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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第81話

 連れ戻しに来たカレンにより、カーチスたちは、無理やりに、授業に参加させられた。

 クラスメートのほとんどが、高度な精霊呪文に、悪戦苦闘している。

 ほぼ取得しているクラインが、できない友達に、わかりやすく教えていた。


 暖かな陽射しに、穏やかな風。

 上を見上げれば、美しい蒼穹が広がっている。

 視線を降ろすと、青々と茂っている緑の芝生。


 その中に、色とりどりな花が咲いていた。

 そして、友達が、必死に精霊と向き合っている。

 カレンは、他の女子友達と一緒に挑戦し、失敗を繰り返していた。

 そんな姿を眺めるのに、飽きてしまった三人が、ぼんやりとしている。


 初めのうちは、カレンの鋭い眼光を恐れ、精霊呪文に取り組んでいたものの、自分たちから、意識がそがれると、ちょうどいい石に腰掛け、サボっていたのだった。

 ただ単純に、試験にならないと、集中できなかったのだ。


「真面目にやっているな」

 ボソリと、カーチスが、クラスメートの姿を見つめながら漏らしていた。

 やっていないのは、自分たちと、ここにいないトリスだけだった。

 つい最近まで、いたずら仲間だったやつらまで、真剣な面持ちで、一つでも多く取得しようと努力している。

 そんな姿を、悄然と、眺めていた。


 卒業を、数年後に控え始めると、みんなで、バカ騒ぎしていた人数が、一人減り、二人減りとなり、カーチスたちしか残っていない。

 誰もが、卒業後の進路で、これまでサボっていた授業を、真面目に受け出していた。


「そうだな」

 気が抜けたように、ブラークが相槌を打った。

 三人の成績は、A組の中でも下位だった。

 他の生徒以上に、励まないと厳しかったのだ。

 それにもかかわらず、いっこうにやる気が漲っていかない。

 まだまだ、遊びたいと、抱いていた。


 ふと、キムが、ある方向を指差す。

「見て、あれ」

 促されるように、その指し示す先に、視線を巡らした。


 研究マニアのバドが、仲間数人を捕らえている。

 捕らえた仲間を、不可解な実験に、使用としているのは明白だった。

 魔法科では、常に、二番手につけているバドであるが、危ない実験などを、繰り返している問題児の一人でもあった。

 そのせいもあり、決して、研究にのめり込んでいる最中は、誰も近づかない。


 捕まったら、一巻の終わりだと、彼らの脳裏を掠めていた。

 天才と謳われているリュートでさえも、何度も危険に遭遇し、深手を陥ったほどだ。


「最悪だな」

「ベッドの中で、何日も、過ごしそうだな」

「試験後で、よかった……」

 複雑そうな表情を、キムが覗かせていた。


 これまでの経路を辿ると、ベッド送りになる予測ができたからだった。

 数々のバドの研究実験の対象に、クラス全員が何度もやらされ、年々、身体が頑丈になっている事実もある。

 それに、リュートたちのいたずらの犠牲の耐久性でも、強くなっていた。

 日々、過激になっていく研究実験にも、耐えられるだけの身体が、でき上がっていても、負傷者が止まない状況だった。


 バドの方でも、徐々に、研究のレベルを、上げていったからだ。

 三人は、バドからの呼び出しが掛かっても無視し、近寄らない。

 できるだけだ。

 半分ぐらいは、バドに捕まってしまう。

 自分たちの代わりに、彼らが務めるのを、心から感謝していた。


「ありがとう。君たちの尊い犠牲に、僕たちは……」

 熱く盛り上がっているブラークの後頭部を、カーチスが叩く。

「痛っ!」

 両手で、後頭部を押さえている。

 手加減なしで、叩いた。


「何するんだよ」

 目を細め、呆れ顔のカーチスを睨む。

 その瞳は、うっすらと涙目だ。


 殴ったカーチスは、落ち着いた顔つきで、バドたちの様子を注視している。

 抵抗を試みて、暴れているが、完全に捕獲されるのは、時間の問題だった。


「ここから、離れた方がいい」

「何でだ」

 不貞腐れ気味に、吐き捨てた。

「最初に、俺たちに声をかけたと言うことは、頑丈なやつを求めているって、ことだろう? だから、こっちに回る前に……」

 最後まで聞かなくても、ようやくその先が読めた。

「わかった」

 すっと、ブラークが立ち上がる。


 その顔に、さっきの痛さが感じられない。

 痛みよりも、移動を重視したのだった。


「そうだね」

 怯えているキム。

 彼らの行動は、迅速だった。

