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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第82話

「ねぇ、何、話していたの?」

 森の中を歩いているセナが、抱いていた疑念をぶつけた。

 セナとリュートは、秘密基地からの帰る途中だった。


「何が?」

「ひそひそと、カーチスと、話していたでしょ?」

 挑むような視線を浴びせている。

 そこには、逃げを許さない意志が、込められていた。


 カレンと意気投合し、話に夢中になっても、カーチスにつれていかれ、こそこそと話し込んでいる姿を、しっかりと把握していたのだ。

 その場で、問い詰めても、誤魔化される気がし、素知らぬ振りを通していた。


「ああ」

 ようやく、納得した顔を覗かせる。

 悪びれる様子がない。

 ますます、闘志が燃え上がらせた。

「それで、何を企んでいるの?」


 悪い芽を、早く潰しておいた方が、いいと真剣そのものだ。

 セナとしては、これ以上、不機嫌なカイルを刺激したくない。

 不用意に、突っつく真似をしたならば、連帯責任だと言われ、罰がセナやクラスメートまで、降り注ぐ可能性が大だからだ。


 その脳裏には、これまでのことが、走馬灯のように流れていった。

 数々の連帯責任の罰の記憶に、がっくりと肩を落とす。


 リュートが剣術科に移って来て以来、穏やかな学院生活が過ごせていない。

 何かと、厄介ごとに、足を突っ込まされていた。

 安らいだ日々を、暮らせないでいたのだ。

 問題の張本人リュートは、全然、意に介さず、平然としている。


「別に、大した話ではない」

「……」

 丸ごと、鵜呑みにしてはいけない。


(絶対に、大した話よ!)


 けれど、そんなセナの心情も、通じていない。

 カーチスと、話した内容を、意図も簡単にバラす。

「今夜、合コンに、誘われただけ」

「はぁ! 合コン! それも今夜!」


 ケロッと、何でもないような様子に、開いた口が塞がらない。

 ジト目で、リュートを睨んでいる。

 とんでもないことを、口にした自覚がなかった。


(別に、カーチスから、口止めされていなかったし、大して重要なことでも、なかったのに。……ま、いいか)


 深く考えるのが、面倒になり放棄した。

「うん。無理やりに、行くことになった」

「……そんなこと、いつも、やっているの?」


 隣を歩く呆れ顔のセナ。

 どこか足取りも重かった。

 なぜ、そんな顔をするのか、見当もつかない。

 不可思議に、首を傾げるだけだ。


 だから、素直に、セナの質問に答えていく。

「そうだな。俺は、あまりいかないが、カーチスたちは、よくやっている」

「……トリスも。それに、真面目そうに見えた、クラインって人も?」

 声音が厳しく、眉間にはしわが寄っている。


(どうしようもない連中なんだから……)


 目の前に、しっかりと、トリスの顔を掠めている。


(その手の話には、興味なさそうだった気がしてたのに)


「あの二人も、めったに行かない」

「そうなの?」

「誘われて、渋々いく程度だ」

「そう……」


 やや力が入っていた肩が和らぎ、どこか、安堵するセナであった。

 秘密基地であった、魔法科のリュートの友達の顔を、一人一人思い返す。


 カーチスやブラーク、キムの三人が、ちゃらちゃらしている感じがし、瞬時にかかわりたくないと、印象を巡らせていた。

 けれど、物静かな雰囲気をしていたクラインに対しては、割りと好印象を抱く。

 とんでもない友達ばかりでは、なかったと言うことねと着地していた。


「楽しいやつらだろう?」

 嬉しそうに、友達を自慢している。

 楽しいと言うよりも、迷惑な感じよと、突っ込みそうになるのをやめた。

 友達を貶されれば、気分がいいはずがないだろうし、この場で、言い争いになるのは必至で、これ以上帰るのが、遅くなるのは、不味いと言う懸念が生じたからだ。


「カレンが、大変そう……」

 遠い目で、独り言を呟いていた。

 知り合ったばかりのカレンの苦労が、手に取るように理解したのである。

「何で? カレンが大変なんだ?」


 多大な迷惑をかけている意識がない。

 幸せなやつと、横目で眺めていた。


「何でだよ」

 何も言わないセナに、声音が荒くなった。

「私と、同じ匂いを感じただけど」

「匂い?」

 ますますわからないと、首を捻った。


(ホントに、無自覚なんだから!)


