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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第87話

 真剣な眼差しで、パウロがレポートと格闘していた。

 その隣では、呆然と、リュートが綺麗な空を眺めている。

 全体的に、ダメなレポートに、最初から書き直すように言い、付き添って、何度も、書き直しさせていた。

 そして、何もすることが、なくなったのだった。

 何度も、ダメ出しされた部分を改善し、書き直せば、よかったからだ。


 ダンとローゼルは、早々に、完全なレポートを作り上げ、それぞれに、近辺で、食糧の調達を行っていた。セナ自身も、でき上がっていたが、リュートが何か仕出かす恐れが拭えないため、何があってもいいように残って、保存食を作っていたのである。

 何もしていないリュートに、双眸を巡らした。


「何、ぼうってしているの? パウロのレポートは、順調?」

「んっ。……大丈夫だ」

 視線に促され、一心不乱に書いているパウロの姿を、セナも捉えていた。

 セナの声も、届かないぐらい、真面目に打ち込んでいる。

 微かに、セナが首を竦めていたのだ。


「これぐらい、いつも集中してくれると、助かるのに」

 ぼやくセナに、苦笑しているリュートだった。

 何事においても、パウロはなかなか集中できず、意識が、そがれていることが多い。

 そのため、成績が、イマイチ伸び悩んでいたのだ。

 仲がいいダンが、それとなく改善させようと、本人に気づかれないように、特訓させていたのだった。


「セナの方は、保存食できるのか?」

「もう少しよ」


 大量にある肉を燻製にし、保存食にしようとしていた。

 短い期間しか、野宿しないので、他の班の生徒たちは、学院から持ってきた保存食しかない。

 わざわざ作っているのは、セナたちの班しかなかった。


 他の班も、ようやく動き出している。

 テントを張っている拠点に、数人の生徒しか残っていない。

 作業しつつも、セナたちの班を、それとなく視線を巡らせていたのだった。

 残っているのは、セナたちを見張るため、見張り役の生徒だ。


 『十人の剣』の称号を持つセナと、天才と謳われるリュートの存在を、他の班の生徒たちが、気にかけていたのである。

 どの班も、セナたちの班よりも、上に昇りたかったのだ。

 見張り役の生徒の視線を、常にリュートは感じていた。

 リュートにとって、露骨過ぎたのだった。


(もう少し、上手く見ろよ……)


「な。俺、探索に行ってもいいよな」

「ダメ」

「鬱陶しい」

「それでも、ダメ」

「何で?」

「何でも!」


 口を尖らせ、納得できない顔を覗かせている。

「全員で、揃ってよ」

 揺るぎない意志が、込められた眼光を注いでいた。


「暇だ」

「それでも」

 視線の圧で、駄々を捏ねているリュートを押さえ込む。

 プイッと、そっぽを向いた。


「もう少しで、ダンやローゼルたちも、戻ってくるでしょう」

 周囲に瞳を巡らせれば、ダンやローゼルの姿を、みせたのだった。

 リーダーであるセナの命令に従い、近辺で、調達を行っていたのである。


 ダンの手には大量の魚、ローゼルの荷物には、豊富な木の実や、果実が詰め込まれていた。

 二人は、セナの前に、調達した物を並べる。

「大漁だろう」

 自慢げなダンの顔だ。

「これで、いい食事ができそう」

 ご満悦な表情を、ローゼルが滲ませていた。


 並べられた食材を確認し、セナが二人に顔を傾ける。

「下処理を、しておいて」

 二人して、眉を潜めていた。


(ケンカするけど、タイミングが合っているのよね)


「まだ、パウロが、できていないの」

 二人が帰ったことに気づかないほど、レポートに、向き合っているパウロを窺う。

 レポートしか、眼中にない状況だった。

「「……」」


 それぞれ、無言のまま、セナに命じられた作業を行うため、分かれた。

 互いに、距離を少し開け、各々で、下処理の作業に入っていく。

 二人して、喋ろうとする気がない。

 ただ、ひたすらに、作業をしていった。


(これで、上手く連携が取れれば、最高なのに)


