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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第79話

 戻ってこないトリスたちを、カレンが連れ戻そうとしている。

 秘密基地へと、向かっていた。

 放任主義の担任ラジュールは、何も言わないが、せっかく授業に参加しているのだから、きちんと受けさせたいと、意気込んでいたのだ。


「もう、珍しく参加していると、思っていたのに」

 歩く足も、どこか乱暴だ。

 全員揃って、受けるのが珍しく、カレンの心は、いつもの授業より躍っていた。

 それなのに、いつの間にか、サボり組のメンバーが、姿を消していたのだった。


「絶対に、連れ戻すんだから」

 熱意と共に、アップルグリーンの瞳に、逃がさないと言う色が含んでいる。

 サボり組が、どこにいるのか、すぐに見当がついていた。

「確か、この辺当たりを、行ったところにあるはず……」

 何度か、オラン湖の秘密基地に、来たことがある。


 久しぶりで、正確な位置まで把握しておらず、うろ覚え状態で足を進めていた。

 ようやく、数度、躊躇しながらも、秘密基地に辿り着く。

 ふふふと、口角が上がっている。


 やる気が漲っていた。

「見てなさい」

 勢いよく、ドアを開け放つ。


 突然の侵入者に、カーチスたちが、瞠目していた。

 唯一、リュートだけは、カレンの存在を察知していたのだ。

 害がないとみなし、誰にも知らせていない。


「ゲッ。カレン」

「何で」

「嘘だ」

 カーチス、ブラーク、キムが、思わず、狼狽し後退る。


 怒っているカレンの形相。

 フリーズしていたものの、クラインが、すぐに平静を取り戻していた。

 面食らっているカーチスたちを放置し、グルリと見渡すカレン。

 ここに、トリスの姿がない。


(相変わらず、ちゃっかりしているわね)


 すでに、消えていた。

 仕掛けてある罠の状態を確かめに、出て行ってしまったのだった。


「さすが、カレン」

 朗らかに、クラインが褒めていた。

「甘く見ないで。罠に引っ掛かる、私じゃないわよ」

 じっくりと、絞めてやると言う眼差しに、カーチスたちが慄いている。

 一年生の頃から、何度も、カレンに絞められていたのだ。


 秘密基地の周囲に、罠や誰かが来たことを知らせる呪文など、様々な仕掛けが施されていた。

 だが、それらの仕掛けを、カレンが潜り抜け、やってきたのだった。

 一年生からの付き合いがあるので、どんな罠や呪文を使っているのか、事前に連想できたのである。

 だから、罠に掛からず、無傷で姿を現した。


「何年、付き合っていると思うの?」

 顔を引きつらせ、三人は二の句が出てこない。

 別な場所にすれば、よかったと顔を見合わせ、落胆してしまう。

「お見事」

 拍手を送っているクラインだ。

 それに、賛同する形で三人も送った。

 嬉しくないわよ、そんなことと、ジト目でカレンが窺っている。


「二つ、引っ掛かったぞ」

 平然と、場の空気を感じないリュートだった。

「そんなはずはない」

 仕掛けた罠を、すべてクリアしてきたはずと、声が尖っていた。


 動じないリュート。

 カレンが、ギロリと捉えている。

 そして、ゆっくりと近づく。

 凄みのある睨みに、三人が小さな悲鳴を漏らしていた。

「いや。二つ、引っ掛かっている。現に、俺は、カレンが来ることを、知っていた」


(((だったら、教えろよ)))