 すぐさまに、移動を開始したのだ。


 カレンから、お叱りを受けない距離で、バドから見つからない距離を考慮し、僅かに森に入ったところで落ち着く。

 少し、行ったところで、数人のクラスメートがいた。

 カーチスたちの存在には、気づいていない。

 それほどまでに、精霊呪文の取得に励んでいる。


「ここなら、安全だろう」

 周囲を見渡しながら、カーチスが木に凭れ掛かった。

 バドの気配を察知したら、動けるように腰を下ろさない。

 ひとまずの危機から、脱出でき、キムが大きく息を吐く。


「当分、時間を稼げるだろう」

「できれば、あれで、終わってほしいけど」

 か細い声で、キムが願望を口にした。

「無理だろうな」

 のん気に、ブラークが構えていた。

 それに、カーチスが追随する。

「もたないはずだ、やつらでは」

 だから、ここへ逃げてきた。


「それに、ここには、他のクラスがいない。俺たちのことを諦めて、他のやつらを求めて、校舎に向かうなら、万々歳だが……」

「その確率は、低いだろうな」

 冷静に、ブラークが分析内容を呟いた。


 クラスメートの誰よりも、彼らが、バドの犠牲になっていたのである。

 そのために、比較的に身体の造りが強硬になり、それが逆に、災いとなって、何度も雇用されている原因でもあった。

 リュートやトリス、クラインは学院にいなかったり、人の少ないところで、読書をしていたりして、最近は上手く、回避し、災難を免れていた。


「う……」

 頭を抱えながら、呻き声を漏らした。

「そうびくつくな、キム」

 狼に襲われたうさぎのようなキムだった。


 ブラークが哀れみの視線を投げかける。

 この中で、一番キムがバドの犠牲をこうむってきた。


「だって……」

 過去の回想が蘇り、恨めしそうな眼差しを送っている。

 何度も、キムを見捨てて二人は、逃げた口だ。


「昔のことは、思い出すな」

 何を思い出しているのか、安易に、カーチスが想像できた。

 それと同時に、どうするかと、今後の動き方の方針を巡らせている。


(バドは、納得するまで、実験を繰り返すからな……)


「僕を、エサに逃げ出したこと」

 ようやく、キムの発言で、ブラークも察し、苦笑い。

「……大して捕まった差がないだろう。結局、その後に、俺たちも捕まったし」


 キムを生け贄に出しても、ブラークも、カーチスも、足りないと、最後に確保されていたのである。

 じっとした灰色の目が、ブラークを捉える。

「悪かったって」


 拗ねている姿を放置し、どうする?と、ブラークに目配せする。

 やれやれと、首を竦めていた。

 しばらくの間、誰も口を開かず、それぞれに佇んでいる。


「みんな真面目に、授業していたね」

 拗ねていたキムが、ボソボソと紡いだ。

「そうだな」

 面白くない話題だったが、ブラークが頷いていた。

 キム同様に、カーチスも考え耽っていたのだった。

 そして、卒業が近いのを意識しざるをえない事実に、心が萎えていた。


 腕組みをし、木に凭れているカーチス。

「卒業したら、どうする?」

 上目遣いで、キムが二人を窺っている。


「僕は、まだ決まっていないけど……」

「俺は、未定だ」

 ブラークが答えた。

 最後に残っているカーチスを、一斉に二人が捉えていた。

 黙ったままだからだ。


「カーチス?」

 話を聞いていなかったのかと、キムが声をかけた。

「……漠然だけど、決めている」

 まさか、決めていると、思ってもいなかった。

 珍しく真面目な表情から、目が離せない。


「どんな?」

 恐る恐ると言う眼差しを、キムが傾けている。

「まだ、秘密だ」

「えっ」

 自分たちは、友達ではないのかと、ショックを受けていた。

「俺たちにもか?」

 隠し事をしている親友を、ブラークが咎めた。


「そうだ。もう、しばらく内緒だ」

 納得できない答えに、ブラークが、ぷいと横を向く。

 意外と、頑固なところがあるカーチス。

 問い詰めても、吐かないことを把握していた。

 だから、せめてもの、抵抗を表したのだった。


「遠くへは、行かないよね?」

 探るような、臆病なキムが、問いかけた。

「遠くへは、行かないさ」

「本当だね」

 強く、念を押した。


「ああ」

「よかった……」

「今のうちは、まだバカをやっていたいな」

 ボソリと、本音をカーチスが漏らしたのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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