「ところで、何か変わったこととか、なかった」

 調達の他に、近辺の捜索を、頼んでいたのである。

「「変わったところはない」」

 声が揃ってしまい、ばつが悪そうな顔を滲ませていた。

「ありがとう。二人とも」


 ニコッと、セナが微笑んでいた。

 持っていた地図を窺い、逡巡している。

 ある程度、宝の在りかが、どこにあるのか、見当していたのだった。


 下処理の手を止めず、ダンがリュートに話しかける。

 黙ってしている作業に、僅かに飽きてしまったのだ。


「な、リュート。魔法科時代は、何してたんだ?」

「別に」

「それで、罰掃除なんて、やらされないだろう」

「ああ。罰掃除のことか」

 合点がいった顔を、みせている。


「で、どんなことを、やらかしていたんだ?」

「ムカつくチェスターを、爆弾で飛ばしていた」

「「……」」

 ローゼルも、それとなくリュートの話に、耳を傾けていたのだった。


「後は、魔法で、吹き飛ばしたり、チェスターの食事に、薬草を入れて、お腹を下させたり、後は、チェスターを鬼にし、全員で逃げ惑ったり、後は……、とにかく魔法で飛ばしていたな、何度も」

 のほほんとした顔で、魔法科時代の、一部の出来事を語って聞かせた。

 不意に、ダンとローゼルが、チェスターの顔を脳裏に掠めている。


((よく、生きていたな))


 そして、楽しげなリュートの顔を窺う。

 悪びれた様子が、一切ない。


((それだけのことをして、罰掃除だけかよ……))


「楽しかったぞ。いろいろと」

「……そうか」

 乾いた返事しかできないダン。

 頬が引きつっているダンに、気づかない。


「それに、バドの研究に、付き合わされた」

「「バド?」」

「ああ。バドは、魔法や、薬草の研究が好きで、年中、研究に打ち込んでいる。俺も、研究は好きで、たまにすることもあったが、バドほどではなかった。何度か、バドの研究に、付き合わされて、死にそうになったことがある」


((笑顔で、言うことなのか……))


 死にかけた話にもかかわらず、喋っているリュートの顔が、とびっきりの笑顔だった。

 胡乱げな表情でいる二人。

 けれど、夢中なリュートは気づかない。

「大変だったが、面白かった」


((面白いのか))


「実験体に、みんなのことを使うから、よく、みんなで、バドから逃げていた。そのおかげか、バドの探索能力が上がったし、みんなの身体が、丈夫になっていったな」

 楽しかった思い出のように語っているが、どう話を聞いても、地獄絵図のようにしか、思えない二人だった。


((あり得ない……))


 軽く眩暈を、生じさせている二人である。

「たぶん、バドも来ているから、今頃は捕まって、餌食になっているところだろうな」

「「……」」


 顰め面になっている二人に、嬉しそうな笑顔を巡らせている。

「きっと、魔法科の連中じゃ、物足りなくなって、剣術科に手を出すかもな」

 とんでもない発言に、面食らうしかない。


 自分たちにも、被害が及ぶ可能性が出てきたのだ。

 徐々に、そのままの顔を、森の方へ傾けていく。

 多くの仲間たちが、森の中で、宝探しをしている最中だった。


「質問しても、いい?」

 傾けたまま、ローゼルが問いかけた。

 その顔は、訝しげだった。


「何だ?」

「そのバドって、言うやつが、私たち、剣術科を襲う確率は、どれくらい?」

「そうだな……ほぼ、狙うんじゃないのか」

 確実に、狙われていると知り、僅かに、背筋が凍っていく。


「魔法科の担任は、それに関して、何も言わないのか?」

 強張った顔を、ダンが覗かせていた。

「何も。ラジュールも、研究が好きだからな。捕まる方が悪いと、言っている」


((教師かっ))


 互いに、顔を見合わせ、ゆっくりと、綻ばせているリュートを捉えていた。

「「逃げることは、難しいのか」」

 腕を組み、逡巡しているリュート。

「難しいんじゃないのか。バドの捕まえる能力も、年々、上がっているし。何せ、バドだからな」


((バドだからなってだけで、片づけるな))


 口角を上げ、懐かしい顔を、リュートが滲ませている。

 そして、魔法科のクラスメートの顔を、思い返していた。


 渋面した顔を、見合わせている二人。

「な、知らせるか」

「……向こうだって、リュートを警戒し、さっさと、動き回っているのよ」

「だよな……」

「黙っているべきよ」


 二人は、チラリと、レポートに集中しているパウロと、地図と睨めっこしているセナに、視線を注いでいた。

 全然、リュートの話を、耳にしていない。


「「……黙っていよう」」

 二人で合意し、頷き合うのだった。


 魔法科のクラスメートの話をし、リュートはしみじみとなっていたのである。

 乗り気ではなかった合コンだったが、みんなと楽しいことができると、気持ちが前向きになっていくのだった。



読んでいただき、ありがとうございます。

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