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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第76話

 バッサがカイルから、叱責を受けた件が片付き、落ち着きを取り戻したところで、飲み水の補給に行っていた、セナとローゼルが帰ってくる。

 他の班から、先ほどまでの騒動を耳にし、災難だったねと、叱られたバッサを哀れんだ。

 騒いでいたのが、嘘のように、班ごとで、それぞれの活動に入っていった。




 課題のレポートを、リュートが真面目に取り組んでいる。

 リュートたちの一班は、この時間帯を、課題のレポートに費やすことにし、バラバラに行動していたのだった。

 活動内容は、班ごとで、時間配分を決めて行っていた。


 羊紙に、書いていた、手が止まる。

 ふと、顔をあげ、キラキラと、輝きをみせる美しいオラン湖を捉えていた。


 周辺には、珍しい植物に、野生の動物も、見え隠れしている。

 オラン湖は、フォーレスト学院の敷地にある、湖の中で、中ぐらいの大きさを占めていた。

 シャール大陸の南東にある半島全体が、学院の敷地となっており、学院の他にも、四つの村や、いくつもの森や湖などが点在しているのだ。

 フォーレスト学院は、とても自然が溢れている学院だった。


 湖の向こう側へと、視線を注ぐ。

 その場所は、現在、魔法科の生徒たちが来ていた。

「カーチスたちが、来ているのか……」

 何気ない呟きが漏れていた。

「何を、やっているんだろうな」

 懐かしい面々の姿を膨らませる。


 不意に、口元がニンマリとしていた。

 魔法科の授業風景の記憶が、呼び起こっていたのだ。

 一人、輪から外れ、罠の仕掛けを作っているトリス、真面目に授業に取り組んで、わからない友達に、教えているクライン、いたずらの道具を編み出しているカーチス、ブラーク、キム。

 そんな姿が、ありありと、目の前に映し出されている。


「楽しそうだな……。そう言えば、ここで……」

 ふと、昔みんなで、使用していた秘密基地が、遠くないことを思い出していた。

 秘密基地がある方へと、漆黒の双眸を傾ける。

 入学して間もない頃、トリスがこの近くで、使われた形跡のない小屋を見つけ、遊び場となっていたのだ。

 そんな秘密基地の拠点が、いくつもあった。


「そう遠くないな」

 自然と、口元が緩む。


(ここ数年、行ってないか)


「何、考えているのよ」

 声に導かれ、振り向く。

 すると、怪訝そうな顔で、セナが睨んでいた。


 班のみんなが、きちんと、課題のレポートに、取り組んでいるのかと、班長でもあり、責任感が強いセナが、自分のレポートも、そこそこに、自主的に見回りをしていたのである。

 以前から、ダンとパウロに、怠ける要素が見受けられていたからだ。

 そこへ、転科してきたリュートが加わり、さらに怠けクセが悪化していった。


 少し前から、考え事に耽っているリュートを、観察していた。

 いたずらな笑みを滲ませた瞬間。

 セナの危険を知らせるシグナルが鳴り、よくないことが起こると予感させた。


「秘密基地に、行こうと思ってさ」

 あっけらかんと、悪びれる様子もない。

 どこか、その顔は楽しげだった。

「はぁ」

「どうなっているんだろうな」

 爛々と、瞳が輝きを増している。


 堂々としている姿に、信じられないものを見るような目つきで、見入ってしまう。

 徐々に、セナが肩を落としていった。

 これが、リュートだと思い至り、クセになりつつある、眉間のしわを伸ばす。

 こんなことが、何度も、繰り返しあり、そのたびに、注意を行っていた。

 けれど、いつしかケンカと言う末路を、辿っていった。


(いい、セナ。冷静に、説き伏せるのよ)


 ゆっくりと、深呼吸をし、浮き足立っているリュートを捉える。

「あのね……、カイルに、決められた範囲から、出るなって、言われているでしょ? それに、今は、課題をやるって、決めて、やっている時間でしょ。全員で、ちゃんとした課題のレポートを出さないと、班全体で、罰を受けさせられるのよ」

