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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第83話

 日も暮れ、剣術科では、班ごとで調達した食材を使い、料理し食事している。

 狩りに失敗した班は、近くで生殖している果物や、木の実だけの質素な食事だったり、別な班では、狩りではなく、湖から魚を釣り、それを食している班もあった。

 幸い、リュートたちの班は、狩りに成功し、多くの肉を、胃袋に収めていたのだ。


「肉ばかり……」

 食事内容に、不服なローゼルだった。

 肉一色で、他の食材、魚や果物、木の実が全然ない。

 焼いた肉に、ハーブと一緒に煮込んだ肉しかなかったのだ。


「文句があるんだったら、食うな」

 鷹揚に、ダンが突っぱねた。

 そして、大量の肉を、平らげている。

「食べるけど、文句はあるわよ!」

 互いに、火花を散らかす。

 食糧担当だった男子組が、狩りだけしか行っておらず、他の食材を、採らなかった。


「バランスを、考えなさいよね」

「干し肉にすれば、保存食に変わるだろう」

 対抗心を剥き出しで、ダンが言い返した。

 日ごろから、二人の相性がよくない。

 そのせいで、いつもケンカが絶えなかった。

 見慣れた光景に、誰も、止めに入る者がいない。


「ただの、野宿体験学習なのよ。期間が短いのに、どうやって、干し肉にしようって、言うのよ。その筋肉バカの頭で、考えなさい」

「筋肉バカの頭って、何だ!」

 もっともな、正論を突きつけられ、挙句、バカにされ、ダンの眼光が怒りに燃えている。


 いつ、戦闘になっても、おかしくない状況だった。

 パウロやリュートは、気にする様子もない。

 黙々と、食事を堪能している。

 食事をしつつ、ケンカが絶えない二人に、セナが脱力していた。


「そうじゃないの? 狩りだけで、他の食糧を、採らなかったんだから」

「肉は、大切だ」

「肉だけじゃないわよ」

「大切だ」

「違う」


 睨み合う二人。

 周りが見えてなかった。


「いい加減にしたら」

 止みそうもないケンカに、セナが割って入っていく。

 すべてが、採点項目に入っている状況下で、揉めるのは得策ではない。

 一触即発の緊迫した状態を、落ち着き払った目で、二人を見据えている。


 手にしている肉を放り出し、剣で、勝負に入り込みそうな絶妙なタイミングで、止めに入り込んだのだった。

 すぐに止めてしまえば、完全に毒が抜けない。

 次の対戦へと、いってしまうからだ。


「セナだって、そう思うでしょ?」

 自分の正しさを、ローゼルが訴えた。

 肉だらけの食事に、セナが視線を巡らせ、他の班の食事にも傾けている。

「……そうね。これも、授業の一環だから、肉だけの食事では、満点は貰えない」

 冷静に、カイルの思考を読んで、分析してみせた。


 グランドから、出発した時点で、採点が始まっていたのだ。

 生徒たちの行動を、数人の教師で、逐一観察し、詳細にチェックしていたのである。


「……」

 冷静に言われ、何も言えなくなる。

 ほら見なさいと、誇らしげな眼差しを注ぐローゼル。

 けれど、ローゼルの態度が気に入らない。

 ジト目で、ダンが睨んだままだ。


 険悪なモードが、続けられていた。

 両者の顔を窺い、セナが首を竦めている。

「でも、それで揉めるのも、不味いわね」

 ちくりと、顔に似合わず、ケンカっ早いローゼルにも、注意を促した。

 今後、吹っかけさせないためだ。


「不満だけを言っても、しょうがないわよ」

「……」

 ばつが悪そうなローゼルを、窺っている。

 そして、習うように、ダンの口も、しっかりと結ばれていた。

 黙り込んでいる二人に、ホッと、息を吐く。


 パウロとリュートが素知らぬ顔で、ひたすら食事していた。

 無言で、食事を始めたダンとローゼルを窺い、セナも食事を再開させるのだった。

 焚き火を囲んでいる一班では、静かになっていた。

 他の班では、和気藹々と、楽しい声が漏れ聞こえている。


 無口な面々の顔に、セナが視線を巡らす。

「満点を狙うんだったら、まず、肉だけになった現状を踏まえ、話し合って、改善へ、導くべきだと思うけど?」