「何で、セナも、大変なんだ?」

 答えが見えそうもない、底なし沼に陥っているリュート。

 眉間には、いくつものしわが刻まれていた。

「不毛なところを、ぐるぐる回っていないで、帰って来なさい」


「セナ?」

「魔法科って、面白い人たちが、多いのね」

「もっと。いいやついるぞ」

 友達の話を振られ、すっかり先ほどまで、引っ掛かっていた疑問を忘れ去っていた。

「へぇ……」

「ところで、セナも、合コンに来るか」


 単純に、友達を褒められ、さらに一緒に遊べば、みんなの親交が深くなり、楽しくなると提案したのだった。

 ぴたりと、無表情でセナが立ち止まった。

 それに続き、ニコニコ顔のリュートも、止まったのである。


 友達を面白いと評され、心が弾んでいたのだ。

 様子が変わったことに、気づかない。


「……何て、言った?」

 低い声音で、セナが聞き返した。

 顔も、伏せ気味なので、表情が読めない。

「合コンいかないかって、誘った」

「誰を」

「セナを」


「……とても、重要なことを、忘れていない?」

 きょとんとした顔で、まだ表情を窺えないセナを見つめている。

「私が、女ってこと、忘れていない? 行く訳ないでしょ!」

 捲くし立てられ、唖然としている。

 だが、その顔は、どこか、おかしなことを言ったかと、考えあぐねいていた。


(何で、こんなにセナが怒っているんだ? 俺、ただ飲み会に、誘っただけなのに)


 パチパチと、瞬きを繰り返している。

 強い足音で、リュートの元へ詰め寄っていく。


 あっという間に、胸倉を思い切り掴んだ。

「何で、女の私が、合コンに行かないと、いけないの!」

 不愉快な顔を、前面に押し出している。

 これまでにないぐらいに、怒っているが、その原因が思い当たらない。


「……カーチスたちが、ナンパした女も、来るぞ」

 胸倉を掴んでいる手が震えている。


(飲み会で、怒ることなのか?)


「一緒にするな」

 形相と共に、声を張り上げた。

 あまりのことに、思わず、身を正す。

「一緒じゃないのか」

 ますます、火に油を注ぐ状態に、陥ってしまう。


「一緒じゃない」

 殺気の籠もった眼光に、さらに頓珍漢な言葉を投げ下ろす。

「じゃ、セナって、男なのか?」

 不可思議そうな眼差しを、リュートが注いでいた。

「何で、そこで、私が、男にならないと、いけないのよ」

「だって、一緒にするなって……」

「そこじゃないでしょ!」

 んっ?と、小さく首を傾げているリュート。


「ナンパされた女と、一緒にするなって、言っているのよ! 私は、ほいほいとついていくような女じゃないの! わかった! リュート」

「ほいほい、来ないぞ。トリスとクラインがいて、やっと、来るらしい」

 カーチスたちが、話す苦労話を蘇らせ、カーチスたちだけでは成功せず、トリスたちを連れ、ようやくナンパに成功した話を披露したのである。

 聞いていないようで、一応、耳に入り込んでいた。


「リュート……」

 地響きのような声音が、轟いていた。

 どうにか、落ち着かせようと、リュートなりに、言葉を紡いでいく。

「とにかく、カーチス曰く、合コンは、楽しいらしい。可愛い子と、話せば、セナの気分は、よくなるからさ、来いよ」


 セナの口角が、引きつっている。

「……いかない」

 何を怒らせているのか、理解していないリュートに言っても、無駄と諦めるしかない。

「何で」


「言っとくけど、リュート。あなたも、ダメだからね」

「何で、約束したんだぞ」

「当たり前でしょ」

「これは、授業なのよ。だから、ダメ」

「約束した」

 意固地になっていった。


「約束しようが、しまいが、関係ない」

 ブスッとした顔に、さらに言い包める。

「勝手に、抜け出したことがばれれば、連帯責任になることを、忘れないで」

「……見つかるミスでも、すると思っているのか」

 堂々と胸を張っているリュートだった。


「あのね……」

 頭を抱え込むセナである。


「俺を、誰だと思っている」

「ダメなものは、ダメなの」

 諦めていないセナ。

「絶対に、認めない」

 ふと、不貞腐れ、リュートが横を向いてしまった。

 決着がつかない状況で、二人は剣術科がいる場所へと帰っていった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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