表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
90/401

第86話

 食事を終え、今後のスケジュールを、打ち合わせしようと、セナたち一班が集まっていたのである。

 セナたちのように、集まって、話し合いをしている班もあれば、休息している班、すでに動き始めている班もあったのだった。

 狩りなどの課題の他に、班ごとで決められた、指定された宝を、見つけ出す課題も、組み込まれていたのである。


 どうするのかと、班の面々の顔を、セナが窺っていた。

 全員で行うのか、分かれて、捜すのか、決めることが多くあったのだ。

 だが、セナに焦りの気持ちがない。

 落ち着き、いつものようにすれば、やれると、自負していたのだった。

 そして、今やることは、みんなの意見に、耳を傾けることだと巡らせていた。


「食糧調達も、満足にできていないし、全員で、探しに行くのは、得策ではないと思うけど?」

 肉ばかりの食糧に、視線を注ぐローゼル。

 何としても、果実や、木の実、魚なども、集めたかったのだった。

 食糧事情を改善することを、願っていたのである。


「いや。全員で動き、それぞれに、動くべきだ。捜す範囲が、割りと、広域なんだ。探す人員に裂くべきだ」

 揺るがない意思を、ダンが覗かせる。

 探す範囲が広く、手間取ると、巡らせていたのだ。

 ダンとしても、好成績を残したいと抱いていた。


 そうした意見に、一理あると抱くが、ローゼルの意見も、捨てがたい。

 黙っているパウロや、リュートに、双眸を傾ける。


 どっちだと言うダンとローゼルの、視線の圧に、気圧されているパウロだった。

 至って、のほほんとしているリュートである。


「……僕としては、まだレポートが、仕上がっていないから、……レポートを……」

 最後の方は、か細い声で、聞き取ることができない。


(しょうがない二人ね)


 未だに、圧をやめない二人。

 首を竦めているセナだ。

 セナ自身、レポートは仕上がっていたが、納得できるものまで、いっていなかった。

 もう少し、加筆したいと抱いていたのだ。


 チラリと、野宿体験学習に入る前に、配られた地図に視線を落とす。

 この辺一体の地図で、班ごとで一枚を所持していた。


(ダンの言う通り。効率よく、探さないと、見つからない可能性も、あるわね。……これだけ広域だと。だからと言って、レポートも、満足にできていないメンバーもいるし、食糧も不安があるし……。夜の捜索は、禁止され、日中しか動けない。それに、時間も限られているし……)


 問題が、山積みだった。

 この授業は、限られた時間内で、どれだけの課題をこなし、効率よくことが進めるのかが、大きな課題となっていたのである。

 名案が浮かばず、黙っているリュートに、顔を注ぐ。


「リュートの意見は?」

「俺は、どちらでも、いいぞ」

「「どちらかに、決めろ」」

 苛立ちげなダンと、ローゼルだ。

 気圧されても、全然、気にする様子もない。

 飄々としたままだった。


「俺一人で、探せるぞ」

 何気ない顔で、言ったつもりのリュート。

 だが、誰の顔も、渋面を滲ませていた。

 こいつなら、やれそうだと。


 甘い誘惑に、どの顔も、溺れそうになる。

 振り払うように、頭を振るセナだ。

「……ダメよ」


「何で、その方が、効率いいだろう?」

「確かに、そうだけど。班で、行動しないと」

「ねぇ、他の班の多くが、迅速に動いていない? もしかすると、リュートのことを踏まえて、動いてるのかもしれない」

 ふと、思い浮かんだことを、ローゼルが口に出した。

 なるほどと頷くダンだ。


 班で残っている者たちが、一斑をそれとなく窺っていたのである。

 ここに来て、争っていたことを、忘れている二人。


(このままにして置こうっと。それにしても……、そういうことを、考えているのね)


「……確かに。あり得るわね」

 訝しげな顔を、セナが覗かせていた。


(リュートがいれば、誰もが、私たちの班が、利があると、抱くわね。でも、よく考えて、ほしいわね、天才だけど、非常識さも持っているのよ。薬にも、毒にも、なる存在なのよ。天然ボケのリュートは)


 内心で、憤慨しているセナだった。

 何がだと、小さく首を傾げている姿を、捉えている。

 理解していない様子に、のん気で、いい気なものねと抱いていた。

 一癖も、二癖もあるクラスメートの顔を、掠めていく。


(……私たちに、一位を、取らせないつもりね)