 対策を、口にしていたのだった。

 胡乱げなローゼルと、ダン。


「どうやって?」

 二人は、先ほどの後遺症が尾を引き、代わりにパウロが口を開いていた。

 視線の矛先が、すべてセナに集まっている。

 それを見越し、余裕な顔を滲ませていた。


「そうね。組み合わせが、不味かったわね。私と、パウロが、水補給組で、リュート、ダン、ローゼルが、食糧調達組とするべきだったわね」

「何で、ローゼルと組むんだよ」

「そうよ。ダンと、何か組みたくない」


 ケンカしたばかりの二人は、不満たらたらだった。

 いやだと、険しい眼光で、二人が訴えている。

 それでも、セナは臆さない。


「一番、妥当な線だと、思うけど? それぞれの能力を緩和見て」

 高揚していた気持ちが、和らいでくると、ダンも、ローゼルも、セナの案に、一理あると抱き始める。

 けれど、それを素直に認めることができない。

 チラチラと、互いのことを、どう反応するのか、窺うばかりだ。

「「……」」


 そんな静寂を破ったのは、満たされつつあるリュートだった。

「悪くないけど、食糧調達だったら、俺一人でも、よかったぞ」

 のほほとしているリュート。

 今回の授業の意図を、読み取っていない。

 気楽な姿に、がっくりと肩を落とし、セナの視線が鋭さを増していった。


「リュート一人が、問題なの」

 非難めいた顔を覗かせている。

「どうして?」

 眉間にしわを寄せ、釈然としない。

 だが、他のメンバーは、反論の意思がなかった。


「ムカつくけど、一番、もっともな意見ね」

「俺も、腹立たしいが、納得できる意見だな」

「そうだね」

 もっともだと、三人がセナに同意している。


 その様子が、一人蚊帳の外のような気がし、面白くない。

 口を尖らせている。


「どこがだよ」

「リュート一人にしたら、何するか、わからないでしょ?」

「何するって、食糧を調達するだけだろう」

「それだけで、すまないのが、リュートなんでしょうが!」

 乱暴に、セナが吐き捨てた。

 同時に三人が、うんうんと頷く。


「考えるとしたら、班の人数も考えず、大量の食材を、集めてくるかもね。それに周りにも、甚大な被害を与えて……」

 これまでのことを踏まえ、リュートが起こしそうな行動を、ローゼルがあげていった。

 どれも、ありそうで、セナの頭が痛くなっていく。

 ダンが腹を抱え、笑っていた。


「これも、あるよ、絶対に。食糧集めを忘れて、どこかへ、消えてしまうことも」

 楽しげに、瞳を輝かせているパウロだった。

 好き勝手言うみんなに、徐々に、顔を顰めていく。

「だったら、稽古している可能性の方が、高いぞ」

 面白げにダンが、パウロの意見に付け足してきた。


 三人は、リュートが仕出かす内容で、盛り上がっていたのである。

 ムクムクと、不満の種を膨らませていた。

 けれど、口を閉ざしている。


「つまり、リュートに単独行動はさせられない。班の中で、力と経験のバランスを考えても、この案が、一番、妥当なの。わかった? リュート」

 諭すような眼差しも、セナは添えていた。

「納得できない……」

 不貞腐れた顔で、黙々と、肉だけの食事を平らげていく。

 口角を上げ、首を竦めている面々。


 そんな姿を、不憫に思ったダンが、話題を切り替える。

「な、リュート。魔法科の時は、どんな班行動を、行っていたんだ?」

「……班なんて、なかった」

「えっ。班が、ないのか」


 意外な事実に、目を見張る。

 だが、それは、ダンだけではない。

 ローゼルも、パウロも、衝撃を受けていた。

 魔法科も、剣術科も、班が決められていたのである。


「それって、もしかして、A組だけじゃないの」

 鋭くセナが、聞き返した。

「ああ。俺たちの組には、班なんて、最初からなかった。どういう訳か、俺たちのクラスだけ、クラス替えが、なかったからな。それに、人数も、他のクラスよりも、少なかったし」

 昔を思い返しながら、口にしていた。


「特別扱いって、感じだな」

 思ったことを、そのまま、ダンが吐き出したのだ。

 僅かに、顔が渋面になっている。


(さすが、エリートが集まっているな)