 怒声を出したいのを我慢し、状況を理解させようと、諭すように務めた。

 騒ぎを起こさないようにだ。


 ケンカを始めれば、目立つに決まっていた。

 非常に、機嫌が悪いカイルに、叱られる訳にはいかない。


「大丈夫だ。バレなきゃいい」

「だから……」

 ギリギリのところで、バカじゃないの!と、張り上げたい衝動を堪えた。

 ますます、リュートが火に油を注ぐ。

「レポートだったら、ほぼ終わりに近い」

 自信に満ちた声音に誘われ、ギラギラな眼光で、羊紙を覗き込む。


 自分で、書いているレポートより、大部分ができており、自分が書いていた内容よりも、しっかりと仕上がっていた。

「……」

 だろうと促す視線に、僅かにムッとする。


(殴ってやりたい。……セナ、我慢よ。こいつと、やり合っても、時間の無駄なんだから)


 ブツブツと、唱えているような姿に、セナって、魔法使えたっけ?と、リュートが訝しげに、首を傾げていた。

「これは、いいことなんだから……」

「セナ?」

 か細い声で、上手く聞き取れない。


 きょとんした顔を、リュートが覗かせていた。

 深い思考の渦へと、セナが入り込んでいく。


(さすが魔法の天才。けど、この短時間で、こんなに、正確で、内容が濃いものを、書くなんて、凄くムカつくんだけど。……ダメよ、ダメよ。ちゃんと、やっているんだから……)


 オラン湖の周辺の、生態や植物の生殖などを書き、ここを拠点とした場合の、安全な夜営を張る場所や、手に入る食料なども、書くことになっていた。

 そして、ここの地理を利用し、敵を仕留めることができるのか、逆に、どうやれば、敵の攻撃から、凌げることができるのか、その方法も課題となっていた。

 それを、リュートは緻密に詳細な絵もつけ、羊紙に書き込んでいたのだった。


(油断できないわね)


 まったりとしているリュートを、半眼していた。

 現在の成績では、セナの方が遥かに上で、この前、行った実力テストも、差をつけて上だった。


 リュートの成績は、ちょうど真ん中の位置で、実技では、まだ転科して間もないと言うこともあり、下の方だった。

 だが、筆記では、上位につけていた。

 総合の成績で、中盤に浮上していたのである。

 辛うじて、筆記では、セナの方が、ほんの僅かな点数の差で上だった。

 抜かされるのも、近いだろうと抱く、今日この頃だった。


(絶対に、負けたくない!)


