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とらぶる❤  作者: 彩月莉音
第3章 それぞれの休日
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第54話

 フォーレスト学院がある半島の隣には、ポーナル国と言う国がある。

 ポーナル国のカザン港に、トリスが訪れていた。

 学院が連休になる前から、祖父から頼まれことがあり、足を運ぶことになっていたのだ。

 ちょうどいい具合に、連休と重なり、早めに学院から抜け出したのだった。


 さほど、大きくはない港である。

 カザン港は、漁業が盛んで、カザン自体が開けた港街だ。

 観光も盛んで、人の往来も多い。

「人が、多いな」

 何気ない呟きが漏れた。


 階段の上に腰掛け、人の往来を眺めている。

 こうして眺めているのが、好きだった。

 人物観察をし、目を養っていたのだ。


 リュートよりも、長めのカーキ色の髪を、一つにまとめている。

 不意に、潮風で、毛先がなびく。

 毛先が、潮風で弄ばれても、気にする様子もない。

 ひたすら、人の往来を、琥珀の瞳で観察していた。

 表には出ていないが、内心ではニンマリしていたのである。


 フォーレスト学院が近くにあることで、カザン港は学院の観光目的で、往来する人々でいっぱいだった。

 漁業と観光で、成り立つ街でもあったのだ。

 普段よりも、観光目的の往来が多かった。

 カザン港の人口より、数倍の観光客がいたのである。


「少し早めに、時期が来たのか」

 呆然と眺めているように装いつつ、その双眸は、様々な人の往来を捉えていた。

 どんな人たちが、来ているのかと。


 気づかれないに、僅かに口角を上げていた。

 色取り取りの風貌は、トリスの好奇心を刺激していたのだった。


 通い慣れた港街に、観光する場所が少ない。

 入学以来、訪れる目的の一つは、様々な人たちを観察できるからでもある。

 何度来ても、決して見飽きない場所だった。


 用事がある時間まで、暇を持て余していたので、こうして時間を潰していた。

 出発予定としては、二日後に学院を出ることになっていた。

 だが、急に、連休になったこともあり、いつもの人物観察も兼ねようと、連休の前日に出発し、カザン港に訪れていたのである。

 連休になった本当の理由を、トリスは把握していた。


 選りすぐりの人材を、求める各国が、実力のある卒業予定者を見極めるために、フォーレスト学院の敷地内に、潜入してきたためだ。

 毎年の行例の一つとも、言っていいほどである。

 ただ、去年までとは違い、潜入の時期が早まっていた。


 例年よりも、早めに潜入した訳は、偉大な〈法聖〉リーブの息子、リュートが魔法科から、剣術科に転科したことが、各国に知られてしまったのである。

 その真偽を確かめるためだ。

 そのため、いつものより早い時期に潜入していたのだった。


 有名人でもあるリュートが入学して以来、フォーレスト学院に潜入することが難しくなり、情報が少なくなっていたのだ。

 警備体制が大幅に増量され、なかなか情報が、入りにくくなっていたのである。


 母親の素質を受け継ぐリュートの情報を、得ようとしても、困難になっていたこともあり、少しでも情報を得ようと、各国が躍起になり始めていた。

 そうしたことも要因となり、大規模な諜報員や、興味のある不審者の人数が、増えてしまったことが、教師たちも警備する原因でもあったのだった。


「眼光に、微かに力があるな。あれは、調べに来たな。……あれは……」

 探りの双眸は、休ませていない。

 観光をしている人の目か、探る目か、独特な臭いで、嗅ぎ分けていた。

「先生たちも、大変だ」

 他人事のように零した。


 頭に掠めているのは、リュートの担任でもあるカイルだった。

 一番厄介ごとが、降りかかるだろうと巡らせていたのだ。


「ご愁傷様、カイル先生」

 どこか、顔が楽しげだった。

 トラップを仕掛ける技術で、教師たちを助けようとする気がない。


 祖父譲りのトラップを、仕掛ける技術は、一流の粋まで入り込んでいる。

 そして、トリスが仕掛けたトラップに掛かり、何度も諜報員を捕まえる手助けとなっていた。

 だが、潜入する者たちに、興味がなかったのだ。

 興味本位で、仕掛けていただけに過ぎない。

 それに、たまたまマヌケな諜報員が掛かっていたのだった。


「カザン港から、潜入するのが、ラクと言えば、ラクだからな……」

 逡巡していくトリス。

 フォーレスト学院に行くルートは、いくつかのルートがあった。

 その一つが、カザン港から観光客を装い、フォーレスト学院の敷地内にある村に、入り込む戦法だ。

 それが、最も簡単だった。


 だからと言って、学院側が気づいていない訳がない。

 手薄となっていることを承知しつつ、きちんと警備はしていたのだ。

 生徒の情報は、ある程度は流したいので、見逃していたのである。

 他の学院よりも、優秀な人材が揃っていると。


 今回は、学院側の思惑よりも、各国の諜報員の方が、一枚も上手だったようで、早い時期に行動を起こされていたのだった。そして、上級生目当ての他に、リュートの調査も、含まれていることに学院側が焦り、急ピッチで、警備体制の更なる改善を図っていたのだ。

 リュートの能力の高さを、解禁するのはまだ早々だった。


「他の学院と違って、開けているからな、フォーレストは」


(甘いんだよな)


「そのおかげで、俺たちは自由に、できるけどな」

 カザン港に入った途端、トリスはフォーレスト学院の顔馴染みの警備員を、何人か見かけた。

 学院側も、できるだけ事前に、食い止めようとしている。

 いくつかあるルートに、何人もの警備員を配置させていた。

 敷地内が手薄になるので、警備の強化魔法をかけるためと、その間に入り込まれないようにするために、教師たちが交代で、敷地内を見回りしていたのだった。


 ようやく、降ろしていた重い腰を上げる。

 ずっと、座り通しで、お尻が痛かったのだ。

 それに、冷たい石の上だったせいもあり、お尻が冷たくなっていた。

 さっと、お尻の汚れを、手で払った。

「時間まで、ブラブラしているか」


読んでいただき、ありがとうございます。

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