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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第3章 それぞれの休日
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第70話

 太陽が沈みかけ、空がオレンジと群青の二色となった頃。

 外回りをし、戻ってきた教師から、変わり果てた〈白露の森〉の話を、聞きつけたカイルたちが、ずらりと集まっていたのだった。


 唖然と、無残な姿を窺っている。

 誰の目から見ても、酷い状況が広がっていた。

 外回りして戻ってきた教師たちが、この惨状に気がつき、職員室に報告がいったのだ。


「何だ、これは?」

 それ以外の呟きが、出てこない。

 数多くの木が折れ、枝が無数に散らばっている。

 そして、あちらこちらで、地面が陥没し、見るも無残な、壊滅的な姿を露わにしていた。

 ある一定時間以外、靄がかかっているせいで、教師たちが、この状況を発見するのに、時間がかかってしまったのが要因だった。


「知らん。だが、戦闘が行われたのは、確かだ」

 冷静に、状況を分析しているラジュール。

 ひと目で、ここで、戦闘が行われたのは、明白な事実として映っていたのである。


 靄で、覆われているはずの時間なのに、薄っすらと、靄が透け、視界が広がっていた。

 カイル同様に、話を聞きつけ、ラジュールが採点作業を途中で抜け出し、駆けつけたのだった。

 戦闘が行われ、高度な呪文を使った形跡も、残されていると、ラジュールが掠めている。


「外部同士の揉め事か?」

 眉間に深いしわを刻み込み、カイルが意見を求めた。

 各国の諜報員たちが、何らかのいさかいを起こしたものかと、巡らせていたのである。

 それしか、考えられない。


「やった者がいないのでは、わからない」

 さらりと、涼しい黒い双眸が、カイルを捉える。

 まだ、この段階で、軽率な答えを控えたのだ。


 他人事のように振舞うラジュール。

 思わず、口角がピクピクと引きつっている。


「お前たちは、何をしていた」

 辺り一面の状況を、静かな双眸で、眺めているラジュールに、苦々しく抱いているカイルが珍しく声を荒げていた。

 職員室で、待機していたのに、気づかずにいたことに、腹を立てていたのである。

 部屋で、仮眠と取っている間に、この話が出て来て、駆けつけたのだ。

 十分に睡眠が取れていないので、機嫌がすこぶる悪い。


「別に。職員室で、待機してた」

 噛み付かれた教師が、事実のみを伝えた。

「採点途中だ」

 無表情で、ラジュールも返答した。


「お前な……」

 仕事もしないでいる教師たちに、カイルが不服そうな顔を滲ませていた。

「〈白露の森〉は、深い靄がかかっている。それに、ここは皆無と言っていいほど、人が来ない。お前だって、そう考えるはずだ」

 的を射ているラジュールの指摘に、唸り声を上げてしまう。


 外部の諜報員が潜むには、いい場所の一つだった。

 だが、深い靄のせいで、視界はゼロで、森の中を迷う可能性の方が高く、これまでの諜報員たちは、〈白露の森〉を避けていた場所でもあったのだ。


 悪びれる仕草を見せない。

 ムッとしながら、ラジュールを窺っていた。


(もう少し、すまないと言う顔ができないのか、こいつは。マジで、可愛げないやつだ)


「……そうだが……。それでも……」

「外回りに、人をとり過ぎだ。残っている教師だけで、ここまでは無理だ」

 警備の穴を、表情一つ変えないで語った。

 カイルも、方針を聞いた時に、同じことを抱いていたのだった。

 学院の残る教師が、あまりにも少なかったのである。

 だが、涼しい顔で、言われたくなかったのだ。


「何か、あるか」

 自分は、間違っていないと言う眼光を、カイルに注いでいた。

 それに対し、言い返せない。

「……そう……だな」

「わかれば、それでいい」


 表情が揺るがないラジュール。

 真っ黒なローブを翻し、対抗手段が浮かばないカイルに対し、背を向ける。


「後は、頼んだぞ」

「おい。お前は、ど……」

「村へ行って、捕まえてくる」


 戻ってこないと、考えられる生徒たちを、捕まえるため、村へといってしまった。

 二人分の採点をしてから、出かけようとしていたが、この騒ぎで、途中でやめてしまったからだった。

 避けている場所を使う側面や、木の折れ方や、高度な呪文跡から、相当なやり手と見て、外に遊びに出かけている生徒たちを、直ちに寮へ戻した方がいいと、判断したのだ。


「しょうがない」

 意図を読み、自分が残るしかないと嘆息を零した。

 まず、生徒たちの安全が、最優先事項だった。

 他の教師たちがしている片づけを手伝うため、頭をくしゃくしゃと掻きむしりながら、カイルが歩き始めたのである。


読んでいただき、ありがとうございます。

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