 ブラウンの瞳に、闘志が漲っていく。

「セナ?」

 何も、喋らなくなった顔を覗き込む。

 ふと、意識が戻った目の前に、リュートの顔が入り込んでいた。

「セナ?」

「な、な、何でもない」


「そうか。だったら、行ってくる」

「ちょっと、認めないって、言っているでしょ」

 すっかり、行く、行かないの論争を、していたことを思い出した。

「何で?」

「ダメなものは、ダメなの」


 頭から、否定するセナに、意地になっていく。

「行く」

 語気を強め、言い切った。


「行かせない」

「絶対に、行く」

 黒曜石の瞳に、どんな手段を使っても、行くぞと露わになっている。

 それに対し、全身で、止めようと言う気迫が、セナに込められていた。


 睨め合っている二人。

 幾人かの、息を漏らす音だけが、聞こえていた。

 同じ班のダンも、パウロも、ローゼルも、二人が何で揉めているかまでは、距離が離れていたため、把握できない。

 いつもの他愛無い、口ケンカだろうと結論づけ、課題のレポートに、意識を戻していた。


「魔法科では、許されていたけど、ここでは、集団行動が鉄則よ。それを破ったら、班ごとで、罰を受けるって、何度、言えばいいの?」

 完全に、剥きになっているセナ。

「バレないようにする」

 大丈夫だと、リュートが胸を張っている。


「どっから、そんな自信、出てくるのよ、いい加減に、しなさいよね」

「これまでの経験?」

 可愛らしく、首を傾げているリュートだった。

 真面目に答える姿に、さらに怒りが増してくる。

「威張れることではない」

「威張っていない。セナが聞いたから、答えただけだ」

 至って素直に、思ったことを、口に出していた。


「……」

「こっちには、目が回らないさ」

 何で、セナが怒っているのか、不明瞭だと抱いても、リュートの視線の先に、カイルが遊んでいる生徒を、叱っている光景に視線に傾けていた。

 生徒に対し、叱責しているとは言え、カイルは周りに神経を巡らせている。

 けれど、リュートたちがいるところまでは、とても向きそうもない。


「だからってね……」

「当分は、あっちに注がれているだろうし、それに……」

 セナたちは、気づいていなかった。

 だが、他の教師が、こちら側を窺っていることを、リュートはすべて察知していた。


 別段、大したことではないと、あえて、誰にも教えなかったのである。

 剣術科の生徒たちを、監視している教師も、広範囲に散らばっている生徒たちを、窺っているのが精いっぱいで、こちら側に向けてくるとは、到底思えなかったのだった。


「それにって、何のこと?」

 渋い表情のまま、セナが誰もいない森へと、傾けているリュートを見つめている。

「別に」

 知らなければ、知らない方がいいだろうと思い至り、余計なことを言わない。


「セナの口さえ、黙っていれば、大丈夫」

「……だったら、私も行く」

 これ以上、止めようとしても、騒ぎを大きくし、カイルに大目玉を喰らう可能性の方が大だと踏んだのだった。

 だったら、面倒を最小限に収めるため、自分がついていった方が、懸命だと結論を素早く出したのだ。


「えっ」

 面倒臭い表情を、滲ませている。

「何? その顔。私が行ったら、いけないの? 当分は、バレないんでしょ?」

「……」

 眉間にしわを寄せていくリュート。


「その秘密基地に、連れて行ってよ。何か、問題でもあるの?」

「いや。ないけど……」

 居直っているセナに、たどたどしい。


 秘密基地と言っても、魔法科の友達も、知っていた。

 だから、セナが知っても、何も問題がなかったのだ。


「問題児ばっかりが、集まっているところだから、さぞ面白いものが、出てくるでしょうね」

 挑むような眼差しを、セナが傾けていた。

 受けるリュートは、全然、気づかない。

 ただ、聞かれたことに、答えるのみだ。

「面白いか、どうかは、知らないが、花火や爆弾、厄介な道具などあったか……」

 近頃、いっていない秘密基地を、おぼろげに思い出しながら、指を折っていった。


 様々な道具が、無造作に放置していた。

 本人たちに自覚がないが、どれも危険なものばかりだ。


「……ホント。ロクなものが、ないわね」

 列挙しているものに、眉を潜めている。

「でも、最近、使っていないから、劣化しているだろうな」

 微かな呟きに、セナの目が見開く。

 未だに、バカをやっているのかと、想像していたからだ。


(やっていないんだ……)


 魔法科の校舎から、何度か、大きな爆音を聴いたことがあった。

 けれど、最近は、耳にしていなかったと巡らせている。

 爆音の原因が、リュートたちだったと、後に知ることとなったのだ。


「他の基地も、そうだろうな」

「他って。そこ以外にも、あるの?」

「ああ。他にも、あちらこちらにあるぞ」

 開いた口が、塞がらない。


(あんたたち、これまでに、一体、いくつもの問題を起こしているのよ)


 突っ込みたいのを堪えた。

「どこも、使っていないはずだ。使うとしても、カーチスたちだろうし、あいつらは、最近、村に行く方が多いからな。……もしかすると、トリスが道具の置き場所として、使っている可能性はあるか……」

 思ったことを、そのまま吐露した。

 寮の部屋に、置ききれなくなっていたのだった。


「置き場所?」

「いろいろだ」

「ロクなことしていないわね」

「そうか」

 のん気に答える姿に、頭痛を感じ始めている。


「行くんだったら、行くぞ」

 声を掛けられ、さっさとリュートが歩き出した。

 その後を、胡乱げなセナが追っていった。

「ちょ、ちょっと、待ってよ」


読んでいただき、ありがとうございます。

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