「特別扱いなんて……」

 反論しかけようとするが、確かに、他のクラスとの違いが、次々と、上がっていき、視線が空を彷徨っている。

 当時は、変に感じていなかった。

 けれど、こうして振り返ってみると、おかしいと抱くのだった。


「自覚は、あるようね」

 落ち着きがなくなりつつある様子を、眺めていたローゼル。

「……ラジュールは、自由を許していたからな。少々のことをやっても、怒られなかった」

 自分たちは、悪くないと弁明に回った。


「少々?」

 胡乱げに、セナが視線を巡らせる。

 居た堪れなさが、膨れ上がっていった。

「……少々より、若干、はみ出すぐらい?」

 自信なさげに、訂正した。

 そして、チラリと、セナの顔色を窺う。

 まだ、納得していない顔を、覗かせていた。


「……遊んで、いただけだ」

 思いっきり、頬を膨らませる。

「リュートだけが、遊んでいただけで、他の人にとっては、迷惑至極よ」

「俺だけじゃない!」

「あの連中だけでしょ」

 さっき会った子供じみたカーチスたちの顔を、思い浮かべていた。


「違う。クラス全員だ!」

「はぁ?」

 セナを初めとするみんなが、眉を潜める。

 一体、魔法科のA組は、どうなっているんだ?と、誰の心も、支配していた。

「今は、みんな真面目に、授業とか、受けているが、みんなで、よく授業をサボって、遊んでいた。全員で、罰掃除を、受けたことだってある」

 ふん、どうだと鼻息も荒く、胸を張っている。


((((威張れないだろうが、そんなことは))))


「巻き込んだの、間違いじゃないの?」

 怪訝そうに、セナが覗き込んでいる。

「違う」

 誰もが、疑っている視線を滲ませていた。


「絶対に違う。だったら、全員に証言させる」

 勢いよくリュートが、立ち上がった。

 魔法科がいる方へ、向かおうとしているのを、慌てて制する。

「ちょ、ちょっと、待って」

 立ち止まり、険を帯びた双眸を巡らせていた。


「証言って、まさか、つれてくるつもり」

「当たり前だ」

 毅然とした態度だ。

 疑っているセナたちに、自分は間違っていないと証明するため、現在、同じオラン湖で、精霊呪文の取得しているA組全員を、連れてこようとしていたのである。

 都合のいいことに、サボり組の面々も、来ていたので、探す手間もないと踏んでいたのだった。


 突拍子もない行動に、ダンたちが軽い眩暈を起こしている。

 セナのこめかみが、ピクピクと動いていた。


「魔法科にだって、範囲が決められて、そこからは、出られないはずでしょ?」

「大丈夫だ」


(どこから、来るのよ、その自信は!)


「クラインや、カーチスたちは、いいかもしれないけど。他の人は違うでしょ? カレンとかは。もしかして、無理やり、つれてこようとしている訳?」

「拒絶すればだ」

 嫌がれば、考えもなく、強引につれてくる予定になっていた。

 物怖じせず、不敵に、リュートが笑っている。


(((やるな)))


 ダンや、パウロ、ローゼルが、複雑そうな顔を覗かせている。

「先生も、いるのよ」

 セナの眉間が、より深くなっていた。

「ラジュールは、基本的に放任主義者だ」

 さらに、こめかみの動きが、加速していった。

「だから、平気だ」

 何も、問題はないと、自信の塊りのリュートを捉えている。


「そうやって、迷惑を、かけているでしょうが!」

 突然の剣幕に、目をパチクリさせる。

「いい? それが、迷惑をかけているって、ことでしょうが」

 胸倉を掴まれ、鬼のような形相が近い。

 それを、きょとんとした顔で窺っていた。

 どうして、セナが剥きになって、怒っているのかわからない。


「少しは、そういったことの、自覚を持ちなさい」

 素直に、リュートが逡巡している。

 一度も、迷惑をかけたと言う意識がなかった。

 純粋に、みんなも、楽しんでいるものと、思っていたのである。


「迷惑なのか? ラジュールは、みんなを連れてきても、文句を言わないし、きっと、それぐらいでは、罰掃除はない」

「魔法科の先生がなくっても、カイルはある」

「……そうかもしれない」

 これまでのカイルの言動を、思い返していた。


「なら、そんな考え、即刻消しなさい」

「わかった」

「なら、よし」

 掴んでいた手を、解いた。

 眺めていたダンたちが、セナによくやったと、拍手で称えている。


読んでいただき、ありがとうございます。

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