 さすがに、声を出して、突っ込む勇気がない。

 引っ掛かっていることに、気づいていなかったが、二人の様子を、傍観していたクラインが、カレンが来ることを見越していた。

 珍しく、授業に参加しているカーチスたちを、見逃すはずがないと、推量したのだった。

 顔色一つ変わっていないリュートに対し、眉間のしわが濃くなる。


 触れだけでも、弾けそうな雰囲気に、リュート以外の誰もが、口を閉ざしていた。

 ただ、黙って、成り行きを窺っている。

 その均衡を破ったのは、カレンだった。

 リュートが、嘘をつくはずがなかったからだ。


「全然、気がつかなかった」

 降参よと、首を竦めた。

 だろうと、穏やかにリュートが笑う。

「まだまだだな」

「……。ところで、リュート。来ていたの?」


 久しぶりに会うリュートに、笑顔を覗かせていた。

 剣術科に移ってから、以前よりも、顔を合わす機会が、少なくなっていたのだ。


「相変わらず、いないくせに、トップなんて、ムカつくわね」

「受けろと言われたから、受けただけだ」

「変わらないわね、性格までは」

 きょとんした顔を、リュートが覗かせていた。

「でも、頑張っているわね。剣術科では、中盤の成績とは」

 剣術科での実力テストを賞賛した。


「知っているのか?」

 意外だなと、目を見張る。

「当たり前でしょ。友達なんだから、ちゃんと、掲示板見てあげたんだから」

 剣術科に移ったリュートを案じ、張り出された結果を、見にいっていた。

 他の友達の結果も、すべて確認している。


「そうか」

「遊びに、来たの?」

「近くで、野宿体験学習で来ていたから、寄ってみた」

「そう。ところで、サボり?」

 目を細め、リュートの顔を窺う。


「違う。ほぼレポートが終わっていたから、休憩だ」

 魔法科にいた時のサボりように、思われていることが許せず、噛み付いた。

「休憩ね」

 疑り深い眼差しを、注いでいる。

「休憩だ」

 強い声音で、言い捨てた。


「……わかった。休憩ね」

 剥きになっているリュートに、苦笑している。

 カーチスや、トリスから、いろいろと剣術科で、頑張っている話を、耳にしていたので、魔法科にいた時のようなサボりではないことを察していた。

 実力も、肌で感じ取っていたので、レポートに苦慮しているとは、思ってもいない。


「四人に、伝言よ」

 四人に対し、カレンが向き直った。

「伝言?」

 誰だろうと、四人が首を傾げている。

 伝言の相手が、浮かばない。


「バドからよ」

 バドの名に、怪訝の色を覗かせた。

「用があるから、来てくれって」

 状況を楽しむようなカレンの笑みだ。

 容易に、バドの実験道具にされる絵が描けたのである。


「マジかよ」

 誰の顔にも、行きたくないと滲み出ていた。

「伝えたからね。リュート、あなたが証人よ」

「ああ。構わない」

 裏切り者と言う顔で、ブラークが睨む。


 リュートの隣に見かけない顔を発見し、カレンが凝視していた。

「あ。これ、セナ」

 また、短い紹介を、リュートが行った。

 あまりに、短い紹介に、カレンがリュートらしいと、小さく笑い、ムッとしながら、ちゃんと紹介しなさいよと、眼光で威圧している。

 慣れたように、カレンから、簡単な紹介をした。


「確か、『十人の剣』の人よね? トリスから、少し話を聞いているわ」

 トリスや、カーチス経由で、以前からセナの名前を、何度も耳にしていた。

 だから、セナと言う短い響きだけで、すぐにどういう人物か、把握できたのだった。

「えぇ。剣術科七年生、セナ・アスパルト」

 セナが握手を求め、カレンがそれに応える。


「リュートのお守り、大変でしょ?」

 労を労った。

 目に見えるように、セナが苦労している姿が浮かぶのだ。


「お守りとは、何だ」

 お守り扱いに、頬を膨らませた。

 お守りされる言われはないと、自負している。

 周りを騒動に巻き込んでいる意識が、本人にはない。


「お守りよ。すぐに、問題を起こすんだから、あなたたちは」

 グルリと、カレンが、これまでに問題を起こしてきた顔を、一人一人眺めていた。

 リュート以外は、そうした認識を持っていたので、何とも言えない顔で応えている。

 最後に、一番の問題児に、顔を巡らした。


「いつも、怒られていたでしょ?」

「……。確かに、怒られていた」

 尻つぼみように、声が聞こえなくなっていった。

「聞こえない」

 にこやかに、カレンが聞き返した。

「怒られた!」


 事実、説教や罰掃除などを、受けていた経緯があったので、誰の口も噤んでいる。

 満足な答えに、したり顔のカレン。


 みんなを、やり込んでいる姿に、セナが感嘆していた。

「リュート一人でも、てんてこ舞いなのに。カレンはみんなを?」

「そうよ。まだ、他にも、数人の問題児がいるけどね」

 陽気で、貫禄たっぷりに、カレンが笑ってみせた。

 姉御肌で、みんなの世話を焼いていたのだった。


「秘訣を、教えてほしいな」

 振り回されている感が、セナの中であった。

 だから、少しでも、リュートの操縦方法を学びたかったのだ。

「いいわよ。いくらでも、教えてあげる」

「助かる」


 問題児の面倒を見るのも、大変よねと、互いに意気投合し、誰も近寄らない。

 むやみに近寄って、二人からの攻撃を避けたかった。




 お喋りに花を咲かせている最中、忍び足で、カーチスがリュートに寄っていく。

 そして、角に連れて行った。

 首に腕を回し、話に夢中な二人に背を向け、聞こえないような態勢を取る。


「何だ?」

 訝しげなリュートだ。

 ロクな話じゃないと、身構えている。

 か細い声で、カーチスが二人に警戒を怠らない。


「……合コン、こいよ」

「合コン?」

 露骨に、いやな顔を露わにする。


「この前、今度は、付き合うって、言っていただろう?」

「……、面倒だ」

 約束をしたものの、乗り気ではない。

「トリスと、クラインは、参加することになっている」

 二の足を踏む姿に、ごり押しする。

 どうしても、参加させたかった。


「だったら、俺が、いかなくっても」

「ダメだ。せっかく二人も、参加するんだ。リュートも、参加」

 強引な態度で、約束しただろうと、カーチスの黒い瞳が問いかけている。


「勝手に、決めるなよ。俺にだって、都合がある」

「だって、そうしないと、来ないだろう」

「……」

 見事に、図星だ。

 負け時に、反論を試みてみるものの、上手くいかない。


「今夜、決行するから」

 間髪いれず、話を進めていった。

 そうしないと、グタグタと、渋るのが明白だった。

「今夜って……」

 さすがに、日にちまで、指定されるので目を見張る。


「こういうことは、早い方がいい」

「……忙しい」

 最後の足掻きをしようとすると、その上から、カーチスの声が重なる。

「ダメだ。久しぶりに全員参加。最近は、みんなバラバラなんだから、たまには付き合えよ」


 絶対に拒否するのは、許さないと、双眸で訴えていた。

 切羽詰ったようなカーチスに、徐々に声が弱まっていく。

「剣術科なんだぞ……」


「リュートの腕だったら、大丈夫」

「よく、そんなことが言えるな」

「だって、一年の時からの付き合いだろう、俺たち」

「……わかった」

 小さくガッツポーズし、それを眺めていたクラインたちが、リュートも、参加することを把握したのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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