 口角を上げ、不敵に笑う。

 その眼光は、鋭さが宿っていた。


「……。先ずは、レポートを全員で、終わらせる。勿論、完璧なものよ。リュートは、できていないパウロを、見てあげて」

「いいのか?」

 自分は、探しに行くものだと、思い込んでいたのである。

 それが、パウロを見ろと言う指示に、目をパチパチさせていた。


 セナとしては、レポートの点数も、高いと見込んでいたのだ。

 だから、こういったところでも疎かにせず、点数を稼ごうと、目論んでいたのだった。


「お願い」

「ま、いいけど」

 納得いっていないダンとローゼルに、顔を巡らす。

「まだ、仕上がっていないはずよ」

 真剣で、確信した顔を、セナが滲ませていた。

「できている」

「後、ほんの少しよ」


 僅かに声が震え、平気と言う二人の視線が、泳いでいる。

 双眸をそらさず、二人を捉えていた。

 徐々に、二人がセナから、視線を剥がそうとしていたのだ。


「完璧に、仕上げて」

 有無を言わせない態度だった。

 誰も、能力があるセナに、逆らえない。

「「……わかった」」

「それから、三つに分けて、捜索よ」

「「「「承知」」」」


「お兄ちゃんたちは、動き回らないの?」

 突如、お菓子を携えてきたミントが姿をみせる。

 軽い眩暈がしているセナだ。

 ローゼルたちは、首を竦めている程度だった。


 他の班も、ミントの姿を見かけても、素通りしていた。

 逆に、時間が稼げると、巡らせる班もいたのだ。

 それに、監視している教師たちも、ミントの登場に、頭を痛めていたが、刺激しないで、放置しておく方が賢明だろうと、見逃していたのだった。

 カイルが判断するだろうと。


 籐のかごには、たくさんのお菓子が詰められている。

 顔を綻ばせ、かごの中身を、確認していくリュート。

「グリンシュか?」

「そう。そろそろ、ほしくなる頃だろうからって」

 ニッコリと、ミントが微笑んでいた。


 お菓子を恋しがる頃だろうと、グリンシュがお使いを頼んだのである。

 かごのお菓子は、セナたちの分も、含まれていたのだった。

 大きい籐のかごに、お菓子が大量に詰められていた。


「さすが、グリンシュ」

「こんなところに、いていいの? 他の人たちは、奥までいっているよ」

 来る途中に、何人かの生徒と、すれ違っていた。

 行き違いになるかと抱きつつ、テントを張っている場所に来たのだ。

 そして、まだ、いたことに、違和感を生じさせていたのである。


「私たちは、レポートを完全に仕上げることを、優先しているの」

「そうなの」

 若干、目を丸くしているミント。

 兄が、完璧なレポートを、仕上がっていないと、思い込んでいたのだった。


「リュート! 食べたら、失格だからな!」

 背後から、青筋を露わにしながら、物凄い剣幕でカイルが近づいてきたのだ。

 怒気を孕む声に、相当怒っていることを、察するセナたち。

 誰もが、ヤバいと顔を歪めている。


 ただ一人だけ、違っていた。

「何で……」

 悲壮感溢れる顔を、リュートが前面に出している。

 恨めしそうな顔を滲ませている前で、顔を引きつらせているカイルが立ち止まった。


「当たり前だろう。自分たちで、食料や水を調達し、野宿するのが、趣旨なんだぞ」

「わかっている」

 不満いっぱいに、口を尖らせている。

「わかっていない」

 半眼しているカイルだ。


 強張っているセナに、顔を巡らせていく。

「セナはわかるな。それに……」

 セナ以外の面々にも、視線を傾けていった。

 誰もが、小さく、はいと、返事を返していたのだ。


「そういうことだ。これは、没収する」

 愕然としているリュートから、お菓子が入ったかごを、奪い取った。

「そんな……」

 脱力感が否めないリュートだ。


 可哀想と呟いているミントに、怖い面を向けている。

「グリンシュに、伝言だ。バカなことは、しないでくれとな」

「わかった。ちゃんと伝える」

 怒り心頭のカイルに、笑顔を返していた。

「頼むぞ」

 素直に、カイルの言葉に従ったミントだった。


 カイルが持っている、お菓子が入ったかごを、未練ある双眸で見つめている。

 顔には、食べたいと描かれていた。

 お菓子しか、眼中にない姿に、バカと突っ込むセナ。

 そんな突っ込みに、反応しない。


「……リュート。失格になっても、いいの?」

「……いやだ」

「だったら、諦めなさい」

 諦めきれないリュートを、セナが窘めた。

 食べて、失格になる訳には行かなかったのだ。


「……わかった。調達の際、果実を、大量に見つけ出してやる」

 渋々諦め、調達した、甘い果実を食べる野望に、燃えているリュートの姿があった。

 甘いものに拘る姿に、ダンを始めとする面々が、呆れている。

 ミントだけが、頑張れと、応援していたのだった。

 そんな光景を、こいつ、ホントの天才なのかと、疑うような眼差しで、残っていた他の班の面々が、傍観していたのである。


「それなら、いいわよ。楽しみにしている」

 視線を剥がすことができない。

 チラチラと、哀しげにリュートが、お菓子に視線を巡らせていたのだ。

 怒りよりも、呆れているカイル。

「お菓子をくれると言っても、勝手に、知らない人に、ついていくなよ」


 心配げな眼差しを、カイルが注いでいた。

 お菓子に、固執している姿にだ。


「……トリスたちに、注意されているから、大丈夫だ」

 思わず、頬が引きつっているカイルだ。


(魔法科の時、お菓子で、何度も、引っかかっているのか……。注意されていると言うことは、あるのかもしれない。後で、ラジュールに、確認しとかなくては)


「……もしかして、ついていったことがあるのか?」

「……」

 何も、喋らないリュート。

 生暖かい視線を、巡らせるダンたちだった。


(幼い子供か!)


 まだ、お菓子から、視線をそらすことができない姿に、カイルは不安しかない。


(不安だ。諜報員たちが、お菓子で釣れば、簡単に釣れてしまうな。トリスたちも、注意を施してあるみたいだが……、絶対に、お菓子の誘惑に、負けそうな気がする……)


 ダメな子を、見るような双眸になってしまう。

「お兄ちゃん。昔から、お菓子好きだもんね」

「人のこと、言えないだろう。ミントだって」

「私は、大丈夫よ」

 威張っているミントだ。


「嘘付け。お菓子につられ、何度か、外に出て行っただろうが」

 徐々に、リュートから、視線をそらしていく。

 二人の論争に、ますます、イタイ子を、見る顔になってしまう面々だった。


読んでいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