに捕まるぞ」

 まだ、戻りたくないクライン。

 だが、すんなりカーチスの提案も、乗りたくない。

 どうする?と、トリスに視線を巡らす。

 僅かに、首を傾げていたのだ。


「トリス。一人だけ、逃げようとするな」

 逃がさないぞと言う眼光を、カーチスが注いでいた。

「……わかった」

「では、村に行こうか」

 ニンマリしているカーチスたちを先頭に、クラインやトリスが、やれやれとついていくのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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