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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第4章 ドッキドッキな野宿体験学習
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第74話

 リュートとパウロの模擬戦が終わった。

 満面な笑みを零しているリュートだ。

「……」

 パウロは剣を仕舞い、ホッとしているものの、負けたことに、悔しさが滲んでいる。

 だが、汗が諾々と流れ、喋ることが覚束ない。


「パウロ、よろしく」

 視線を動かすと、のん気に、ダンが手を振っていた。

 勘に触れるが、何も言い返せない。

 ブスッとした顔のままだ。

「次は、勝てよ」

「……」


 突如、別な声が、乱入してくる。

「よっ。随分と、暇してるな」

 森の奥から、軽快な足取りだった。

 魔法科が宿泊しているところから、のんびりと、トリスが徒歩で来たのだ。

「いつもの、サボりか?」

 慣れた光景に、呆れながらダンが返した。

 魔法科のトリスがいることが、当たり前の日常になっていた。


「来たのか」

 平然としているリュート。

 息の荒いパウロは、何も言えない。

 他の剣術科の生徒たちは無視だ。


「サボりは、サボりだな」

 悪びれる様子もないトリスだった。

「こんなところまで、よく来るな」

 まさか、ここまで来るとは、ダンも思っていなかった。

「この近くで、魔法科も、泊り込みの授業をしているから、そのついでに、少し覗きに」


「魔法科も、来ているのか?」

 意外な事実に、リュートは驚きを隠せない。

 精霊呪文の勉強のため、オラン湖の小屋に来ていると伝える。

 呪文に、縁のないダンが首を傾げていた。

 精霊呪文と聞いても、ピンとこない。

「精霊呪文? そのために、ここに?」

 辺鄙なところに、こないと、使えないのかと、眉間にしわを寄せている。


 そんなダンを気にせず、トリスが飄々としたままだった。

「いつもより、時期がずれたけどな」

「そう言えば、そうだな」

 不可思議だなと抱きつつ、リュートが首を傾げた。

 サボりつつも、大きな枠組みの中での、授業内容を把握していたのだった。


「そっちだって、例年よりは、遅れているだろう」

 納得いってそうもないダンを、トリスが捉えている。

「ああ。本当だったら、もう少し早い時期に、執り行われていたからな」

「でも、魔法科と一緒になるなんて、これまでなかったじゃないのかな」

 掠めていた疑問を、呼吸が戻ったパウロが口にしていた。

「時期を、ずらしてやってきたからね」

 トリスの回答に、そうなのかと、抱くダンとパウロ。


 問題が起こらないように、例年、魔法科と剣術科は時期をずらし、宿泊学習を行っていたのである。

 設備が整っている魔法科に比べ、学ぶとは言え、最低限度の携帯食と、水しか持っていない、剣術科では、不満の声が上がるのは、必至だったからだ。

 そんなことも、把握しているトリスは、魔法科の現状を、詳しく話すこともない。

 むやみに、剣術科の生徒たちを、刺激することもないと巡らせている。


「でも、今回は、遅れたことによって、重なってしまったみたいだけど」

 そっけなく、把握していたことを伝えた。

 それぞれの泊り込み学習が、遅れた原因に、トリスは予測済みだ。


 学院を抜け出すことが多いので、外での諜報員たちの動きが、活発になっていることを掴んでいたからである。

 余計なことを言い、騒ぎを起こしても、メリットがないと、あえて、それについても触れない。


「参加しているのか?」

 意外だなと言う顔を、リュートが覗かせている。

 これまで、トリスも、こういった行事に、参加したことがなかった。

 抜け出し、祖父の家にいっていたのだった。


「まぁな。クラインもカーチス、ブラーク、キムもいるぞ」

「カーチスたちもか」

 ますます、目を見開くのだった。

 自分同様に、サボりの常習犯であるカーチスたちが、来ているとは思ってもみない。

 いつものように、授業に出ず、村にでも、遊びに出かけているものと抱いていた。


 瞠目している姿に、クスクスと、トリスが笑っていた。

 そして、みんなのことを話し始める。

「クラインが、ほぼ取得したらしい」

「当たり前だろう。何をやっても、クラインは器用だからな。カーチスたちは、どうぜ遊んでいるんだろう? 後で、クラインも、大変だろうな」

 みんなの行動を先読みし、クラインの苦労を慮るリュートであった。


 トリスを始め、クラスメートの実力を、ほぼ把握済みだった。

 瞳の奥に、試験近くになって、教えを請うカーチスたちの姿を掠めている。


「だろうな」

「他は?」

「悪戦苦闘をしている」

「そうか……」

 懐かしむリュート。

 ふと、別な友達の顔を過ぎらせている。

「バドは?」


「とっとと取得し、研究に没頭している」

「今、何の研究をしているんだ?」

「精霊を使ったものらしい」

 眉間にしわが刻み込まれている。


(精霊か……。だから、参加したのかもな)


「誰かが、犠牲になるかもな」

 他人事のように、呟いていた。

「ごめんだな。近づかない方が、懸命」

「俺も、ごめんだ。なら、当分バドには、近づかないようにしよう」

「それがいいな。捕まったら最後、何に付き合わされるか、わからないからな」

 過去の苦い経験が、走馬灯のように流れていき、トリスが同意した。


 話を聞いていた二人が、怪訝そうな顔を滲ませている。

「何か、物騒な話だね」

「ああ。物騒な話だな」

 何も知らないダンたちに向かい、トリスが、クスッと笑っていた。


(バドのことだから、剣術科も、捕まえるかもな。リュートと、一緒にいられるんだからと訳のわからないことを言って)


 徐々に、トリスは哀れむ眼差しを、二人に傾けていた。

「ダン、パウロ。バドには、近づかない方がいい」

 真剣な面持ちで、リュートがアドバイスをしている。

 いつになく、真面目な態度に、不信感を募らせていく二人だった。


「誰だよ、そいつ」

 問題児で、厄介なリュートも、警戒するやつに、興味が憶え始めているダンだ。

 好奇心に勝てず、詳しくダンが聞こうとする。

「とにかく、気をつけろ。バドには」

 魔法科の生徒の名前を言われても、よくわからない二人。


「だから、何で、気をつけるんだ?」

「研究マニア。研究のためなら、何でもするやつだ」

「マニアって……」

 簡潔過ぎる説明に、トリスが補足を加える。

 過去で出来事を、少しばかり語った。


「リュートだって、使うやつだ」

 顔を顰めつつ、唸り声を上げ、絶対に近づかないと、二人が心に止める。


「優秀で、リュートに次いで、成績が、常に二位だ」

「……魔法科は、変なやつが多いな」

「お互い様だと、思うけど」

 四人が他愛もない話で、時を費やしていった。



読んでいただき、ありがとうございます。

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